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EVENT REPORT

イベント・レポート

展覧会「やきもの競技展」文:松尾 惠(MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

2020 03 09

東京2020オリンピック・パラリンピック開催にあわせ、1年間にわたって陶芸の技法やテーマを「競技」に見立てた展覧会が開催されている。7つの連続展のうち、2期目の<土>を鑑賞した。全「競技」中、唯一、原材料を種目とした展覧会だ。自らが採取した土で制作する作家7名による。以下は、作家(敬称略)の活動拠点と土。作品とともに展示された土もたいへん豊かな表情を見せていて、とても面白かった。

工藤和彦(北海道上川郡)
2億年前の粘土。4万5千年前より大陸から風で運ばれてきたもの(黄砂)。
柴田日登美(アメリカ/ノースカロライナ州)
作家自宅の土を始め、地元Seagroveの土を配合。
当真裕爾(沖縄県)
本島や久米島・石垣島などの沖縄諸島の土。
平野祐一(愛知県常滑)
常滑周辺の山々の土。
和田直樹(和歌山県富貴)
すべてこの地域から得た土・石・木
綿引恒平(京都府亀岡)
須恵器窯跡などが発掘される亀岡の土。
藤原有二(三重県伊賀)

焼き物には、技術・技巧や作家の存在など、たくさんの超絶的な語り口があるので、思いのほか、作品を気ままに観ることができないものだ。美術工芸史のみならず、権力者の歴史にまで思い巡らせると、造形への素朴な興味が薄らぐときもある。それに対して、本展では、自らが採取する土と作品が、作家のあり方へ直接つながっていく。創作と暮らしの直結は、現代社会においては、非常に意図的な選択なのだと思う。

本展会場周辺には、新型コロナウィルスの影響で観光客が激減した東大路と年月を経た登り窯の煙突が見えた。この<事件>は、情報や経済の一極集中に人々が懐疑的になり、後の考え方や表現に変化を生じさせるかもしれない。数十年前まで可能だった自給自足が遠のいた今、偶然にも、本展の<土>が、創作者と生活者の連続する視点を再考させてくれた。また、いっぽうで、現代美術では、モノ派からの流れとして、作品から素材へとさかのぼっても、物質が作家を語ることはないのではないか。対して、工芸は、原材料と作品と作家の循環であり、表現における自給自足のみならず、確実な持続可能性のなのではないかと、筆者は今更ながら気付くのである。

終了した展示をふくめ、「やきもの競技展」の種目・スケジュール・出展者は以下のとおり。

<削>2019年12月13日(金)〜25日(水)※終了
川戸圭介、五嶋竜也、鹿谷敏文、竹中浩、樋口奎人、南繁樹
<土>2020年2月7日(金)〜19日(水)※終了
工藤和彦、柴田日登美、当真裕爾、平野祐一、藤原有二、和田直樹、綿引恒平
<薄>2020年2月21日(金)〜臨時休館に伴い、3月1日(日)終了
澤村陶哉、穂積和彦、柴田恭久、長村萌花、中井絵夢、松本治幸
<光>2020年5月1日(金)〜13日(水)
井倉幸太郎、賀泉窯、伍嘉浩、田中哲也、新里明士
<磨>2020年6月26日(金)〜7月8日(水)
秋山陽、鯉江廣、重松あゆみ、Leonardo Bartolini、Marcello Pucci
<命>2020年11月27日(金)〜12月9日(水)
井尻杏那、杉浦康益、武村和紀、Peter Hamann
<鋳>2020年12月11日(金)〜23日(水)
青木岳文、禹寛壕、田中雅文、長江重和、林秀行
会場写真 撮影:来田猛
会場写真 撮影:来田猛
会場写真
会場写真
会場写真
会場写真
会場写真

展覧会「やきもの競技展」

会期 全7期 2019年12月13日(金)〜2020年12月23日(水)
10〜18:00、各会期の最終日17:00まで。木曜休館。
会場 京都陶磁器会館 2階ギャラリー
〒6605-0864 京都市東山区東大路五条上がる遊行前町583-1
phone:075-541-1102
http://kyototoujikikaikan.or.jp/
主催 一般財団法人京都陶磁器協会
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