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TECHNOLOGY

テクノロジー

直接操作可能なめくりインタフェースによる新しいインタラクションの提案

2011 03 22

本稿は、紙の書籍をめくるのに近い感覚で電子書籍をブラウズできるインタフェース「Flip Interface」と、それを用いた新しい読書体験のインタラクションについての研究論文である。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)と日本写真印刷株式会社(NISSHA)との共同研究として、今春開催の「インタラクション2011」の発表に投稿・採用された論考をそのまま掲載する。

井澤謙介、鈴木宣也、赤羽亨、山川尚子(情報科学芸術大学院大学)
丸山潤、相坂常朝、久保元亮樹、柴山史明、竹中寛(日本写真印刷株式会社)
小林茂(岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー)

本研究は、紙の書籍をめくるのに近い感覚で電子書籍をブラウズできるインタフェース「Flip Interface」と、それを用いた新しい読書体験のインタラクションについての提案である。静電容量センシングの電極として銀インクを印刷した複数のフィルムを複数枚積み重ねたものをセンサとし、これをはじくことで紙をめくるようにページをブラウズできる。
紙の書籍と人の関係を単に電子書籍において再現するのではなく、両者の関係から抽出した要素を電子書籍ならではのインタラクションとして提案する。プロトタイプを用いた質的調査の結果より、タッチパネルによる電子ブックリーダーよりも指先の感覚に訴え、質感豊かな体験をもたらすインタフェースとなっていることが検証できた。

1. はじめに

本研究は、紙の書籍をめくるのに近い感覚で電子書籍をブラウズできるインタフェース「Flip Interface」、およびそれを用いた新しい読書体験を提案するものである。フィルム状の静電容量センサを複数枚積み重ねたものをセンサとし、これをはじくことで紙をめくるようにページをブラウズできる。
電子書籍において単に紙の書籍と人の関係を再現するのではなく、両者の関係から抽出した要素を電子書籍ならではのインタラクションとして新たに提案するものである。

近年、情報を直感的に扱う入力方式としてディスプレイに直接タッチする入力方法が普及しつつあり、様々な情報機器にタッチパネルが搭載されている。Apple社のタブレット型コンピュータ「iPad(※1)」を皮切りに、通信キャリア、家電メーカー、印刷会社、大手書店などが日本の電子書籍市場に参入することが決まった。
ウェブや雑誌などでは2010年を「電子書籍元年」と称して、電子書籍関係の話題が数多く取り上げられている[※参考文献1、文末参照]。このような背景もあり、書籍の電子化は急速に進み、それに伴い多様な電子ブックリーダーが発売、その普及とともに電子書籍市場も急速に拡大し、電子ブックリーダーでの読書体験は一般的なものになりつつある。

普及し始めた電子ブックリーダーのインタフェースの現状は、触覚及び操作方法(直接操作と間接操作[※参考文献2、文末参照])の点から主に2つのカテゴリーに分けられる。1つは電子書籍専用端末で、AmazonのKindleやSONYのSONY Readerがあげられる。これらのインタフェースはボタンによるスイッチ操作が基本で、触覚的な要素がある反面、マウスやキーボードと同様に間接操作である。もう一方は、タブレット型コンピュータである。AppleのiPadやSHARPのGALAPAGOS、SAMSUNGのGalaxy Tabなどがあげられる。
これらはタッチパネルによるタッチ入力方式のものが大多数で、直接操作が可能である反面、ガラスパネルの表面を触るだけの入力方法で、触覚的要素の欠如が問題として挙げられる。このように電子ブックリーダーのインタフェースには現状では2つの方向があるが、画面の中の書籍を読むというインタラクションにについてはまだ試行錯誤の段階である。

本研究では、手で触れることができる実体物をインタフェースに用いることでユーザにとって直接操作を可能にすることを目的としたFlip Interface を提案する。スイッチ操作では実現されていない直接操作と、タッチ入力方式では実現されていない触覚という2つの要素を実現することで、従来の電子ブックリーダーとは異なる読書体験が期待できる。このインタフェースを既存の電子ブックリーダーのインタフェースと比較することで、読書体験にどういった変化が起こるのかをインタビューを中心とした質的調査法で検証する。

※1)2010年1月に発表、米国で4月発売、日本でも5月末に発売。


アドバンストデザインプロジェクト

アドバンストデザインプロジェクト

情報科学芸術大学院大学[IAMAS]ユビキタスインタラクション研究領域のプロジェクトとの1つ。メディアアートで培った表現力や、プロトタイピングを中心としたデザインメソッドを活かし、外部企業との共同研究などを通じてリアルな課題に取組む。2010年度のメンバーは井澤謙介、山本 雄平(以上大学院2年生)、山川 尚子(研究補助員)鈴木 宣也、赤羽 亨、小林 茂(以上教員)。
本論文で紹介している「Flip Interface」は、展覧会でプロトタイプを展示した後、井澤の修士研究として引き続き発展させ、インタラクション2011の一般講演に採録された他、インタラクティブ発表で展示した。

IAMAS 情報科学芸術大学院大学|国際情報科学芸術アカデミー
http://www.iamas.ac.jp/


Team interaction@NISSHA

Team interaction@NISSHA

"新しい触感とセンシングの開発"を目的として、日本写真印刷株式会社(系列会社含む)の組織を横断して結成されたチーム。メンバーは、丸山 潤、相坂 常朝、細川 知宏、江本 佳隆、竹澤 慶太、久保元 亮樹、柴山 史明、竹中 寛。
デザイン、技術、生産、開発、情報分野の枠を超えて社内のあらゆる技術を横断したアイデアを元に、先端技術とソーシャルメディア・アートの分野で世界的な評価をもつIAMAS(情報科学芸術大学院大学)と共同で、直感的な入力方式への提案を実際にデバイスを作成し"mitome"、"mekuri"として2010年9月に発表した(プロジェクト展覧会「Tipping Point」@六本木AXISギャラリー)のにつづき、2011年3月10日~11日に開催された情報処理分野の学会(インタラクション2011)においても公開、展示された。

日本写真印刷株式会社
http://www.nissha.co.jp/


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