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EVENT REPORT

イベント・レポート

展覧会「アン・リスレゴー展 -Shadow Ya Ya-」

2016 01 09
会 期: 2015年10月27日〜12月25日
会 場: 京都芸術センター
〒604-8156 京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2

http://www.kac.or.jp/
TEL:075-213-1000/FAX:075-213-1004
 E-Mail:info@kac.or.jp
画像クレジット: 撮影:林口哲也

2015年3月〜5月に開催されたPARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015出展作家の個展。閉幕から半年も経たないうちに、PARASOPHIA出展作と異なる、日本初公開の作品を観賞できる機会。
1962年生まれ、ノルウェー出身のアン・リスレゴーは、現在コペンハーゲンとニューヨークを拠点とする作家。PARASOPHIAコンセプトブックの表紙絵にもなった「フクロウ」の作品で印象的な作家である。3Dアニメーションによる映像インスタレーション作品のフクロウは、正しくは、作品名を「神託、フクロウ・・・・・・ある動物は眠らない」という。映画「ブレード・ランナー」に着想を得たという作品だ。(映画の)レプリカントの製造元タイレル社の社章が、人類の智恵と知性を象徴するフクロウ。
アン・リスレゴーは、「建築と映画、フィクション、人間、機械、動物など、異なるもの同士を混合し、結びつけることで、仮想世界の体験を創出」(京都芸術センターHPより)。また、作品のベースには、SF文学がある(「ブレード・ランナー」もフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」)。
SF文学にフェミニズム論を絡ませ、アン・リスレゴーは、現実世界の未来像を示唆するかに見える。SFのサブジャンルであるフェミニストSFの存在も想起させる。

今回の個展では、廃墟となったホテルの内部を視線が移動するにつれ、そこにアニメーションとして出現する時間やかつての他の芸術家作品が、次第に結晶化していく「Crystal World(after J.G.Ballard)」と、キツネのような不気味な生き物が、おかしな言葉で自分の体験した未来について語る「Time Machine」の2点。結晶化=硬化していく視線と、言葉が無効になる様子が、とても不穏だ。
元小学校校舎である京都芸術センターの、かつて支配やさまざまに差別をもふくんだであろう<教育制度>が凝固したような空間も、作品の中に捨て置かれていく<時間>と重なり合って効果的だ。

アン・リスレゴーの作品に流れる思想と、京都の瑣末でリアルな毎日を直接的に重ねるのはなかなか難しい。PARASOPHIAの作品全般がそうであったように、だからこそ、私たちは、実在する距離や時差を超えて、触れたことの無い想像力に浸食されるべきである。知性を拡げ、未知の他者に触れることは、かつての時間(歴史)の捉え方さえも変容させるに違いないし、とんでもなく異なる未来を導き出すことになるかもしれないからだ。
偶然目にしたインターネットの情報の中に、ドイツにおける芸術助成の在り方について書かれたものがあった。短くいえば、娯楽性だけを追求した作品は、助成対象にならないということ。社会問題の発見と提言が芸術家の仕事であると、助成する側に明確な方向性があり、芸術家はそれによって鍛えられるというような内容である。国際化や他者への理解というのは、そういうことだろう。

税金で運営される美術館において老若男女が現代美術すべてを「楽しみ」の対象と要求し、表現におけるいろいろな偏り・隔たりに敏感に納税者が噛み付く、などという国は、日本だけかもしれない。だからこそ、知識の相当量の下地が必要で、そうでなければただ不穏な時間を共有するというアン・リスレゴーの作品は、とても重要な存在だ。世間の期待どおりの「お祭り」にならなかったPARASOPHIAが蒔いた種のひとつぶは、本展のようなアプローチであろうと思う。
(松尾 惠 MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

Ann Lislegaard, Time Machine, 2011.
Installation view, Kyoto Art Center, 2015.
Photo by Tetsuya Hayashiguchi.
Courtesy of the artist and Murray Guy Gallery, New York
Ann Lislegaard, Time Machine, 2011.
Installation view, Kyoto Art Center, 2015.
Photo by Tetsuya Hayashiguchi.
Courtesy of the artist and Murray Guy Gallery, New York
Ann Lislegaard, Time Machine, 2011.
Installation view, Kyoto Art Center, 2015.
Photo by Tetsuya Hayashiguchi.
Courtesy of the artist and Murray Guy Gallery, New York

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