AMeeT
EVENT REPORT

イベント・レポート

栗本夏樹 漆 造形展

2014 10 24
会 期: 2014年9月30日(火)~10月12日(日)
会 場: ギャラリー恵風
〒606-8392 京都市左京区丸太町通東大路東入ル南側
tel.075-771-1011
http://keifu.blog86.fc2.com/
撮影者: 栗本夏樹

栗本氏の存在を初めて知ったのは、1985年の京都市立芸術大学制作展。
巨大な舟の形をした栗本氏の卒業制作作品「儀式」は、それまでの漆作品の規模を遥かに超えていて、京都市美術館のとある1室を占めていた。天窓から射しこむ自然光の中に揚々とあった、架空の古代から漂着したような姿が、今も目に焼き付いている。筆者には、漆作品への先入観がくつがえされ、衝撃的な漆「原体験」であった。もちろん、他の多くの人々が驚いて話題にし、栗本氏は実質的に「儀式」でデビューした。京都芸大の漆工科にも現代美術にも、新しい時代が来たのではないかと感じた。

今回の個展は、栗本氏の「儀式」制作前年の初個展から数えて作家活動30年を記念し、今年3回開催する個展の2展めとなる。個展タイトルは、漆工芸ではなく<漆 造形展>。絵画思考の平面作品と、乾漆、紙胎、木胎の立体作品で構成された。

壁面の平面作品は、円形である。木の板に貼った和紙のシワを残しながら色漆を重ね、ところどころに貝の薄片を配置。シワの山の部分に磨ぎ出された漆の各層、貝片の周囲では漆の塗膜に微かな縮みや縒れが見られる。案内状のビジュアルイメージとなった大きな作品「グリーンベルベット」、手のひら大の「誕生の時」では、栗本氏がかねてから関心を寄せてきた布・織物のように、シワや縒れが有機的にかかわり合って、とても表情豊かである。卓越した技術とそのコントロール、そこに加わる偶然の現象が抑制しあう様相が興味深い。凝視すると、砂漠や緑をたたえる星の表面が目に浮かんできて、球体が立ち上がり、人の手に成る<美術>というものが、無限と連続しているように見えてくる。

立体作品では、かつて、栗本氏が制作した甲冑や兜のように身につける作品を少し思い出す。乾漆作品「豊臣秀吉の陣羽織」では、種子の殻が割れて金や赤が現れ、命の生々しさのようなものがある。豊臣秀吉が単なる派手好みなだけではなかっただろうという想像に基づいた作品である。生命という点では、木の皮に直接漆をほどこした「生命のかけら」が、もっとも生の力を感じるかもしれない。

栗本氏デビューの頃、華々しく活躍する若手作家が<関西ニューウェーブ>と呼ばれた。その挑戦の場であった展覧会「YES ART」や「フジヤマゲイシャ」などを通じて、新しい表現が次々と生まれ、ミクストメディアやインスタレーションという言葉も定着していった。それまでの美術の制度や空間がほどけていくそういった過程に、栗本氏も、特異な<漆作家>として参加していた。いま思い返すと、関西ニューウェーブは、身体のスケールアウトや、外界との境界である皮膚との格闘であったように思う。美術は、量や質をつうじて、私たちをとりまく膨大な時間とか、<世界>と連続しようとしていた。美術において、その後、デジタルな手法とアナログな手法が解け合ってきたように見えるが、デジタル機器の使用が溢れる今、むしろ、美術(または芸術全般)は、やはりアナログ=連続した量を他の連続した量で表示すること、という行いに違いなく、これからも人(身体)による仕事でありつづけるだろうと確信する。

栗本氏の作家活動の根底には、世界各地への旅行や滞在体験から得た感覚や観察、日本の暮らしに見る調度や装飾への造詣が流れている。栗本氏の30年を振り返ると時、そのときどきで感動した栗本氏の各作品が、あらためて、20世紀と21世紀にまたがっているアナログな私たちの身体の象徴に思えてくる。
初個展から30年を記念する年内3展めは、11月1日(土)~23日(日)、大阪府枚方市のNote Gallery(TEL.072-396-0708)で開催される。
(松尾 惠 MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

作品名「生命のかけらⅡ」  77W×60D×395Hmm  木胎漆

作品名「生命のかけらⅡ」
77W×60D×395Hmm 木胎漆

作品名「グリーンベルベット」480W×26D×480Hmm 木胎漆

作品名「グリーンベルベット」
480W×26D×480Hmm 木胎漆

作品名「誕生の時 A」 135W×11D×135Hmm 木胎漆

作品名「誕生の時 A」
135W×11D×135Hmm 木胎漆

作品名「秀吉の陣羽織」 260W×150D×520Hmm 乾漆

作品名「秀吉の陣羽織」
260W×150D×520Hmm 乾漆

会場風景

会場風景


PAGE TOP