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EVENT REPORT

イベント・レポート

展覧会「描くこと|平田 猛 展」文:松尾 惠(MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

2019 03 15

高齢の平田猛さんは、長い入院生活を送ってきた中で、15年ほど前から絵を描き始めたという。本展は、毎日4枚ずつほど描かれてきた厖大な絵の展覧会である。鑑賞者の好き嫌いや、専門的な見方を寄せ付けない、圧倒的な集積が迫ってくる。

日々スケッチブックに溜まっていく絵のなかから、壁面に張り出された絵、スケッチブックのまま手にとって鑑賞できる絵、絵を描く平田さんのある日の映像。色鉛筆で描かれる絵は、内臓や骨を透過したような人体、ぎっちりと饅頭が並んだような四角で囲まれた丸の集まり、大学名や住所と読み取れる漢字、物の名前や薬名などのカタカナ、丸っこい体に耳と4本足としっぽのある動物たち、気に入った雑誌の写真を模写した人物や列車など。1枚ずつに平田猛のサインがある。しばしば画面の上部に現れる四角い色面は、病室から見える空とのこと。黒い空に星があったり月があったり、灰色や青色の空に太陽がある。モチーフの配置はほぼ決まっているが、ふたつとして同じ絵はない。

会場では、平田さんや平田さんが描く絵について、あるいは執筆者たち自身の描くこと・書くことについての寄稿集が配られている。さまざまな語り口の「描くこと」の内と外である。この寄稿集が、本展のもうひとつの骨格といってもよい。平田さんの絵を前にして読むことに意味がある。

ときに、筆者は、障害のある人のつくりだすものを美術やアートとして読み解いてはいけないのではないかと思うことがある。質の問題なのではない。凡人とは桁違いの次元から引き出される絵をはじめ多種多様な表現は、たぶん、その人の生業だからである。出勤していく家族や、決められた1日を開始する施設や病院の人々と同じく、その人の1日も始まり、1日を過ごすことは「仕事」なのである。

平田さんは、朝5時に起床して、昼寝をするとき以外は夜10時まで描き続ける日もあるという。本展の厖大な数の絵は、平田さんの時間を表している。もしかすると、圧倒されたのは絵の数ではなく、この先も黙々と続く仕事の時間であったかもしれない。

平田 猛 展
撮影:筆者
平田 猛 展
撮影:筆者
平田 猛 展
撮影:筆者
平田 猛 展
撮影:筆者
平田 猛 展
撮影:筆者
会場 art space co-jin きょうと障害者文化芸術推進機構
〒602-0853 京都市上京区河原町通荒神口上ル宮垣町83 レ・フレール1F
http://co-jin.jp
会期 2019年2月12日(火)〜3月31日(日)10〜18時
月曜休廊
主催 きょうと障害者文化芸術推進機構
寄稿集の執筆者 寺岡海(本展企画者、アーティスト)、川越病院の方々、南澤淳美(川越病院精神科医)、真野綾子(京都市立芸術大学大学院生)、吉永朋希(アーティスト)、上田普(書家)、松井智惠(アーティスト)、服部正(甲南大学文化部准教授)、柿木真菜(京都府健康福祉部障害者支援課副主査)、松野紬(中学1年生)、平田剛志(美術批評)
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