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EVENT REPORT

イベント・レポート

縄文遺跡発掘と展示「米原市杉沢遺跡の考古×美術プロジェクト#3〜春休みの遺跡〜」文:松尾 惠(MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

2019 03 14

米原市が2011・2012・2017・2018年、立命館大学と共同で発掘に取り組んできた杉沢遺跡。1938年の発掘調査以降、縄文晩期の集落が長期間継続していたことがわかっている有名な遺跡である。

本展は、2018年夏の発掘調査の再現展示。トレンチの内部すなわち地中にあった縄文の遺物を角度、深さ、表裏まで忠実に再現したインスタレーションを中心に、発掘隊や地域の人々と関わった美術家による写真作品や人々へのインタビュー映像、デザイナーによる空間構成など、「アート&アーケオロジー」の活動を示す展示となっている。また、本展は、平成30年度米原市埋蔵文化財活用シンポジウムの参考展示の位置付けであり、「遺跡はまちの宝もの」というタイトルのシンポジウムは3月3日(日)に行われ、美術家による発表もあった。なお、京都での「アート&アーケオロジー」は、フォーラムとして世界考古学会議京都(2015年)に向けて市内の関係者によって開始され、現在も、個々が多岐にわたって継続させている。筆者と縄文研究者とのつながりについては、「アート&アーケオロジー」フォーラムとの関わりをつうじて、すでに執筆を重ねているが、今回は、「遺跡はまちの宝もの」というタイトルを元に、美術のひとつの形・昨今の動きであるソーシャリー・エンゲージド・アートとして理解できるのではないかと考えた。

ソーシャリー・エンゲージド・アートには以前にも少し触れているが、芸術家の介入によって社会変革を目指すものだ。が、芸術家が糾弾者や告発者の役割を担ってしまう場合もあるし、過去の負の歴史を清算したり浄化(クリーニング、クレンジング)する力に取り込まれる危険がある。いっぽうで、ソーシャリー・エンゲージド・アートの進化に可能性を期待する中で、遺跡とともに暮らしてきた地域の人々の現況を知ることは、芸術と社会との幸せな関係を図るうえで大きなヒントだ。芸術という新たに持ち込まれる感覚によって、地域の人々と遺跡の関係を記憶にとどめ、記録の方法に個々の工夫が足されていくからである。暮らしの痕跡が地中に眠っているという感覚は、未知への好奇心として、多様な立場の人々を公平につないでいる。アート&アーケオロジーという考え方は、アートの行き詰まりを解消する目的ではなく、芸術家が芸術家という役割のまま、時間を超えて人を考えるソーシャリー・エンゲージド・アートのひとつではないかと思う。

本展の会場である伊吹山文化資料館は、伊吹山を仰ぎ見る場所にある。伊吹山は、良質の石灰岩の採掘でも有名。石灰岩は、芸術にとって、石灰石を焼き水を加えてつくる消石灰、消石灰を主原料とする漆喰、リトグラフの版として、身近でもある。

米原市杉沢遺跡の考古×美術プロジェクト#3〜春休みの遺跡〜
米原市杉沢遺跡の考古×美術プロジェクト#3〜春休みの遺跡〜
米原市杉沢遺跡の考古×美術プロジェクト#3〜春休みの遺跡〜
米原市杉沢遺跡の考古×美術プロジェクト#3〜春休みの遺跡〜
会場風景撮影:筆者
出展者 矢野健一(考古学者)とゼミ生、横谷奈歩(現代美術家)
会場 伊吹山文化資料館2階企画展示室
〒521-0314 滋賀県米原市春照77
電話: 0749-58-0252 ※本展問い合わせは電話にてお願いします。
http://www.city.maibara.lg.jp/kanko/rekishi/shiryoukan/4673.html
入場料 大人200円、小中学生100円
会期 2019年2月26日(火)〜3月31日(日)
主催 米原市教育委員会
共催 立命館大学文学部考古学・文化遺産専攻
デザイン UMMM
コーディネイション ヴォイスギャラリー
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