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EVENT REPORT

イベント・レポート

プロジェクト「思い立ったが吉日」文:松尾 惠(MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

2020 05 12

セザンヌは、リンゴで世界を変えてみせると言い、結果、人々のモノの見方やその意味を変えた。混迷する今、新聞紙面には<一元化されない「いま」>、<価値観の大転換>といった見出しが並ぶ。しかし、それらの実現を望むなら、社会が復元に向かうときにこそ芸術の力を思い出してほしい。

そのカギとなるだろう京都の若い美術家たちが何を考え、どう行動したか、この状況下の出来事をいまのうちに記録しておきたいと思う。整理しきれない行動も言葉もまた後年への資料になるかもしれないからだ。

2ヶ月ほどの間、急速にイベントの中止・延期、施設が休業されてきた。イベントをオンライン発信に切り替えたり、三密回避の手立てをして、小規模の若手ギャラリーやアーティスト・ラン・スペースは、ギリギリまで活動した。作家自身のアトリエから発信するオンライン展や、ショップも誕生しているが、4月に入ると、精神的にも低迷しつつあるようで、補助・助成金情報の共有程度ではないかと思う。休業を機に廃業するギャラリーやスペースも出てくるだろうし、美術家の活動停止も増える気がする。

その渦中、2月末に始まったプロジェクト「思い立ったが吉日」は、創作を止めない手立てを模索し、肌で感じる異常な日々を記録しはじめている。本プロジェクト参加者の多くが出展していたARTISTS' FAIR KYOTO 2020が開催中止されたのが、活動のきっかけである。中止直後から、各々が次の行動を起こしていた。そもそも、美術市場形成に偏重した行政の動きはいびつで不健康であった(巨万の富が動く国際的市場形成が京都でできるわけがないが)。アーティスト自らがセールスの現場に立たされるアーティストフェアに懐疑的であればこそ、催しの中止は、かえって若い美術家たちを自然な状態へ解放したのではないだろうか。

https://artists-fair.kyoto/

本プロジェクトの進捗は、参加者のひとり:黒川岳の記述に詳しい。一部を引用する。

・・・・・「中止の決定を受け、同アートフェアに出展者として参加していたフェアフェアは関連開催会場の一つであるBnA alter museumに作品を移動して公開予定だったパフォーマンスを実施。
また同じく出展者の黒川岳は3月1日に、展覧会場にて実施予定だったパフォーマンスの一部を鴨川にて実施。この時米村優人も鴨川に作品のひとつを持ち出し、パフォーマンスにも参加した。フェアフェアの一員であるMIMIC(熊野陽平・岡本秀)はこれらの動きを映像で記録した。」・・・

なお、参加作家の本稿が以前紹介した「石の声を聴く」の作家:黒川岳と関わりがあったため、本プロジェクトには筆者のギャラリーも共同している。以下、引き続き、黒川の記述を引用。

・・・「ヴォイスギャラリーでは4/17~5/17にKG+の展覧会を開催予定であったが、京都国際写真芸術祭KYOTOGRAPHIEはコロナウイルス感染拡大防止のため秋に開催延期を決定。このため、当初の開催予定期間の予定が空白となる。
 ヴォイスギャラリーの松尾惠氏は3月1日、黒川のパフォーマンスを観に鴨川デルタに訪れていた。ARTISTS’ FAIR KYOTO 2020中止の情報を知っていた松尾氏は、フェア中止を受けて困っている作家がヴォイスギャラリーの空間を使用し、KG+の当初の開催予定期間に作品を展示してはどうかと黒川に提案。同アートフェア中止を受けて作家の起こした反応のアーカイブ公開を中心に展覧会を行うことを構想した上で、黒川からフェアフェア・米村優人に話を持ちかける。」・・・

