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EVENT REPORT

イベント・レポート

財団助成イベント 映像芸術祭「MOVING 2012」

2012 05 31
会 期: 2012年4月20日(金)~2012年5月13日(日)
会 場: 京都芸術センター、京都シネマ、METRO 、Division、Social Kitchen 、第五長谷ビルB1店舗跡スペース、ホテルモントレ京都4階411号室(ART KYOTO 2012内) ほか
参加作家: Antenna、石田尚志、伊瀬聖子、Otograph、かなもりゆうこ、小山泰介、PsysEx、シグナレス、田村友一郎、辻直之、土屋貴史、トーチカ、林勇気、平川祐樹、松本力、水野勝規、宮永亮、村川拓也、Merzbow、八木良太、山口崇司
オープニング・ライブイベントへミュージシャンとして参加。
主 催: MOVING実行委員会(水野勝規、林勇気、宮永亮)
共同企画: &ART
共 催: 京都芸術センター
後 援: 京都市
助 成: 一般財団法人ニッシャ印刷文化振興財団、公益財団法人 花王芸術・科学財団、公益財団法人 野村財団、宝塚大学
協 賛: 株式会社フィールド、株式会社資生堂
ウェブサイト: http://www.moving-kyoto.jp/

"MOVING 2012"は2012年4月20日(金)~5月13日(日)の期間、京都市内7会場で開催した京都初となる映像芸術祭。会期中は日本全国から新進の映像作家18組を招き「映像の展覧会」「映画館での上映」「映像と音によるライブ」「映像に関するトーク」の4つを柱としてイベントを展開した。本イベントのディレクターという立場から、ライブ、展覧会、上映という3つのプログラムについて記しつつ、振り返っていく。

まずオープニング・イベントとなった、映像と音によるライブ"MOVING Live"では、ヴィジュアル×サウンドをコンセプトに、全4アクトのパフォーマンスを行った。シンプルな反復/積層という手法を用いながらも、素材の選択と独自のポリシーに基づくプログラミングにより、大きくイメージを飛躍させたOtographなど、いずれも素晴らしかったが、やはり圧巻だったのはMerzbowと山口崇司。カラフルな色彩で過激な変化をみせる山口のビジュアルは、Merzbowが発するノイズと一体化してひとつのエクスペリエンスを生み出していた。それと同時にノイズを通訳するかのように機能し、サウンドにポピュラリティーさえ与えていた。

また本イベントの実行委員であり、パフォーマーとしてライブへ参加した、映像作家の宮永亮による会場構成も特筆すべきだ。
シンプルに映像を見せるステージ、3面スクリーンのステージ、パフォーマーがステージに立つことを想定したステージという、3ステージの設計は、映像での空間構成力と、豊富なVJ経験を兼ね備えていなければ実現できなかっただろう。「多岐にわたるフィールドで活躍する映像作家が、マルチな才能を存分に発揮する場」を創出したという観点からも、他になかなか類例のない映像祭だったといえるのではないだろうか。

MOVING Live  Merzbow×山口崇司 演奏風景 2012年4月22日 METRO photo by INOUE Yoshikazu

"MOVING Live" Merzbow×山口崇司 演奏風景
2012年4月22日 METRO photo by INOUE Yoshikazu

映像の展覧会"MOVING Exhibition"では、計4会場(京都芸術センター、第五長谷ビル、Division、Social Kitchen)にわたって7組のアーティストの個展を開催。メイン会場となった京都芸術センターでは、会期を前後期に分けて展示を行った。
後期に展示した小山泰介は普段主に写真家として活動しており、映像を"写真の機能を時間的に引き延ばしたもの"と捉えたうえで映像作品を制作している。今回はプリントと映像を交えた展示を行ったが、作家自身が「すべての記録は断片である」と語っていることからもわかるように、その作品群は"現代のイメージを巡る状況に対する批評そのもの"と言うことができる。「見る」という主観的な体験からディティールを追い、辿り着いた認識の地平から世界を見渡すような、地に足のついた制作スタイルに、作品が内包する強度の要因があるように感じた。

小山が普段写真家として活動しているということは前述したが、一方、同時期同会場に映像インスタレーションを展示していた平川祐樹は、学生時代に劇映画を監督するなど映画をルーツに持つ。映像アート分野以外の表現者たちが、映像アートにおける表現の可能性を拡張してきたことは重要な史実だ。映像アート以外の文脈からコミットすることにより、新たな文脈を作り出すような特殊な発展の形を捉えながら、映像表現の歴史の最前線を紹介することができたのではないかと思う。

MOVING Exhibition3 小山泰介個展

"MOVING Exhibition3" 小山泰介個展 "in fragments"
2012年5月3日(木) - 5月13日(日) 京都芸術センター ギャラリー北
ギャラリーツアー時の会場風景 photo by OMOTE Nobutada

