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EVENT REPORT

イベント・レポート

「東九条こどもてづくり映画:映画づくりワークショップと上映会」〜アーツシードとremoの活動例文:松尾 惠(MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

2018 10 09

2019年、京都駅東南部エリアに新しい劇場Thetre E9 Kyoto(仮称)が創設される。制度や膨大な資金づくりという難関を越えた、一般社団法人アーツシード京都の目覚ましい働きのおかげである。

同エリアでは、京都市によって<京都駅東南部エリア活性化方針の推進 ~「文化芸術」と「若者」を基軸とした新たなまちづくり推進事業~>が進んでいる。筆者もまた「芸術計画 超京都」として、おもに美術系のプロジェクトに参加しているが、<アート>は、特別な層の特殊な活動やモノなのではなく、そもそも多様である<表現>を指していること、それはまた、未知の人や出来事が協働できる<機会>そのものなのだということを示したいと思っている。一般社団法人アーツシード京都では、すでに専門家によるオープンリサーチプログラムをはじめ、地域でのワークショップをつうじて、一歩ずつその活動を進めている。今夏、その活動の一環である子どもたちとの映画づくりを興味深く見学した。

子どもたちが即興的に、3時間という短時間に映画をつくった。子どもたちが脚本・演出・出演・撮影を行う。撮り直しは不可というルールだ。また、小道具や衣装も、その場で見つけた何かを利用しなければならない。3組に分かれた小学生たちが、会場となった施設の中を走り回る内、映画づくりという新しい遊びの中に自然と役割分担ができて、お話をつくりあげていく様子を飽きずに眺めた。子どものする「なんとかごっこ」が、そもそも今時は映像的なのだと、面白い発見もした。2週間後の夏まつりでは、屋外スクリーンに集まった多くの人が完成作品を鑑賞した。映画づくりは、Thetre E9 Kyotoのプロジェクトメンバーであり、NPO remoメンバーの久保田テツとサポートスタッフによって進行した。

「東九条こどもてづくり映画:映画づくりワークショップと上映会」は、NPO remoのミッションを象徴するひとつでもある「ご近所映画クラブ」の一環といえるだろう。フランスの映像作家:ミシェル・ゴンドリーのメソッドに基づいて発案され、remoはすでに数十回行ってきた。世の中には、アートのアウトリーチプログラムといえども、先の発展性や継続性をおざなりにした、娯楽的で一過性のイベントやワークショップが散乱している。が、「ご近所映画クラブ」には、体験者が日常やアートへの新たな視野をじわじわと開拓する可能性があると感じられ、イベントというのは、連続、継続、蓄積可能な内容を持ってこそなのではないかと思うのである。今回のこどもてづくり映画もまた、幾人かの子どもの忘れがたい体験となり、人類にとってのアート全体を少し前に進める大きなエネルギーになると思った。

以下に、久保田テツとの書簡(メール)をもとに、NPO remoが「ご近所映画クラブ」に取り組んできた経緯を記し、活動の意義や今後への期待に替えたいと思う。

1)ミシェル・ゴンドリーについて

2)NPO remo[記録と表現とメディアのための組織]

HPより;
メディアを通じて「知る」「表現する」「話し合う」、3つの視点で活動する非営利組織です。メディア・アートなどの表現活動を促すほか、文房具としての映像の普及、映像を囲む新しい場づくりなどを行っています。

