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EVENT REPORT

イベント・レポート

展覧会「醤油のうつわ、石のうつわ – おしょうゆ焼き+マントル直結焼き – 」

2015 02 20
会 期: 2014年12月9日(火)~12月14日(日)
会 場: ギャラリー恵風
〒606-8392 京都市左京区丸太町通東大路東入ル南側
tel.075-771-1011
http://keifu.blog86.fc2.com/
プロジェクトメンバー: 上田篤、中村裕太、松井利夫
特別研究助成: 京都造形芸術大学
観光から関係へ
WEBサイト:
http://relational-tourism.jp/
撮影 増田好郎 Yoshiro Masuda

本展は、今夏「アート小豆島・豊島2014 醤の郷+坂手港プロジェクト 観光から関係へ」において開催されたプログラムのひとつ「馬木の寺子屋"民藝の時間"」の報告展。新たに誕生した小豆島ゆかりの焼き物の数々が展示された。プロジェクトメンバーが「おしょうゆ焼き」、「マントル直結焼き」と名付けた飴色やオリーブ色の碗、皿は、ひとつずつ表情が異なる。プロジェクトの進め方や、小豆島の人々との交流を知ることができた。

さて、おしょうゆ焼きは、小豆島の土に醤油かすを混ぜてつくった器に、釉薬の代わりに醤油を用いて焼成した焼き物。マントル直結焼きは、小豆島産のマントル直結安山岩を釉薬に仕立てたところ、美しいオリーブ色を発色したという焼き物。いずれも、陶芸家を中心とするプロジェクトメンバーが、小豆島滞在を通じて選びだした材料である。おしょうゆ焼きからは香ばしささえ漂うかと錯覚し、いかにも食品と馴染む気配だ。マントル直結焼きは、卓上にいながら、地球の成り立ちを想像するアイコンと見立てることができる。

ちなみに、地球の大陸地殻は、火成岩の一種:安山岩からできている。一般的に、安山岩は玄武岩から変化しているそうだが、小豆島の安山岩は、世界的にも稀な、マントルが解けて直接安山岩になったもの。サヌキトイドと呼ばれる小豆島の安山岩は、1980年代に、なんと島の地下数十kmのマントルと直結していることがわかったのである。以来、かつて瀬戸内火山帯の中で最大の火山であった小豆島は、世界のマグマ研究の聖地といわれているという。

瀬戸内芸術祭を契機に、小豆島独自の様相を帯びて、「アート小豆島•豊島2014 醤の郷+坂手港プロジェクト 観光から関係へ」が継続している。太古の大規模な地殻変動の跡と芸術が関わるとは面白い。壮大な時間軸を人類以前までさかのぼり、人為にほかならない現代の芸術が対面するのである。地方創生に見られる<少し昔の暮らし>への回帰などずっと通り越した、人智のおよばぬ荒ぶる地球との対話である。ディスカバージャパンどころではなく、ディスカバーアースである。

都市部では、芸術、とりわけ美術活動にドーナツ化が起こっている。流通の交点としての都市は必要だけれど、造形の衝動は、むしろ、暮らす形の変化とともに、すでに都市の周縁に散っていると感じるのだ。独特の現代社会である日本では、現代美術にも、日本特有の地域性や土着性をはらんでいる。都市周縁の地域社会には、それこそ、マントルと直結するかのような、土着の衝動が息づいているに違いない。若い芸術家たちは、農や山仕事や狩猟や地域産業など個々の関心にしたがって、直感的に少しずつ周縁へと移動している。だから、京都という都市の中で、たとえば筆者の足場である<画廊>も、永続的に機能するとは思えないのだ。

ところで・・・。祖母が小豆島の人だった。寒霞渓のお猿と遊んだり、親戚の子たちと過ごした夏などの思い出があるばかりでなく、自分の源流が<海賊>や<水軍>ではないか?と想像することを生きる原動力にしてきた気がする。加えて、「おしょうゆ焼き」、「マントル直結焼き」が、遠い祖先の土着のエネルギーを蘇らせてくれたように思える。久しぶりに小豆島を訪れ、マントルと直結する石や岩に対面したいと思っている。
(松尾 惠 MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

マントル直結安山岩とその風化した砂

マントル直結安山岩とその風化した砂

馬木キャンプ:ワークショップ風景

馬木キャンプ:ワークショップ風景

マントル直結安山岩釉

マントル直結安山岩釉

マントル直結焼き

マントル直結焼き


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