AMeeT
TECHNOLOGY

テクノロジー

アナログテレビに共感文:毛原 大樹

2013 04 30

デジタル全盛の時代にこのタイトルだとどうも懐古趣味的な印象を持たれるだろう。"アナログ"という言葉自体が前時代的な意味として使われるから仕方無い。ここでは、決して時代遅れではない新しい価値や文化を創造する"アナログテレビ"との付き合い方を紹介したい。

「ライブ感で勝る、アナログテレビ体験」

その日は、ワールドカップサッカーの日本代表戦があった。試合時間中の電車内は程よく空いており、見渡すと辺りの乗客らはワンセグ(デジタル)でサッカーを観戦している様子だった。私も少しばかり試合が気になっていたのでその日の実験で使ったポケットテレビをカバンから取り出して観戦した。ポケットテレビから伸びるロッドアンテナはワンセグのアンテナと比べると非常に長いので公共の場所だととても恥ずかしいが、ワールドカップという"お祭り"なのでこの日はまあ良いかと。

ポケットテレビ

ポケットテレビ

試合は中盤に入り、相手チームが日本チームの守備を突破し、残すはゴールキーパーのみという場面。実況アナウンサーがマイク片手に身を乗り出す瞬間である。そしてボールは呆気無くゴールネットを揺らす。

このシーン、電車は無情にもトンネルへ突入

~アナログ観戦の私~

電波の受信状態はものすごく悪い。
私は砂嵐に埋れたボールを音声だけを頼りに追う(ほとんどラジオ状態)。
電車がトンネルを抜けると"砂嵐"は晴れ、次の瞬間、ボールがゴールネットを揺らす場面が目に飛び込んできた。

~対して、デジタル観戦の乗客達(あくまで私の想像)~

小さい画面ながらもワンセグ(デジタル)が伝える現地の様子はとても鮮明に映っていたはずだ。、、トンネルに入るまでは。
ト、次の瞬間、その画面はトビトビ、カクカク、パラパラ、その様にして断片的に過ぎゆく時間の流れは視聴者にとってトンネルの距離をより延ばすものだったろう。トンネルを抜けると画像はようやく動きはじめ、20秒前の出来事を遅れて伝えたのである。

これについて

ポケットテレビ(アナログ)の場合、移動中の車内での画質は砂混じりでトンネルに入ってからは全く映らなかったが、音声だけはクリアに聞き取れたのでライブ感を損なうことなく状況を把握する事が出来た。

ワンセグ(デジタル)の場合、受信したデジタル信号を処理して映像を表示するまでにかなりの時間がかかる。今回の場合はトンネルがあったことによって受信状態はかなり悪く、画面は頻繁に止まりさらに遅延が大きくなった。

同じ車内にいて、おそらく同じ番組を見ているのに、盛り上がるタイミングが私と全く違う点が興味深かった。そしてワンセグ同士でも機種や個々の微妙な受信状態の違いにより数秒の時差が発生している模様。この時差が無ければ同じ空間で同じものを見ているもの同士、一時的な友達になれたかもしれないなぁ。


毛原 大樹 KEHARA Hiroki

毛原 大樹

東京芸術大学大学院美術研究科修了。
2005年のFMヨコトリ(大榎淳/上屋番)への参加をきっかけに、"自由ラジオ" や"ラジオ・アート"等の電波メディアに興味を持つ。廃校となった小学校(東京台東区)の教室をスタジオとして、自由ラジオ局「コジマラジオ」をスタートさせた。以降、様々な人々が関係する現場として「町中アート大学」やコジマラジオのテレビ版「"最後のテレビ"」へと発展していく。現在では、全国のありとあらゆるシーンで微弱な電波を使った文化的な活動を行ったり、商店街振興策などさまざま話題を打ち出している。一見すると前時代的な道具を新しいメディアとして捉える制作活動も行う。


PAGE TOP