  • 世間一般に「与えられるもの」として位置付けられるテレビや映画などマスメディアの「映像」は、法律や権利、資本によって守られ、私たちが自由に電波を通じて発信することは制度的に困難である。
  • YouTubeの知れ渡った現在もなお、自分たちで映像を作ってアップすることは“普通の人”にはまれである。
  • ほぼ全てのスマートフォンにもハイビジョンで映像を記録できる機能がついている今、ペンと紙で手紙をかくように、映像で表現できたら楽しいのに・・・というのがremoの原点である。
  • NPO remoは設立当初から、そのような映像の位置付けと、「表現」を阻害する各種の制度や制約に対して、オルタナティブの模索を目指している。ゴンドリーの手作り映画の運動は、まさにその部分と合致する。
  • すなわち、広く、遠く、というメディアの性質とは真逆の、小さいコミュニティで楽しめる手作り映画、としての映像の振る舞いであり、巨大な資本も法的手続きも必要としないD.I.Yのメディア運動であることが、NPO remoに刺激的な運動として映り、映像メディアの豊かさの一側面を言い表していると感じた。

3)「ご近所映画クラブ」の誕生

  • ゴンドリーの著作を翻訳し、エッセンスを最大限に発揮させながら、remoなりの改変を加えつつ、2008年ごろから「ご近所映画クラブ」として活動を開始。ゴンドリーには、日本版として実施を進めると伝え、2014年に本人と会った際に、大変喜ばれた。
  • 基本的には大人向けのプログラムとして展覧会やイベントで何度も実施してきたが、子ども向けに実施しても面白いことに気づき、小学校でも開始。
  • これまで15校程度の小中高で実施しており、約70本以上の作品ができた。
  • 大人向けのプログラムと合わせると200本以上の作品が生み出されている。

4)子どもに向けた場合(学校での実施)

  • 近年は、小/中学校で実施する場合、アーティストを学校に派遣する団体:一般社団法人タチョナとの協働での実施が多く、彼らとルールのカスタマイズを重ねつつ、各所で実施中。
  • 小学校では「総合的な学習の時間」の枠内での実施が多く、また卒業式で流すことを理由に、学校から実施を依頼されることもある。
  • 学校では、グループワーク(1グループ5人〜7人程度が通常)で作品が出来上がることから、協調性やコミュニケーションの視点からも、このワークショップが評価されている。
  • 小学5年6年向けとしての実施を主としてきた理由は、話し合い、合議が成立する学年であるため。
  • 基本的には、小学校の授業の1〜2コマの時間割を使って実施する。
    例;
    1回目/映画のつくりかた(45分)
    2回目/内容と詳細を考える(45分)+休憩時間などを使って
    3回目/撮影
    4回目/上映会
  • 今回の「東九条こどもてづくり映画:映画づくりワークショップと上映会」のように、小学1〜4年生の低学年が多数を占める実施は初めだったので、「話し合い」がなかなか成立しなかったのが苦しんだ点だが、各班に配置され、子どもたちをうまく促してくれたサポートスタッフの尽力で、なんとか形になり、結果的にユニークな作品が生まれた次第である。
例=小学校での実施
https://youtu.be/HYiQ_oOy724
https://youtu.be/kNflj3DhWNM
https://youtu.be/C0rgr2BY2E0
例=大人の実施に子どもが混ざった実施
https://youtu.be/WBT8mSzVuSQ
PCによるオペレーション(こども映画の一部)
PCによるオペレーション(こども映画の一部)
カメラの使い方を教わる
カメラの使い方を教わる
ストーリーづくり
ストーリーづくり
上映会の司会をする役者さんたち
上映会の司会をする役者さんたち
役割分担
役割分担

※1 素人くさく、チャチで愛らしくかわいいなどの意で使われている。

開催日 <映画づくりワークショップ>
2018年8月6日(月)午後12時30分〜3時30分
<上映会>
2018年8月18日(土)午後7時〜7時40分
会場 <映画づくりワークショップ>
京都市地域・多文化交流ネットワークセンター内
<上映会>
東九条地域・多文化交流夏まつり ステージエリア
主催 一般社団法人アーツシード京都 https://askyoto.or.jp
東九条改善対策委員会
共催 NPO remo[記録と表現とメディアのための組織]
http://www.remo.or.jp
協 力 希望の家児童館、京都市地域・多文化交流ネットワークサロン
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