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EVENT REPORT

イベント・レポート

展覧会「集う人々 描かれた江戸のおしゃれ」文:松尾 惠(MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

2021 07 15

「日本美術の教科書」といわれる細見美術館のコレクションから、重要美術品の屛風2点をふくむ、絵画、道具、小袖など30数点もの展示である。

第1章「名所に集う人々」には、もう忘れてしまいそうな密集・密接の花見、祭礼、踊りなどの屛風が並び、描かれた人々のさざめきや喧噪に包まれる。山鉾巡行を描く<祇園祭礼図屛風>は、去年につづいて巡行のないこの夏の寂しさを埋めてくれる。仮装したり着飾った人々が踊り歩く<風流踊り図屛風>にはレイブパーティーや夏フェスを思い浮かべ、<洛外図屛風>には観光の盛況を思い出す。<江戸名所遊楽図屛風>に見入ると、手を叩いて歌舞に興じる人、屋内で碁を打つ人、柱の陰から遊女を覗き見ているような男、怠けている駕籠かき、走り回る子ども、小競り合いなど、さまざまな情景に出会う。遠くの池の端には、お忍びで郊外に出かける貴人らしき姿も見える。楽しみ、興じることは、人間にとって不可欠だ。群れて、ディスタンスを飛び越えるのが人間らしさだとつくづく思う。

また、いずれの屛風でも、表情や仕草が、ひとりずつ描き分けられ、性格まで透けて見える気がする。日本美術を観るとき、とくに群像や都市の切り取られた一瞬の情景描写や人物描写は、漫画、アニメ、フィギュア、ゲームの直系の祖であると感じる。描かれた場面の次なる展開を想像すると楽しい。

コロナ禍では、着飾る機会も減った。が、「おうち時間」などとだらけている場合では無い。第2章「男の出立ち、女の着こなし」では、勝田竹翁<観馬図屛風>に、着飾る気合いを思い出す。とりわけ、おしゃれを競う武士たちの装束は多彩で、現代の男たちよりはるかに派手なことに驚く。色白から色黒まで肌の色が塗り分けられている。多彩な装束は、肌の色にあわせてコーディネイトされたのだろう。もとより女たちの装いはいっそうあでやかで、色彩や布に施された技巧など、すみずみにおしゃれ心が潜んでいる。<五美人図>ではショッピングの浮きたつ気持ち、<誰が袖図屛風>では着るものに迷う特別な時間を連想する。展示やイベントのオープニングパーティーの再開を心待ちにする今、ことさらの憧憬を持って観た。

梅雨明けはまだ少し先のようで、その先には、また祭りやフェスのない夏が来るのだが、だからこそ、絵の中の人々の熱気や熱狂に混じり、楽しい想像をめぐらせることができる展覧会だ。第3章「時世粧(いまようすがた)」には、山東京伝の序によるさまざまな人の姿を描いた<江戸風俗図巻>があった。裕福な町人の息子、箱入り娘、手代、子に頼る親、夜鷹、花魁など、職業や身分ばかりでなく素性まで見えるような、いまでいう「あるある」な人のスナップである。「100年後の人々が知ることができるよう、これらの人々を書き残しておく」と、山東京伝は序文を記している。約200年後、受け取れたのは幸せだ。

江戸名所遊楽図屛風 6曲1隻 江戸前期 細見美術館蔵
五美人図 葛飾北斎 1幅 江戸後期 細見美術館蔵
江戸風俗図巻(部分) 1巻 江戸後期 細見美術館蔵
チラシ表面
※会期が変更されました。変更後の会期は末尾のイベント情報をご参照ください。
チラシ裏面
※会期が変更されました。変更後の会期は末尾のイベント情報をご参照ください。

展覧会「集う人々 描かれた江戸のおしゃれ」

会期 2021年6月4日(金)〜8月15日(日)※会期が変更されました。
10:00〜17:00(入館16:30まで)、月曜休館
入場料 一般¥1,300 学生¥1,000 *HPに提携優待一覧
会場 細見美術館
京都市左京区岡崎最勝寺町6−3
https://www.emuseum.or.jp/
主催 細見美術館、京都新聞
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