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EVENT REPORT

イベント・レポート

九鬼みずほ個展「野焼土器」文:松尾 惠(MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

2018 07 22

京都芸大移転整備プレ事業「教室のフィロソフィー」vol.3。地域の小学校が今後新たな公共空間へと変容する過程が気になり、vol.2河野愛個展につづいて元崇仁小学校を訪れた。今回のギャラリー展示は、焼き物、焼き物の実測図、メイキング映像、絵画などで構成する九鬼みずほの個展。大学在学中から独自の表現手法が目を引く作家だ。

本展に示される作家の第一の関心は、縄文土器から着想した土との関わりである。会場には、縄文土器や弥生土器に似た野焼きの素朴な焼き物が、あえて、博物館のように陳列されている。また、作家が土をこねて、作陶し、野焼きで焼成する映像も流れている。作家活動の傍ら、最近考古学の発掘関係の仕事をしている九鬼は、研究者にならって、考古学に用いる計測道具を使い、自作の実測図と道具類も展示した。

計測道具や遺物の土を掻き落とす道具等、考古学者それぞれの使い勝手や手の形に合わせて加工された道具類は、魅力的だ。遠い過去の事実は遺物に封印されているが、無言の遺物との対峙は、それぞれの考古学者にとって想像と創造の領域であり個人的な行いともいえる。道具類は、研究者の体を通じて、現代と過去をつなげる道具でもある。

作家:九鬼自身にとって、今回のアプローチは、おそらく最終的に絵画というメディアへ収斂していくための試みであろうかと思う。が、メイキング映像や実測図や道具類は、鑑賞者に制作の過程や素材との関わりをよりリアルに届けたと思う。苦労して書き上げるスイテイトメントより、はるかに実体験が伝わってくるからである。考古学はきっかけやモデルとなっただけなのではなく、以前よりずっと明瞭に九鬼の制作意図を可視化したのではないかと思う。展示を構成するのは、他に、土との関わりを表現したような絵画作品、焼き物作品を並べた写真作品。いくつかの手法が錯綜したり混合し、とても面白い空間であったと思う。

考古学の発展には、中学・高校の考古クラブの活動や、地域の考古ファンの力が不可欠と聞く。そういった人々の熱や継続性が、貴重な発見を重ねてきたからである。地域の誇りとして、構内に考古資料室を設けている学校もたくさんある。今回の展示では、以前からあった考古資料室のように見えるところも面白かっった。現代の作品もいずれ遺物となるかもしれず、未来の人の想像をさまざまに搔き回すのかもしれない。作品を鑑賞するというのは、あらためて、錯綜する時間や想像の中に放り込まれることだと思った。

会場風景
会場風景
会場風景
会場風景
「photo archive series」 写真作品
「photo archive series」 写真作品
「実測図(原寸大)」 実測図(画用紙に製図用インク、木炭)
「実測図(原寸大)」 実測図(画用紙に製図用インク、木炭/485×735mm)
「土器焼成具合の拡大より」 絵画(キャンバスにアクリル、メディウム/1167×910mm)
「土器焼成具合の拡大より」 絵画(キャンバスにアクリル、メディウム/1167×910mm)
会期 2018年6月2日(土)〜17日(日)12時~17時
※土曜・日曜19時まで
※月曜・木曜休廊
会場 ギャラリー崇仁(京都市下京区川端町16 元崇仁小学校内)
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