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EVENT REPORT

イベント・レポート

特別展示「ひょうげた器 -三条せともの屋出土茶陶- 」

2012 08 31
会 期: 2012年7月14日(土)~12月2日(日)
開館時間: 午前9時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日: 月曜日(祝日の場合は翌日)
会 場: 京都市考古資料館 1階特別展示コーナー
入館料: 無料
主催: 京都市・財団法人京都市埋蔵文化研究所・京都市考古資料館
問合せ先: 京都市考古資料館 電話=075-432-3245
www.kyoto-arc.or.jp/museum

8月、京都の現代美術は夏休みだ。ギャラリーの多くは夏季休業し、アーティストたちも、ドイツのドクメンタや新潟へ「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012」を見に出かけたり、各国のアーティスト・イン・レジデンスへ出発したり、国内の地方都市の小さな芸術祭やプロジェクトへと出払う。

<現代美術>という最前線の創意が蒸発したような盛夏、京都に居残っていると、灼けたアスファルトの下から、昔の京都、過去の創意や叡智が、水蒸気のように立ちのぼる気配がする。教科書にあった横に細長い年表ではなく、ここでは、歴史は垂直方向に私たちを押し上げていく。
中でも、財団法人京都市埋蔵文化財研究所が運営する施設である京都市考古資料館は、地層の表層に立つ私たちを過去とつなげてくれる場所だ。

開催中の本展のメインは、江戸時代初期(17世紀はじめ頃)の多量の陶磁器だ。平安京からずいぶんと時が経った、比較的現在の私たちの足元に近い地層にあった陶磁器の数々である。中京区三条通柳馬場東入中之町から出土したそれらは、「茶の湯」に使用するために各地で生産され、当時三条界隈に集中していたとされる「せともの屋」の店先に運ばれてきた商品たちであるとのこと。 三条せとものや町界隈出土の桃山茶陶(中之町出土品)であり、京都市指定文化財となっている。

志野・織部・唐津・高取・信楽・初期京焼きなど、土の中に眠っていたとは思えない、手の跡が生き生きとした器たちだ。ひとつひとつをゆっくり眺めて、飽きることがない。ほぼ完全な姿の器には、それを品定めする人々の手指の動きまでもが目に見えるようだ。
展覧会名のとおり、展示される器は、ほとんどが自由に「ひょうげた」形をしており、大胆な絵柄が描かれている。まったく、現在のおしゃれな町家カフェの食器と言ってもよいぐらいだ。民藝運動や、近現代の陶芸と強くつながる美意識の再発見であった。
あわせて古田織部の邸宅跡から出土した角皿の展示や、古田織部が主人公である漫画「へうげもの」の一コマも掲示してある。(作者の色紙1点も壁面展示されていた)。資料閲覧コーナーには、漫画が最新の15巻まで置かれている。新たな陶芸ファンや骨董ファンを発掘、茶道への関心などこの漫画の力は大きいが、なによりも、本展では、目の前に生き生きとある出土品の時代へと近づける楽しい仕掛けである。また、ほど近い茶道資料館において9月17日まで開催の夏季特別展「京三条せともの屋町」と本展の両方を鑑賞するとなおよいだろう。

京都市考古資料館の2階では、旧石器時代からの時代別展示コーナー、縄文住居跡、土器変遷コーナーがある。オープン展示コーナーでは、出土品の一部を手に取ることができる。
筆者の通った中学校は阪神間の山裾にあり、裏山に会下山遺跡という縄文住居跡があった。昼休みに山へはいり、足元を掘り起こすと土器の欠片がいくつも出た。制服のポケットにしのばせて持ち帰り、いつまでも想像の時間を楽しんだものだ。
館外の猛暑と異なる時間を過ごし、あの頃の想像を思い出し、歴史の表層に立つことの意味を考えてみようと思った。
(松尾 惠 MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)


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