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EVENT REPORT

イベント・レポート

回転お寿司「アバンギルド急行何人事件」文:松尾 惠(MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

2020 08 22

衣装作家・南野詩恵が作・演出・衣装を担当する舞台芸術団体<お寿司>が座組や作り方や脚本の性質を少し変え<回転お寿司>として公演。題名にうっすら漂うように、名作<オリエント急行殺人事件>が引用されるが、身近な素材が挿入されたり、各演者ならではの持ち味が発揮されながら、ややこしくねじれていく喜劇である。

ある助成金を受けて公演を行うことになった演出家と俳優たち。晴れてお金を手にするには、申請内容どおりに芝居を進めなくてはならない。しかし、起こるべき殺人が起こらないため、芝居が前に進まない。大雪に立ち往生する列車内(という舞台)で、掛け違いがいつ、どこで、誰のせいで起こったのかを探り合う物語である。商人・主人・客人・他人・知人、異国の人々が次々と現れる。種を明かせば、晴れて助成金は降りるのだが、「何人事件」とは、なんにんなのか、なにじんなのか・・・。

観客は20名限定で、その他にも感染症防止策がとられていた。だからというには、やけくそに見えなくも無いが、演者が、全員マスクをつけているのである。マスクに唇や鼻はついているが、顔や表情が見えない。もちろん、セリフは、モゴモゴと聴きとれないときがあるし、聞こうとしても日本語でなかったり、そもそも言語でさえなかったりする。滑舌や声量は、すでに置き去りである。が、表情や声が不十分であることにはすぐ慣れる。そうこうするうちに、演劇への思い込みやいろいろなルールから開放されていく気がして、何か変な隙間に入り込んだような、元どおりにならない落とし穴に放置されていくような、しかし、かえって爽快な気分で、気がつくと大笑いしていた。

この春以降、表現の場や機会は、新型コロナウイルスによって消滅や縮小を強いられている。表現を見せられない、伝えられないとはどういうことなのか。失ったものばかりではないはずだが、得たものを確信するには、変わりすぎた状況にはまだついていけない。本作にも、現況にある会場や表現者のジレンマ、助成金という制度へのジレンマなど、身につまされる事柄が随所に埋め込まれていた。 けれども、本作は「ま、ひとつやってみましょうか」とでも言うように、洒脱で善良なのである。南野詩恵のちょっとズレてみせる高度な技であろう。演者とその人固有の人となりがうまく重なるところにも演出の愛がある。演者たちも、暴れる身体に、脚本の行間のようなものを象徴していて、細かく目で追うのが面白かった。身体や舞台を久々に目の当たりにして、ようやく、こちらの身体の底から欲していたもの、共感するものが引きずり出された。伝えるとか、伝わるとは、こういうことである。この時期に、会場も、表現者も、よくやったと思う。

3人を除く演者は、クラフト紙でできた服を着ていた。舞台で着替えたり格闘するうち、服は破壊されていく。演者同士が破れかぶれにテーブで補修しながら物語は続く。

つぎはぎの紙の服。いまは、それなのだ。元に戻らない世界を渡世していくのは、創造という、欠落と補てん、破壊と修復なのではないだろうか。

No Exhibition No Life
撮影:松本成弘
No Exhibition No Life
撮影:松本成弘
No Exhibition No Life
撮影:田崎洋輔
No Exhibition No Life
撮影:田崎洋輔
No Exhibition No Life
撮影:田崎洋輔

回転お寿司「アバンギルド急行何人事件」

日時 2020年7月10日(金)・11日(土)・12日(日) 各日19時〜
会場 UrBANGUILD
〒604-8017 京都府京都市中京区材木町 ニュー京都ビル 3F
http://urbanguild.net/
作・演出・衣装 南野詩恵
出演 内田和成/木村雅子/下野優希/瀧口翔/竹ち代毬也/逹矢/辻本佳/出川晋/フランソワ・アルデンテ /松本成弘/三枝眞希ほか
料金 一般¥3,000(当日¥3,500)/ 学生¥1,000(当日¥1,500)
+各1ドリンク¥600
問い合わせ osushie.minamino@gmail.com
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