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KYOTO STEAM 特集「国際アートコンペティション スタートアップ展」第7回:妄想を先端テクノロジーで現実化した令和の“奇祭”インタビュー:市原えつこ(メディア・アーティスト)

2020 03 18

3. 祭りの街・京都に“奇祭”はどう映るか

そもそも、市原さんはどうして日本の民間伝承にスポットを当てて制作するようになったのか? 疑問をぶつけてみると、「2016年、突如、自分の中で“祭り”ブームが起きたのが一番の理由です」という答えが返ってきた。えっ、「祭り」ブーム!?

「祭りが元々好きで、民間伝承にも興味があったんですが、会社を辞めて独立したタイミングで雷に打たれたように、日本の奇祭ってヤバい!と突然、スイッチが入ったんです(笑)。それで、各地を旅しながら、それぞれの土地で昔から続く民間伝承や、奇祭と呼ばれる祝祭行事を見て回るうちに、お祭りが醸し出す、近代の常識を超えた人類の根源的な生命力のようなものに無性に心惹かれていきました。

それからご縁があって、2016年11月に東京・中野区の川島商店街で行われる『東京行灯祭』にてアートディレクションとして参加させていただけることになったんです。商店街で長年続いてきたお祭りを“テクノロジー奇祭”という切り口でプロデュースして、自分の作品『セクハラ・インターフェース』を展示したほか、さまざまなクリエイターにも参加いただいて祭りを盛り上げました。そのときの実績がうまくつながって、2019年11月に『仮想通貨奉納祭』を川島商店街で開催させていただける運びになりました」。

天狗ロボット
『デジタルシャーマン・プロジェクト』のお祭り仕様として制作した「天狗ロボット」。(「仮想通貨奉納祭」より。2019年/撮影:黒羽政士)

『仮想通貨奉納祭』制作中には、京都にリサーチに訪れたそうで、市原さんは、
「晴明神社や御金神社をはじめ、京都の神社仏閣からはたくさんの良いアイデアやヒントをもらいました。それに京都では一年中、祭りが行われていて、祭りへの間口もとても広いですよね。祭りが身近なものとして、当たり前にある。
今回のスタートアップ展では、美術館で『仮想通貨奉納祭』の奇祭っぷりを体験いただけるようなインスタレーションを予定しています。京都で展示することで、神職の方をはじめ、さまざまな方に見ていただいて、いろんな方面から声がかかったら良いなという野望もあります。各方面に祭りが伝播して、ムーブメントが起こっていくとうれしいです」。

注目は、株式会社ハコスコの藤井教授とコラボレーションした新作のVR作品だという。
「もののけが襲ってくる、虚構と現実がないまぜになるVR作品です。昨年の『仮想通貨奉納祭』本編でもやりたかった企画なのですが、今回のスタートアップ展で初公開となります。また、奇祭のための神具も新たに制作中で、テクノロジーを使って今だからこそできることを実現したいです。
一方で、『仮想通貨奉納祭』の作品としてのアーカイブ性をあげることと、完成度を高めることにもチャレンジしています。サーバー神輿や、アニマトロニクス研究者の中臺久和巨さんと共同制作した『天狗のお面』などの展示とあわせ、プロジェクトのアーカイブとしての映像を再編集しています。美術館の展示空間に最適化するよう『仮想通貨奉納祭』をアップデートできたら今後、全国はもとより、世界中を巡回させることができるかもしれません」。

変天狗のお面
市原えつこ+中䑓久和巨による、まばたきする「天狗のお面」。(「仮想通貨奉納祭」より。2019年/撮影:黒羽政士)

インタビューの締めくくりに、KYOTO STEAMに期待していることを伺うと、
「フェスティバルの運営に関することをKYOTO STEAMのプロジェクトから学びたいですね。『仮想通貨奉納祭』を実際にやってみて、運営が大変なのはよく理解できました。今後は、アーティストとして参加するのに加えて、フェスティバルのディレクターとしても活動してみたいと考えています。さまざまな研究者やクリエイターとコラボレーションできるプラットフォーム作りのきっかけの一つに、KYOTO STEAMがなると良いなと願っています」。

PROFILE プロフィール

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市原えつこ | ICHIHARA Etsuko

1988年愛知県生まれ。早稲田大学文化構想学部表象メディア論系卒業。近年の主な展示に「Open Possibilities」(2019年、Japan Creative Center/シンガポール)、「第11回恵比寿映像祭」(2019年、東京都写真美術館/東京)、「Speculum Artium」(2018年、Delavski dom Trbovlje/スロベニア)、「アルスエレクトロニカ・フェスティバル」(2018年、OK Center for Contemporary Art/オーストリア)、「文化庁メディア芸術祭」(2017年、オペラシティアートギャラリー/東京)、「デジタル・シャーマニズム – 日本の弔いと祝祭」(2016年、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]/東京)。主な受賞に「アルス・エレクトロニカ賞」栄誉賞(2018年、アルス・エレクトロニカ)、EUによる科学芸術賞「STARTS PRIZE」ノミネート(2018年、ヨーロッパ連合)、「第20回文化庁メディア芸術祭」エンターテインメント部門優秀賞(2017年、文化庁)、「総務省異能vation」採択(2016年、総務省)。

市原えつこ 公式サイト

デジタルハリウッド大学院 | DIGITAL HOLLYWOOD UNIVERSITY

日本初の株式会社立の専門職大学院として2004年に開学。超高度情報化社会においてデジタルコミュニケーションを駆使し、社会に変革を起こすリーダーを輩出すべく、[SEAD(Science/Engineering/Art/Design)] の4要素をバランス良く身につけ融合し、理論と実務を架橋する人材育成を行う。新規事業プランニングとプロトタイピングなど、院生のアイデアの実装およびスタートアップ支援により、「平成30年度大学発ベンチャー調査」(経済産業省)では全国大学中11位、私立大学中3位。

デジタルハリウッド大学院 公式サイト

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