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EVENT REPORT

イベント・レポート

ART360による展覧観測「石の声を聴く」文:松尾 惠(MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

2019 12 03

各地の展覧会を360°映像で記録し、配信するART360による。ART360は、360°映像を活用し、将来に残すべき情報として、また、鑑賞の疑似体験や実際に会場を訪れるきっかけとして、芸術の作り手と受け手を結んでいる。その中の活動<展覧観測>は、通常は鑑賞者の目に触れない、搬入から搬出までという展覧会の裏側をふくめて記録するプロジェクトである。10月、若手美術家:黒川岳と共同し、黒川の作品「石の声を聴く」から、巨石1体を運搬・展示する行為を観測した。

黒川岳は、自らの身体と自然環境、都市空間、社会制度などと音との相関関係を探求している。「石の声を聴く」は、巨石に穿たれた穴に鑑賞者が頭を入れ音を聴くプロジェクトだ。鑑賞者は、環境音や振動や鑑賞者自身が発する鼓動などの<音>を感知する。
https://www.gakukurokawa.com/listeningtostone.html

今回、「石の声を聴く」から重量2.5トンのひとつの巨石を選び、ある地点から別の地点へ移すだけの行為だったが、記録映像には、土木の専門技術、美術的なふるまい、見物人の反応が明瞭に捉えられたことと思う。同時に、道路交通法や美術における不可視な制度も映り込んだだろう。状況や感覚が複雑に織り込まれた、とても人間的なパフォーマンス作品の記録といえるかもしれない。公道に止めたユニック車から石を吊り降ろして手動油圧式リフトに乗せかえ、立ち止まる通行人や見物人の前を数人がかりでギャラリーまでの約200メートルを運ぶ。ギャラリー内でも、古来からの土木道具:三又を用い、作家の指示どおりに巨石を設置した。大がかりであるが、高揚という点では、<祭り>のようにシンプルでもある。

巨石は人をひきつける。ガラス越しに<石>であることわかると、ほとんどの通行人が反応する。高齢者には、イワクラ(磐座・磐倉・岩倉=神体)、美術に不慣れな観光客にはインスタグラムのモチーフとして映る。彫刻家は、たとえばイサム・ノグチの<自然石と向き合っていると、石が話をはじめるのですよ。その声が聞こえたら、ちょっとだけ手助けしてあげるんです>という言葉を思い起こす。もちろん、他のプロジェクトをふくめ、黒川の一連の仕事は、美術の専門家を惹きつけている。音楽環境創造科から彫刻科への進学した黒川の思考は、<アート>と平板に括られる美術状況を、良い意味で凸凹にする。

「石の声を聴く」の記録映像は、編集された後、ART360から配信される。

なお、同時開催のグループ展「美術考古」は、縄文文化の研究者:中村大、鏡師:山本晃久、金物店主であり美術作家:古川勝也、写真作家;西村勇人による。縄文土器片と現在すでに用途・製造法が不明の金物類とそれらを素材とするブリコラージュ的な古川作品、和鏡・神鏡・魔鏡製作の過程で産出される金属の作品化、現代社会に埋没する古墳の写真が、黒川の巨石と共存した。ふたつの展覧会が共鳴して、石の約1億年という年齢、1万年前や紀元前、古墳時代、100年前など、不可視の時間を造形する試みとなった。

搬入1=10月2日
搬入1=10月2日
搬入2=10月2日
搬入2=10月2日
搬入3=10月2日
搬入3=10月2日
トーク=10月5日
トーク=10月5日(ニュイ・ブランシュ参加イベント) *左上:西村勇人作品、右:山本晃久展示物
聴く=10月16日
聴く=10月16日
搬出=10月16日
搬出=10月16日
搬出=10月16日
搬出=10月16日
グループ展「美術考古」会場風景
グループ展「美術考古」会場風景

ART360による展覧観測「石の声を聴く」

観測期間 2019年10月2日(水)〜16日(水)
観測地点 黒川岳アトリエ、京都市立芸術大学、公道、ヴォイスギャラリー他
展示公開 黒川岳「石の声を聴く」*同時開催のグループ展「美術考古」
2019年10月4日(金)〜6日(日)と11日(金)〜13日(日)
共催 ART360、黒川岳、ヴォイスギャラリー
問い合わせ ART360 STUDIO
info@art360.place
https://art360.place/
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