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EVENT REPORT

イベント・レポート

未来の途中 – 美術・工芸・デザインの新鋭12人展

2014 02 25
会 場: 京都工芸繊維大学美術工芸資料館
主 催: 文化庁、京都工芸繊維大学、京都工芸繊維大学美術工芸資料館
制 作: 京都工芸繊維大学美術工芸資料館
会 期: 2014年1月14日(火)~2014年2月28日(金)
休館日: 日曜・祝日、1月18日(土)、2月25日(火)、2月26日(水)
入館料: 一般200円、大学生150円、高校生以下無料

*京都・大学ミュージアム連携所属大学の学生・院生は学生証の提示により無料。
出品作家: 池田精堂、太田勲、岡達也、岡山高大、小倉智恵美、楠本孝美、ジュリー・ペレイラ、神馬啓佑、田中幹、寺岡海、中西瑞季、山本晃久
問合先: 京都工芸繊維大学美術工芸資料館
TEL 075-724-7924 FAX 075-724-7920
E-mail siryokan@kit.ac.jp
URL http://www.museum.kit.ac.jp/
展覧会HP: http://www.museum.kit.ac.jp/nap2013.html#20140114

文化庁平成25年度助成<大学美術館を活用した美術工芸分野新人アーティスト育成プロジェクト>採択事業の一環として開催された展覧会。京都・大阪など、地方都市の美術を丹念に見て歩いた企画者による、ここに今起こっていることの実証と、起ころうとしていることへの提言である。本展は、若い出展者たちにのみ未来を託すのではなく、誰の未来なのか、それぞれに構想する場となるだろう。危機的な現実に照らせば、美術系大学で年々弱体化しつつある美術工芸分野の再起に向けた展覧会とも感じた。

まず、作品本体についていえば、象徴的に「未来」を見せてくれたのは、シールを壁にインスタレーションしたジュリー・ペレイラ。作品の素材は、文具店などで容易に手に入る小さいシールだ。壁を離れて眺めると、無数に貼り重ねて繋がったシールは、小さな一定の単位を形成しており、ひとつずつが未知の文字に見えてくる。ブロックが縦横に連なる様は、拡大された書物である。また、シールの連なりは染色体や神経経路のようでもあり、粘度を失って壁にぶら下がるシールの束、床に落下した集合体は、身体から剥落した皮膚や毛髪のようだ。ペレイラ作品は、さまざまな次元に情報が蠢いていることを示唆し、一方で、それらを読解するカギであるかに見える。ペレイラ作品が発するのは、未来をつくるとはとりもなおさず読解すること、という予感である。

もうひとつの未来の象徴は、代々の鏡師を継ぐ山本晃久の作品だ。山本氏は、寺社の青銅鏡や白銅鏡の製作、古来の銅鏡の再生や修復を仕事としている。折しも、本展開始直後に魔鏡の解明が大きく報じられた。報道は、日頃銅鏡に縁のない一般人が、古来、人々が鏡に託してきた想いを知る手がかりとなった。鏡は、未来や真実を映すといわれ、いわば異界への入口である。未来もまた異界であり、鏡師というメディウム(霊媒)的な存在と同様、現代では、芸術という術師によって未来は照らされるのかもしれない。

その他に、美術の旧来の作法や構造を問い直す作品、身体感覚を夢の中や3次元空間へとスケールをずらす作品など、興味深い作品の数々であった。

さて、最後に、ギャラリストとして企画への感想も述べてみたい。開催の言葉に「美術系大学を卒業/修了し、プロとして歩み始めたばかりの若い作家たちは、実のところ自らを切磋琢磨できる場を十分に持つことができません。新進クリエイターにとって市場も批評も十全に機能しているとは言えない現状にあって、大学ができる若手の育成とは何か。それを作家たちとともに考えながら実現していきたいと考えています。」とある。これはそのまま、美術系大学の出口で作家の卵を待っているギャラリストへの投げかけでもある。ギャラリストという呼び名は、画商とは少し異なる響きを持っていて、自身のギャラリーや、プレゼンテーションの機会(=アートフェアなど)を持ち、無名の若手を発掘・そのプライマリー作品の美術的価値を世に問う仕事師である。新たな美術史への過程(未来の途中?)に必要な存在・機能といってよいだろう。しかし、若く新しい作品の前にも、旧来の美術業界や、業界を世渡りするための制度が厳然として存在する。筆者自身は、若いせっかくの才能を業界と制度の維持に浪費する必要はないと思っているので、ギャラリストの究極の仕事は、無名・無銘の若い作家とその枠組みから脱走することだと考えている。若い表現者は、のびのびとした幸福を求めて、個々に、自己確認/自己実現に懸命である。ある意味、既存の価値への抵抗である。ギャラリストは表現者の代弁や代理をしたりしながら、いわば表現者の抵抗や脱走を手助けする仕事なのである。

兵器の輸出によって経済を活性化させようとオトナは言うが、そのお金によって動く美術などしょせん儚い夢である。国際美術市場に参加するということは、世界じゅうの戦場や、お金に感謝も夢も持たない人々と共謀することだ。若い表現者は、未来の途中などといわず、大上段に、まったく別の筋道の未来を創ると言ってもらいたいものだ。
(松尾 惠 MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

※会期中、以下のイベントが予定されました(荒天のため中止されたイベントがあります)

関連企画アーティストトーク

2月8日(土)13:00−14:30
 @美術工芸資料館2階
出演:
太田勲、岡山高大、小倉智恵美、楠本孝美、田中幹、中西瑞季


2月15日(土)13:00−14:30
 @美術工芸資料館2階
出演
:池田精堂、ジュリー・ペレイラ、神馬啓佑、寺岡海、山本晃久

トークセッション1:アーティストの成長と展示

2月8日(土)15:00−17:00
 @京都工芸繊維大学プラザKIT
出演
:中谷至宏(PARASOPHIA京都国際現代芸術祭キュレーター)、 西川勲(ギャラリーマロニエ)、
正木裕介(Gallery PARC)

公開制作:寺岡海−バレンタインデーに星をつくる

2月14日(金)16:30−18:30
 @美術工芸資料館前(※雨天・荒天中止)

トークセッション2:キュレーターの眼、アーティストの眼

2月15日(土)15:00−17:00
 @京都工芸繊維大学プラザKIT
出演
:
保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員)+本展出品作家

展覧会をふりかえる

会期終了後、出品作家が展覧会を振り返り、意見交換を行なう場を設けます。
作家同士の討議の場ですが、ご観覧もしていただけます。詳細は決まり次第お知らせいたします。

池田精堂 展示風景

池田精堂 展示風景

小倉智恵美 展示風景

小倉智恵美 展示風景

神馬啓佑 展示風景

神馬啓佑 展示風景

山本晃久 展示風景

山本晃久 展示風景

ジュリー・ペレイラ 展示風景

ジュリー・ペレイラ 展示風景

寺岡海 展示風景

寺岡海 展示風景


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