対面でのミーティングをかろうじて一度だけ開き、その後はオンラインミーティングを重ねた。作家にたちにとって、作品や作家を前に対話を起こすという日常は、すでに過去の文化や慣習であるかもしれない。さまざまな通信と配信のメディアを使いこなす世代であればこそだが、反対に、それらのすべての危うさと同時にアナログな手法やコミュニケーション法の再確認にもなっている。プロジェクト参加者の何名かは美術系の大学講師をし、オンライン授業の組み立てや家にこもる学生のケアに注力する。また、作品鑑賞や制作にかかわるさまざまな<災害>を想定した展示や行動を起こしたメンバー、作家の存在や出来事を記述・映像記録を活動とするメンバーがいる。時に紙媒体や印刷という旧来の手法を用い、残すこと、つながることに努力している。彼らは、新しい鑑賞・対話・議論・批評の方法も携えて、社会の復元に参加していくだろう。

マスメディアは、向かい合って対話しない・食事をしないなどという<新しい生活様式>を促す。接触とコミュニケーンの分断ばかりか、私たちは、もう元には戻れないのだろう。ならばあえて戻らないという<選択>のために、芸術がゆるやかで確実に機能することを信じる。

思い立ったが吉日
撮影:黒川岳
撮影日時:2020年2月28日 14:30頃
撮影場所:AFK京都新聞社地下会場
説明:ARTISTS' FAIR KYOTO 2020の搬入が完了した状態。手前に黒川岳、奥に米村優人の作品群。
黒川岳によるパフォーマンス告知。
黒川岳によるパフォーマンス告知。
思い立ったが吉日
撮影:村上美樹
撮影日時:2020年3月1日 13:00~14:00頃
撮影場所:鴨川河川敷(鴨川デルタ)
出演者:岡野瑞樹、黒川岳、楠井沙耶、谷口かんな、吉田開登、米村優人
フェアフェア文博搬入時
ARTISTS’ FAIR 2020に、フェアフェア名義で「作家が作品購入者と相談しながら制作するテーブルパフォーマンス」を出展。購入者=相談者の食生活や暮らしについて話を聞き、一緒に相談しながら料理のメニューと器のプランを制作する。作家と購入者が共同する作品販売のスタイルは、そもそもアートフェアイベントに対する批判的な実践として考案された。
フェアフェアドア搬入
2月28日、サテライト会場の一つであるアートホテルBnAに場を移す。
フェアフェア パフォーマンス
2月29日11時から18時、4組パフォーマンスを行った。

プロジェクト「思い立ったが吉日」

活動期間 2020年3月〜
参加者 宇野湧(うのゆう)、黒木結(くろきゆい)、黒川岳(くろかわがく)、クニモチユリ、MIMIC(岡本秀おかもとしゅう・熊野陽平くまのようへい)、米村優人(よねむらゆうと)、おばけの連判状
活動場所 インターネット、SNS、ヴォイスギャラリー
内容
田園LIVE
Instagramライブ配信。米村優人と前田耕平が、緊急事態宣言が発令された日から毎晩23時~24時、インスタライブで互いの生存確認を行う企画。
3夜連続トーク(終了・ログ公開中)
全メンバーによる。5月1日(金)・2日(土)・3日(日)19〜21時。
闇ドローイング
5月5日(火)・7日(木)・9日(土)・11日(月) 23時〜。
クニモチユリのteitter より、暗闇のなか形を描き起こしていく様子を配信。
吉日ノート
noteマガジン。メンバーが本プロジェクトを通して考えている事柄をできる限り言語化し、コロナ禍中の状況や各々の思考をアーカイブ。
思い立ったが吉日
facebook。ライブストリーミング配信をはじめとして、会期中に実施される様々なイベント情報を公開。
ごちそう帖
金銭面と闘いを繰り広げながら制作を続ける参加作家たちが、内田百閒著『御馳走帖』のスピリットを引き継ぎ「ごちそう」を呟く。
knockdown gallery(s)
唯一の実物展示。5月1日(金)〜10日(日)15~19時公開。
黒木結の発案。コロナ禍において実現不可能となった「ヴォイスギャラリーの空間で開催する展覧会を想像し、参加作家たちが立版古(たてばんこ)を制作、頒布する」企画。
ギャラリーに入店できない「非接触無人展」。
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