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EVENT REPORT

イベント・レポート

展覧会「Hand specimen 小さな石と大きな景色と水平線」文・撮影:松尾 惠(MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

2020 11 06

美術家:衣川泰典と鉱物コレクター:西田勝一による<石>をテーマとした展覧会。衣川自身が拾い集めた石灰岩を版に用いた石版画と、高度なつくりものかと見紛う鉱物の不思議が重なっていた。市内一円で開催された写真祭と対極に、このように、新たな知見を呼び起こす活動が京都の芸術活動の特徴である。

衣川は、野山を歩き、版にすべく、直感的に石を拾い上げる。衣川が手にしたとき、石の形は、すでに何を描くべきかを示唆しているらしい。足元にあった石は、地球の表皮だ。版となる面を整える作業をつうじて、石のある情景やそのときの時間が刻まれていくのだろう。会場には、版となった石灰岩と、刷りとられたイメージが並べて展示されている。石と紙の間の増幅や共鳴が美しい。また、鉱物の形は人間の造形力を超えており、美しさに驚嘆するばかりだ。土の中にあった、その土が付着したままの、掌に乗る地球である。こうやって地球を少し知ることができるのだと思った。そして、芸術は、潜在的な地球を知覚する行為だと、思いを馳せた。

今、多様なプロジェクト型の美術作品がうまれている。コロナ禍は、個々のアトリエでの作業をベースに、身辺の限られた空間での濃密な観察、これまでの身体距離を超えるオンラインの活用などから、世界をことさら認識する機会になったからだ。いっぽうで、接触が分断されたからこそ、つくる行為が互いの身体と出会うことや身体の可能性そのものと分かちがたいという事実にも突き当る。衣川のこのたびの仕事は、プロジェクト型作品のもっとも地道な端緒であると思う。少し前から石そのものに着眼して、それまでのコラージュやペインティングによる大画面から、制作を多角的に発展させてきた衣川にとって、石の重量や硬度は、身体との間でエネルギーを反復させる装置なのだろうと思う。一見、個人的探求に見えるが、先々で大きな広がりとなるだろう。

ところで、従来、石版(リトグラフ印刷)に用いられてきたのは、ゾルンホーフェン産石版石だそうだ。石版になるのは、板状に薄くはがせる種類。ドイツのミュンヘン郊外にある町:ゾルンホーフェンは、ジュラ紀後期の石灰岩の産出地であり、板状に剥がれる石の間から化石が多数見つかることでも知られる。ここで発見され有名になったのが、始祖鳥化石だ。今から約1億5千万年前にいた初期の鳥で、学名は、アルカエオプテリクス・リトグラフィカ(アーケオプテリクス・リソグラフィカ)というのだそうだ。本展「Hand specimen 小さな石と大きな景色と水平線」というタイトルの中にも、地球の歴史と分かちがたい人間の有りようが幾重にも織り込まれている。

「Hand specimen 小さな石と大きな景色と水平線」
「Hand specimen 小さな石と大きな景色と水平線」
「Hand specimen 小さな石と大きな景色と水平線」
「Hand specimen 小さな石と大きな景色と水平線」

展覧会「Hand specimen 小さな石と大きな景色と水平線」

会期 2020年10月3日(土)〜11日(日)
会場 GALLERY HEPTAGON
〒602-8175 京都市上京区下立売通智恵光院西入中村町523
TEL:080-7583-3388
info@heptagonworks.com
URL https://www.heptagonworks.com/daily-movement/hand-specimen
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