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EVENT REPORT

イベント・レポート

展覧会「さまよえる絵筆 東京・京都 戦時下の前衛画家たち」文:松尾 惠(MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

2021 07 09

展示内容に抗議が寄せられ、脅迫や妨害が起こり、展覧会中止や作品撤去が起こる時代である。そういった出来事がもたらす課題と問題は深刻で、無関心ではいられない。しかし、芸術は芸術でしかなく意図的にも無意識にも他から利用されてはいけない、というのも正直な気持ちだ。

SNS上の炎上に気をとられる現代、芸術家の正義とは何かと、本展は、大きなものを突き付けてくる。本展は、第二次世界大戦によって中断されたといわれる日本の前衛絵画が、弾圧や抑圧をすり抜けながらも、画家個人の真摯な取り組みとして力強く継続していたと伝える。スケッチ、タブローなどの作品をはじめ、芸術誌、メモや雑記帳、映像記録などが展示されている。それぞれに、芸術家個々の抵抗が潜んでいる。それが美術史の一部分にすぎないとしても、多種多様な受容者が無限に拡張されることで芸術がより複雑な迷路をさまよう現代、本展に触れる意義はとても深い。若い芸術家や支援者と、作品1点ずつの鑑賞はもとより、本展をひもとき、過去と現在を重ねながら共有したいと思う。

展覧会概要は以下のとおり。
https://www.bunpaku.or.jp/exhi_kikaku_post/samayoeruefude/

また、公式図録として発刊された書籍「さまよえる絵筆」は、興味深い論考に溢れている(みすず書房、弘中智子/板橋区立美術館学芸員・清水智世/京都府京都文化博物館学芸員 編集)。戦時下に前衛画家が古典や伝統を引用し隠れみのにしたことの裏付け、戦時下の古美術や考古学・京都の文化運動についてなど、10人近くの論考である。画家・団体相関図も、興味深い。

現代、アートマーケットの先鋭はいても、もはや前衛を担う芸術家はいないのかもしれない。かつての前衛画家たちは戦争によってさまよいはしたけれど、道を失うことはなかった。現在のパンデミックは、人類のあらゆる営為に影響するいわば世界大戦だ。かつての前衛画家たちのサバイバルに学ぶところは大きい。

長谷川三郎《都制》1937年、学校法人甲南学園 長谷川三郎記念ギャラリー蔵
難波田龍起《ヴィナスと少年》1936年、板橋区立美術館蔵
靉光《静物(雉)》1941年、東京都現代美術館蔵
チラシ
筆者撮影
公式図録
筆者撮影

展覧会「さまよえる絵筆 東京・京都 戦時下の前衛画家たち」

会期 2021年6月5日(土)~2021年7月25日(日)
10:00~19:30(入場は閉室の30分前まで)
月曜日休館
会場 京都文化博物館 3階展示室
入場料 一般500円(400円)、大学生400円(320円)、高校生以下無料
20名以上は2割引
2階総合展示室と3階フィルムシアターも鑑賞可
学生料金で入場の際には学生証提示
主催 京都府、京都文化博物館
協力 板橋区立美術館、みすず書房
後援 公益財団法人ポーラ美術振興財団、芸術文化振興基金助成事業
関連イベント(事前に告知なく、内容が変更されることもあります) 講演 「転換期の東京の前衛画家たち」
日時:2021年7月10日(土)10:30~12:00
講師:弘中智子(板橋区立美術館学芸員)
会場:京都府京都文化博物館3階フィルムシアター
定員:70名
参加費:無料(ただし、総合展入場券〈半券可〉が必要)。
申し込みフォーム

関連映画上映「疏水 流れに沿って」(能勢克男、1934年、14分)、その他
日時: 2021年7月10日(土)13:30~、17:00~
会場:3階フィルムシアター
鑑賞料:当日の総合展入場券〈半券可〉。ただし、再入場は不可。
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