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EVENT REPORT

イベント・レポート

松井利夫による展示(穴窯で焼く器による)

2012 06 29
会 期: 2012年6月15日(金)~30日(土)
会 場: MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w www.voicegallery.org
撮 影: 藤場美穂

<個展>、と呼ばない展覧会である。
その理由は、以前にこの欄で取り上げた彼の展覧会と同様、作品単体の価値のみを問う展覧会ではないからだ。この5月、地元陶芸家や京都の若手陶芸家と松井が協同して京丹後市久美浜の穴窯でたくさんの器を焼いた。本展には、松井の手になる器と、今回使用した原材料や燃料=薪の残りを展示しているが、いわば窯を共有した人々がそれぞれに持っている人や情報のネットワークと、思想と手法の展示でもある。それらの現実から、松井は新しい創造のサイクルを手探りしているのだ。

久美浜の焼き物は、特別な焼き物の産地以外ではほとんど見かけない珍しいつくられ方をした。多くの陶芸作品がガス窯や電気窯で制作される現代において、時代に逆行するつくられ方をしたともいえる。芸術活動や暮らしをつうじて、現在のエネルギー政策がもたらすいびつなサイクルに気づいた松井は、過去のサイクルを再現し、新たな芸術的態度を見つけようとしているのだ。だから、松井は今回の焼き物から<作家性>や個性をはぎとるべく、人々が使用するための<器>に限定して制作した。主にろくろによる器は、形や大きさが不揃いだ。○○用というような用途も決められていない。使い手に任された器は、とても自由に見える。

器の原料・材料・燃料は、巨大な流通経路や中間搾取無く、人から人へ直接手渡されてきたものばかりである。そして、人々が費やした時間や情報網の他は、すべて無料。
たとえば陶土は、陶芸の過程で出たクズ土や工事現場の残土、久美浜で採取した土。釉薬は、久美浜の主に牡蠣殻である貝殻を原料としている。水産加工場から出る大量の殻は、そのまま海洋投棄すると海中のゴミになるので、海辺の広場にうずたかく積まれたままだった。それらを貰い受け、焼いて釉薬の原料とした。

薪=燃料は、久美浜の廃屋や放置家屋の梁や柱である。築50~100年の家屋に使われていた材木は、太いもので樹齢約80年の松である。そのような二度と手に入らない良質の木材だが、古材として再利用されないままゴミとしての焼却が通常である。窯の中で焼けた松の灰をかぶり、緑色を帯びた灰色の器も焼けた。このように、かつて暮らしの周囲の自然のものに少し手を加え、焼き物・染め物・織物・木工が行われていた。
ファインアートの文脈が流入すると土産物・民芸品、その後は民藝という思想の中で、それらは地域の現実から離れた。地域が中央の添えもののような存在になって、国土の縁に原子力発電所が並んでいる。

以前この欄で取り上げた松井の一連の提示;

<保存と活用~ツーボトル>2010年12月
http://www.ameet.jp/events/events_20110128/

<Einstein in the cage>2011年12月
と今回の提示は、制作の手法に行き詰まったための原点回帰ではなく、ヒトとして生き延びる法を引き寄せるための試行錯誤である。エコなどという消費のためのスローガンではなく、空気や水や土の循環と相互の活用を考える場と情報網を、ひとつの生命体としてアーティストは創造し得るのである。
http://test.ameet.jp/events/events_20120124/

<つちのいえ>プロジェクト ※継続中
http://www.ameet.jp/events/events_20110713/

など、アートマーケットとは別世界のアーティストの知性や行動とも深く関わっていくことと思う。
(松尾 惠 MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

松井利夫による展示
松井利夫による展示
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