上映プログラム"MOVING Theatre"では、計11の映像作品をミニシアター京都シネマにて上映した。
本プログラムに平川が出品した『Some days, some hours, some minutes ago or later』は「映像に映っている光景(壁に写った窓枠の影)を撮影してからの経過時間をタイトルにすることで、映像が3日間の上映期間中に3日という時を経る」という発想を元に作られた作品だ(タイトルは上映毎に変更される)。
映画館がその役割を変化せざるを得ない状況の中で、映画館の機能を読み解き直すような試みは極めて重要といえる。本芸術祭のプレ企画第一弾として2011年に行った、映像上映会"MOVING"において、村川拓也が"WEBで公開されている映像"と"ウィーンからの中継映像"で作品を構築したが、映画館がこの先時代に寄り添って進化していくために、"映像のリアルタイム性"を取り入れることが不可欠であることは間違いないだろう。こういった実験的なアプローチは、イレギュラーな映画館の使用方法を許容してくれる京都シネマの協力的な姿勢があればこそ実現したことも忘れてはならない。

MOVING Theatre 2012年5月3日(木)- 5月5日(土) 京都シネマ アフタートーク風景(手前から八木良太、平川祐樹、田村友一郎、宮永亮) photo by OMOTE Nobutada

"MOVING Theatre" 2012年5月3日(木) - 5月5日(土) 京都シネマ
アフタートーク風景(手前から八木良太、平川祐樹、田村友一郎、宮永亮)
photo by OMOTE Nobutada

ライブ、展覧会、上映だけではなく、会期中行った2回のギャラリーツアー、3回のアフタートーク、そして最終日のトークイベントにもたくさんの方にご来場いただくことができた。目標に掲げていた「問題意識を投げかけながらアーティスト側と鑑賞者側の双方から映像の可能性を広げていく」ということは、ある程度の規模で達成できたと感じている。
また全会場の入場者数合計が5000人を超えたこと、同時期に開催していた"ART KYOTO 2012"が昨年にも増す盛り上がりを見せたことから、「適切な広報活動をすれば、現代アートのイベントであっても集客できる」ということが十分に立証できた。
プレ企画第一弾として今年の2月に行ったトーク・イベント"MOVING Talk vol.0"で、京都市文化芸術企画課の原智治氏が言っていたように、京都市民の現代アートへのニーズは確かに存在するが、現在は抽象的で見えにくい。こうしたイベントを継続していくことで、そのニーズを具体化し、状況そのものを変えていけると確信している。
(中本 真生 MOVINGディレクター/&ART編集長/アーティスト)

MOVING Live Otograph 2012年4月22日 METRO photo by INOUE Yoshikazu

"MOVING Live" Otograph 演奏風景
2012年4月22日(日) METRO
photo by INOUE Yoshikazu

MOVING Live 宮永亮×PsysEx 2012年4月22日 METRO photo by INOUE Yoshikazu

"MOVING Live" 宮永亮×PsysEx 演奏風景
2012年4月22日(日) METRO
photo by INOUE Yoshikazu

MOVING Exhibition1 松本力個展 Tales of Flower
2012年4月20日(金) - 4月30日(月・祝日) 京都芸術センター ギャラリー北 photo by OMOTE Nobutada

"MOVING Exhibition1" 松本力個展
"Tales of Flower"
2012年4月20日(金) - 4月30日(月・祝日)
京都芸術センター ギャラリー北
photo by OMOTE Nobutada

MOVING Exhibition4 平川祐樹個展 Mute Time
2012年5月3日(木) - 5月13日(日) 京都芸術センター ギャラリー南 photo by OMOTE Nobutada

"MOVING Exhibition4"
平川祐樹個展 "Mute Time"
2012年5月3日(木) - 5月13日(日)
京都芸術センター ギャラリー南
photo by OMOTE Nobutada

MOVING Exhibition6 水野勝規個展 clear scale
2012年4月20日(金) - 5月13日(日) Division photo by OMOTE Nobutada

"MOVING Exhibition6" 水野勝規個展
"clear scale"
2012年4月20日(金) - 5月13日(日) Division
photo by OMOTE Nobutada

平川祐樹 Some days, some hours, some minutes ago or later 2012

平川祐樹 "Some days, some hours, some minutes ago or later" 2012
"MOVING Theatre"出品作品

Antenna 六本木伝承 -Legend of Roppongi- 2012 MOVING Theatre出品作品

Antenna "六本木伝承 -Legend of Roppongi-"
2012 "MOVING Theatre"出品作品

MOVING Talk  第1部 会場風景 ゲスト:石橋義正、江村耕市 2012年5 月13日(日) 京都芸術センター ミーティングルーム2 photo by OMOTE Nobutada

"MOVING Talk" 第1部 会場風景
ゲスト:石橋義正、江村耕市  2012年5月13日(日)
京都芸術センター ミーティングルーム2
photo by OMOTE Nobutada

MOVING Talk  第2部 会場風景 ゲスト:澤隆志、長谷川仁美 2012年5月13日(日) 京都芸術センター ミーティングルーム2 photo by OMOTE Nobutada

"MOVING Talk" 第2部 会場風景
ゲスト:澤隆志、長谷川仁美  2012年5月13日(日)
京都芸術センター ミーティングルーム2
photo by OMOTE Nobutada


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