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EVENT REPORT

イベント・レポート

carsten nicolai + raster-noton in CLUB METRO

2011 10 25
日 時: 2011年10月7日 19:30~
会 場: CLUB METRO http://www.metro.ne.jp/
出 演: レクチャー:carsten nicolai(講師)、浅田彰(ゲスト・インタビュア)
ライブ:alva noto / byetone / vladislav delay / Aoki Takamasa / agf / anne-james chatton / nibo / PsysEx
DJ:tsukasa / Tatsuya
撮影クレジット: レクチャー:(c) Osamu Matsuba/Red Bull Content Pool
イベント:久田元太

本レポートでは、レッドブルが主催するミュージックアカデミー"Red Bull Music Academy"と、メトロ大學のコラボレーションにより実現したcarsten nicolai氏によるレクチャー『PLAY, JAPAN! Red Bull Music Academy × メトロ大學』。そして、今年で15周年を迎えた、carsten nicolai氏が主宰するレーベル"raster-noton"と、最先端のアートとエレクトリックミュージックを紹介し続ける、京都を代表する電子音楽イベント"p.o.d."による合同イベント『raster-noton.metro 2011 feat. PLAY, JAPAN! Red Bull Music Academy patchware on demand 10th anniversary special/15th anniversary of raster-noton』をレポートする。

PLAY, JAPAN! Red Bull Music Academy × メトロ大學

まずはゲスト・インタビュアに浅田彰氏を迎えてのcarsten nicolai氏によるレクチャー。当然ながら客席は満席だ。raster-noton設立時の話や、インディペンデント・レーベル運営の話、ビジュアル・ワークの紹介など、これまでの活動内容を追いながら、仕事に対する信念を語っていくという有意義な内容だった。途中浅田氏がSteven Jobs氏の訃報の話題をふると、「経済的な理由に左右されずに、自らのしていることを信じる」という運営姿勢への共感を口にする場面もあった。

レクチャーの中で「活動を始めた時に影響を受けたものは?」という浅田氏の質問へ対する回答が印象的だった。ベルリンの壁崩壊前、東ドイツで活動を始めた時、西ドイツのラジオ番組を聴くことができたが、ロシア軍の電波妨害があり数字だけが聴こえる時間帯があったという。数字が終わるとまたラジオから音楽が聴こえたらしいのだが、その"数字と音楽の非意図的な組み合わせ"が素晴らしかったと語っていた。彼の音楽のオリジナリティーのルーツを垣間見ることができる貴重なシーンだった。

続いて合同イベントのライブ・レポート。いずれも本当に素晴らしいパフォーマンスだったが、本レポートではraster-noton勢のパフォーマンスに絞って取り上げる。

nibo

nibo

raster-noton勢の一番手はベルリンで活動し、raster-notonのプロジェクトに関わってきた日本人アーティストnibo。硬質で心地よい軽量感を持ったリズムパターン、重量感のあるキック、ディレイのかかった高音が徐々に折り重なり、独自のグルーヴを築き上げる。そのグルーヴが切り刻まれたようなユニークなタイムを持ったクラブビートへと発展していくプロセスは、緊張感に満ちていた。
続くagfはvladislav delayとのコラボレーションなどで知られる東ドイツ出身の女性アーティスト。This Heatを想起させるようなリバーブの効いたビートと、ノイズやドローンの要素が、直感的と思われるタイミングで接続された絶妙なトラック。そのトラックにあるときはポエトリー、あるときはパワー・エレクトロニクス、あるときはカットアップの手法を用いた、変幻自在のボイスが組み合わさる。彼女のパフォーマンスが持つ肉体的なイメージは、現代の多くのエレクトロニカ・アーティストにはない個性ではないだろうか。

90年代後半から主流となった、デスクトップを用いて制作されたエレクトロニカだけでなく、80年代以前のエレクトロニクスのアイデアをそれぞれのアーティストが消化しているところにraster-noton周辺アーティストたちの表現の厚みを感じる。

agf(Antye Greie)

agf(Antye Greie)

24時半頃に登場したのはalva notoのアルバムにも参加していたフランス人サウンド・ポエット(詩人)anne-james chaton。彼は京都のヴィラ九条山にアーティスト・イン・レジデンス・プログラムで滞在していた経験があり、京都のオーディエンスやアーティストにとっては馴染み深い。シンプルなミニマルビートのループにポエトリーがのせられる。"一曲ワンリズムパターン"を貫くストイシズム溢れるパフォーマンスだった。
続いてフィンランド出身のsasu ripattiのプロジェクトvladislav delay。彼は名義を使い分け、これまでにMille PlateauxやChain Reaction、自身のレーベルHuumeなどから音源をリリースしてきた。フランジングの効いた不安定なアンビエント・ループ・パターンから始まり、徐々にカオティックで美しい音の波が大きくなる。"独特のシンコペーション"と"過剰なほどのディレイ"という、極めてエクスペリメンタルなアプローチから、有機的なバイブレーションが生み出されていた。

深夜2時頃からはいよいよalva noto。低音の持続音、高音のパルス、連動するビジュアル、グリッジ音、抑制されながらも強いグルーヴ感を持ったビート。すべての要素が的確なコンポジションを保ったまま展開する。その均衡した音のバランスをノイズで浸食することにより破綻させ、ダイナミズムを引き起こす手法はコンセプチュアルでいて尚且つスリリング。展開するにつれて、ディストーションギターのような歪んだループパターンが、硬質なビートや乱気流のようなノイズと混じり合い、"エレクトロニカ・ファンク・グルーヴ"とも呼べるようなフロア向けサウンドを形成していた。

alva noto(carsten nicolai)

alva noto(carsten nicolai)

ライブのラストはカールステンニコライの盟友でありraster-notonの共同創立者の一人、olaf benderのプロジェクトbyetone。分厚いキックと音圧が精確にコントロールされたノイズに動きのある映像が重なる。重厚感を生かした強固なリズムパターンを軸としたサウンドが、フロア全体の一体感を作り出し、イベントは最高潮となった。

どのアーティストもそれぞれの方法で、オリジナリティーの高いパフォーマンスを繰り広げていた。来場者は緊密度の高い時間を過ごすことができたはずだ。
これだけソリッドで、しかも雰囲気のいいイベントが京都で実現できているのは、エクスペリメンタルなサウンドを追求できるCLUB METROの存在、そして国際的なアーティストをコンスタントに招いているp.o.d.の存在があるからこそだ。
p.o.d.は今年で10周年を迎える電子音楽イベントだが、10年の間に新進のアーティストを紹介しながらも、数多くの国際的なアーティストをゲストに迎えてきた。こうした循環があるからこそ、京都のような地方都市から優れたアーティストが生まれている。今後もその活動に注目していきたい。
(中本 真生 &ART/アーティスト)

PsysEx(Ken'ichi Itoi)

PsysEx(Ken'ichi Itoi)

anne-james chatton

anne-james chatton

vladislav delay(Sasu Ripatti)

vladislav delay(Sasu Ripatti)

Aoki Takamasa

Aoki Takamasa

byetone(olaf bender)

byetone(olaf bender)

DJ tsukasa

DJ tsukasa

DJ Tatsuya

DJ Tatsuya


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