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EVENT REPORT

イベント・レポート

岡山愛美展「透明な影/transparent light」

2012 06 20
会 期: 2012年5月25日(金)~6月3日(日)
会 場: LABORATORY
京都市中京区恵比須町531-13,RAD bld.3F
http://alter-laboratory.tumblr.com/
ディレクター: 山崎伸吾(hanare/ Refsign Magazine)
撮 影: 小川真輝

繁華街の小さなビルの急勾配の階段をあがると、入口の幕の向こうに暗闇があった。ペンライトを手にした先客が2人、作品を探してその中をそろそろと歩いていた。

岡山愛美の個展「透明な影/transparent light」は、屋根裏部屋を探検するような、暗闇の中のインスタレーションだ。岡山に手渡されるペンライトだけが作品に辿りつく唯一の頼り。白い洗面台にはられた水に映像が投影されていたり、ガラス鉢に満たされた水が、ペンライトの仄かな光を反射して壁に不思議な像を結ぶ。台の上で光を返す輪は、ソフトコンタクトレンズを環状に並べた作品だ。場内のハシゴ段をあがると、鉄骨の梁が見える。頭を低くして作品を探すと、空間の片隅に古びたつづらのような黒い箱があった。カギ穴をのぞくと、人がゆらゆらと動いている不鮮明な映像が見えた。

暗闇では、モノや人との距離感を失い、ひとつの会場で他者と<作品鑑賞>を共有している感覚も希薄だ。どこか孤独なまま、岡山が設置した作品たちや映像と対峙する感覚だけが強まっていく。人が個々に眠る夜、それぞれの夢の中にしかない像を確かめる感覚に似ている。脈絡なく、脳の片隅からこぼれ出る古い記憶を辿るようでもある。

岡山は、身近な日常や思い出から生まれるイメージを素材に、主に映像インスタレーションを発表してきた。机の上にこぼれたミルクに投影した映像、レンズをとおして焦点がぼやけた映像、ブラインド越しに見せる映像など。その多くは、家族との古いホームビデオが使用される。散歩道を飛び跳ねる幼い子ども、家族の後ろ姿、長く親しんだ部屋や家具や花々や現在の岡山自身が現れる映像もある。

版画を素地に持つ岡山にとって、描画や版画という実体が現在を象徴し、映像は、その撮影された瞬間から過去を象徴するものではないだろうか。私たちは現在を実体験と認識するが、時が未来に向かって進んでいる以上、実体験はたちまち記憶と名を変えて、多くは不鮮明に個人に内蔵されてしまう。そのもどかしさや孤独感が、多くの創造を生むのかもしれない。

岡山が提示してきた記憶や実在・虚像というテーマは、今回、暗闇の空間の中でもっとも的確に表現されたと思う。暗闇の孤独感は、個々が向き合うべき何かを思い出させてくれた。
(松尾 惠 MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

岡山愛美展「透明な影/transparent light」
岡山愛美展「透明な影/transparent light」
岡山愛美展「透明な影/transparent light」

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