AMeeT
EVENT REPORT

イベント・レポート

<つちのいえ>プロジェクト

2011 07 13
会 場: 京都市立芸術大学構内<芸大の丘>
主 催: つちのいえプロジェクト
ブログ: http://plusap.exblog.jp/

<つちのいえ>は作品ではない。
<つちのいえ>プロジェクトは、展覧会ではない。
沓掛にある京都市立芸術大学構内の薮の中で、土壁に茅葺きの小さな家が、人の手によって建てられつつあるのみだ。プロジェクトを率いるのは、アーティスト:井上明彦氏(同大学美術学部准教授)。メンバーの教員や同大学学生が土や木やさまざまな道具・技術と関わりながら、素朴で美しい家を出現させようとしている。それは、個人と社会性がおのずとリンクすることによって、美術の内と外を行き来する汗まみれのワーク・イン・プログレスだ。

完成したアクアカフェ。2010.8.17

完成したアクアカフェ。2010.8.17

家の主たる素材である土は、取り壊された民家の古い土塀の土の再利用である。昨夏、京都国立近代美術館において開催された「生存のエシックス」の中の「水のゆくえ」プロジェクトが、美術館の入口に土の家<アクア・カフェ>を建てた。いま京都芸大で建てられつつある<つちのいえ>は、<アクア・カフェ>解体後の土の再活用なのだ。さらに遡れば、アクア・カフェ以前に、取り壊される民家の土塀との出会いに始まり、その土壁が2カ所で建造物となり、そのつど解体され、保存されてきたという経緯を辿ることができる。
<つちのいえ>は作品ではない。

土を塗る。2010.1.14

土を塗る。2010.1.14

<つちのいえ>の素材は、再利用という流通をしているが、どのポイントにおいても利益をもたらさず、素材そのものも価値を上げることも下げることもしないからだ。あえて作品というならば、立ち上がってくる家がもつ情報、建てるための技術と労働の等価交換という、得難い価値をもたらす点だろう。
井上氏は、人や技術や情報の交換過程に芸術の真意を読みとろうとしている。これからの世界を生きのびる知の器に見立てているようにも見える。あるいは、つちのいえ>そのものが世界を表しているのかもしれない。

桜の下のつちのいえ。2011.4.9

桜の下のつちのいえ。2011.4.9

<つちのいえ>を訪ねたのは、梅雨の最後の中休みというような晴天の午後である。京都芸大は移転から30年経った。構内には、見捨てられたり忘れられた場所が生じている。<つちのいえ>は、校舎裏の草むらを登りきった木立の中にある。その空隙は、芸大の構内にあって、作品制作ではない芸術的行為が行き着くべき場所だったと感じることができる。そこには、これまでと異なる価値の集落が発生する気配もあった。帰り道、イバラのゲートをくぐると校舎とその背後のニュータウンが見えた。いつもならうんざりするような風景だが、<つちのいえ>のあとでは、それらの日々の営みも愉快に見えて来た。
<つちのいえ>は、井上氏らが担当する教育プログラムの側面ももっているが、非公開ではない。木曜日の午後、作業現場を訪ねることが可能だ。
(松尾 惠 MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

薮を切り開いて整地する。2009.4.23

薮を切り開いて整地する。2009.4.23

版築で壁をつくる。2009.7.23

版築で壁をつくる。2009.7.23

土と藁を練る2009.10.29

土と藁を練る2009.10.29

屋根をつくる。2010.10.14

屋根をつくる。2010.10.14

土を砕く。2011.6.9

土を砕く。2011.6.9

土ブロックをつくる。2011.6.9

土ブロックをつくる。2011.6.9

土ブロックを積んで壁をつくる。2011.6.9

土ブロックを積んで壁をつくる。2011.6.9

2011.7.7 現在

2011.7.7 現在


PAGE TOP