AMeeT
TECHNOLOGY

テクノロジー

「かげ」を「うつす」こと
――展覧会「かげうつし―写映・遷移・伝染―」に寄せて林田 新(京都造形芸術大学/関西大学/京都精華大学非常勤講師)

2012 12 27

2012年11月3日から25日にかけて、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAで開催された展覧会「かげうつし―写映・遷移・伝染―」。今回のDigital Imagingでは、企画者である林田 新氏に「かげうつし」という言葉を用いた動機、そして本展で行った試みについて寄稿していただいた。 デジタル以降の「映像」という言葉が持つ意味を分析しつつ、再定義を示唆するようなテキストとなっている。

2012年11月3日から25日にかけて、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAで「かげうつし―写映・遷移・伝染―」という展覧会が開催された。出展作家は加納俊輔/高橋耕平/松村有輝/水木塁/水野勝規の五人である。企画者として本展覧会にかかわった筆者は、展覧会のタイトルとして「かげうつし」という言葉を彼らの作品の傍らに添えた。
本小論では、「かげうつし」という言葉を採用した目論見について論じてみたい。端的にいえば、それは、昨今広く用いられている「映像」という言葉を、「かげ」を「うつす」こととしてパラフレーズし、「映像」という言葉が喚起する豊かな多義性・多様性を改めて掘り起こすことであった。まずは、「映像」という言葉が今日積極的に用いられている理由について、特にデジタル化との関連において考えてみよう。

写真評論家の飯沢耕太郎は、著書『デジグラフィ──デジタルは写真を殺すのか?』(中央公論新社、2004年)において、デジタル化以降の写真を「デジグラフィ〔digigraphy〕」と呼び、それ以前の「写真〔photography〕」と区別したうえで、その特徴を五つ列挙した。すなわち、(1)改変性、(2)現認性、(3)蓄積性、(4)相互通信性、(5)消去性の五つである。

デジグラフィは、それ以前のいわゆるアナログ写真に比して、Photoshopなどの画像編集ソフトを用いて手軽に改変できることをその特徴とする(改変性)。また、かつての写真が暗室での焼き付け作業を通し、初めてその像を露わにするのにたいして、デジグラフィは、デジタル・カメラに搭載されたディスプレイによって、撮影後その場で直ちに像を確認することができる(現認性)。デジタル・データであるデジグラフィは、記録媒体の進化により、場所を取ることなく大量に保存することができ(備蓄性)、メールに添付すること、あるいはウェブ・サイトに掲載することで、容易にデータをやり取りすることが可能である(相互通信性)。最後に、デジグラフィは、ボタンを一度押すことで完全に消去することができる(消去性)。

しかし、飯沢が指摘するこうしたデジグラフィの特徴は、実は彼がデジグラフィという言葉によって区別するところの「写真」にも見出されうる質でもある。写真もまた、暗室作業において改変することができるし、ポラロイド写真は撮影した画像をその場で確認できる。一葉の写真はアルバムに蓄積することができ、絵ハガキとして、あるいは封書で離れた誰かに送ることも可能である。紙に焼き付けられた写真は容易に破け時には燃えてしまう。そう考えれば、デジグラフィとして飯沢が指摘するデジタル写真の五つの性質は、写真が持っていた性質をより過剰にしたものと捉えるほうが妥当なのではないか。その意味で、デジグラフィとアナログ写真の間に決定的な差異は存在しない。


林田 新 HAYASHIDA Arata

林田 新 HAYASHIDA Arata

関西大学、京都精華大学などで非常勤講師。専門は視覚文化論、写真史/写真論。現在は報道写真をめぐる理念と実践に着目し研究を行っている。主な論文に、「星座と星雲――「名取=東松論争」に見る「報道写真」の諸相――」(『映像学』第84号、日本映像学会、2010年)、「写真を見ることの涯に――中平卓馬論」(『写真空間』第4号、青弓社、2010年)など。共訳論文にサンドラ・S・フィリップス「森山大道 ストレイ・ドッグ」(『森山大道 オン・ザ・ロード』月曜社、2011年)。

林田 新 WEBサイト
http://www.arata-h.com/

展覧会「かげうつし―写映・遷移・伝染―」 WEBサイト
http://www.arata-h.com/kage/


PAGE TOP