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EVENT REPORT

イベント・レポート

舞台公演「SYNTHESE -DRAG meets CONTEMPORARY」文・撮影:松尾 惠(MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

2021 01 18

synthesesは、合成=synthesisの複数形。"SYNTHESE -DRAG meets CONTEMPORARY"は、コンテンポラリーダンスの普及や実験を企てるゴーダ企画が2年かけて実現させた舞台公演。ドラァグクイーンとコンテンポラリーダンサーのコラボレーションである。

コンテンポラリーダンスは、<古典>が前衛化する中で誕生したとされるが、現在のコンテンポラリー・ダンスは、1980年代前半のフランスで発祥した舞踊芸術運動とされている。が、筆者の印象では、日本におけるコンテンポラリーダンスはおおむねヨーロッパにルーツはなく、日本独自の<舞踏>・その後、という位置づけ。舞踏に<型>が見出されると同時に、さらに先鋭化したり逸脱する<型破り>が出現したのは当然のように思うし、現在、コンテンポラリーダンスに分類される身体表現は、個々の個性的な身体に起因し、新しい感覚や環境を創出したり、身体と身体の新しい関係性でもあると思う。同じく身体表現であるパフォーミングアートは、必ずしもベースにダンスとしての技術を求めないが身体の可能性という意味では、ダンスと重なる場合もあると考える。演者がまったく声や言葉を発しないわけではなく、演劇的な表現も見ることがあるが、コンテンポラリーダンスにおいては、基本的に言語表現が中心ではないというのが、これまでの印象である。(と考えると、ダムタイプという名の時代背景や強固な意志をあらためて感じる)

いっぽうのドラァグクイーンは、元は、過剰に飾り立てた女装の男性で、主にはナイトクラブのフロアやステージに君臨するアンダーグラウンドのスターたち。ドレスの裾を引きずる(drag)<女王>のルーツは、上流階級や特権階級を皮肉った過剰な女装ゲイたちのパーティーらしい。男性の女装は、歴史的にも多層・多様だが、現代のドラァグクイーンは、ゲイに限らず、女性の<過剰な女性装>の場合もある。マイノリティーを自認し、人権運動のアイコンでありリーダー的存在の人たちも多い。筆者は、ダムタイプを通じて、日本のドラァグクイーンを知り、本公演の演出を担当した関西拠点のシモーヌ深雪を知った。コンテンポラリーダンスと同じく、21世紀になって慌てたように提唱される<多様性>とともに、日本社会独特の受容のされ方がある。ドラァグクイーンと出会えるのは、今も、多くはナイトクラブやゲイパレードなどのイベントであり、文化芸術としてオーソライズされていく領域かというと、やはり、カウンターカルチャー的存在であり続ける。

本公演"SYNTHESE -DRAG meets CONTEMPORARY”は、出自やゴールが異なりつつも、それぞれ日本社会の現実を受容しながら独自に定着してきたふたつの領域が、どう混じるか・混じらないかを実見させてくれる刺激的な舞台だった。

ドラァグクイーンが、英語やフランス語の、あえて少し古びたポップスやロックやを次々とリップシンク(口パク)する舞台で、男性ダンサー6人と女性ダンサー4人が次々と衣装を変え、めまぐるしく入れ替わりながら踊る。ある演目ではバックダンサーに徹し、ある演目では、ダンスのみのアクティブなパフォーマンスを見せた。

日なたに晒すことが前提であるように、ダンサーの美しい腿、ふくらはぎ、背中の筋肉は、<健全>かつ雄弁だ。いっぽうのドラァグクイーンのきらびやかな衣装は、ジェンダーやセクシャリティーを覆い隠し、その影を表しているように見えた。全90分の舞台にストーリーはなく、数分ずつの各曲に独立する世界や寓話があった。ダンサーの身体能力、クイーンの常識はずれの衣装は、それぞれに、既存の価値から最速で脱走する。人との接触が禁じられる今、彼らの全力疾走は、とても快感だった。

会場の京都芸術センターの講堂は、かつて子どもたちが校長の訓示を聞き、国旗の前に<健全な>人生を教えられた場所だ。本公演"SYNTHESE -DRAG meets CONTEMPORARY”の華やかな照明や音響の向こうにも、除菌・消毒されたかつての社会がときどき透けて見えた。本公演のもうひとつのコラボレーションは、その空間が受容してきた幾つもの時代と、その影というものであったかもしれない。

SYNTHESE
SYNTHESE
SYNTHESE

舞台公演「SYNTHESE -DRAG meets CONTEMPORARY」

出演 合田有紀 野村香子 きたまり 辻本佳 瀧口翔 遠藤僚之介 益田さち 斉藤綾子 古薮直樹  木村英一
シモーヌ深雪 ブブ・ド・ラ・マドレーヌ フランソワ・アルデンテ そよ風さん アフリーダ・オー・ブラート ショコラ・ド・ショコラ ブルーレット オズ
上演日時 2021年1月10日(日)
14:00/19:00
会場 京都芸術センター 講堂
主催 ゴーダ企画
https://godakikaku.wixsite.com/synthese
共催 京都芸術センター
Co-program2020 カテゴリーD「KACセレクション」採択企画
助成 日本芸術文化振興基金
「京都市 文化芸術活動再開への挑戦サポート交付金」参画プロジェクト
協力 DIAMONDS ARE FOREVER、MASH大阪、京都市左京東部いきいき市民活動センター、金サジ、麥生田兵吾、仙波晃典
撮影 松園健史
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