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EVENT REPORT

イベント・レポート

保存と活用~ツーボトル~

2011 01 28
会期: 2010年12月15日(水)~26日(日)
会場: GALLERY RAKU(京都造形芸術大学) http://www.kyoto-art.ac.jp/raku/
京都造形芸術大学GALLERY RAKUにて 撮影:表 恒匡(SANDWICH) Photo by OMOTE Nobutada(SANDWICH)

京都造形芸術大学GALLERY RAKUにて
会場撮影:表 恒匡(SANDWICH)
Photo by OMOTE Nobutada(SANDWICH)

2010年の最後に見た展覧会。
昨年のしめくくりが本展であったことをつくづく嬉しく思う。美術家には、大切な仕事が残っていると再確認できた展覧会だった。

美術は、美術史の・美術市場の・美術家の精神の虚飾や、驕りではない。個々の美術家は、周囲がどう変容しようと、美術そのものの力を信じている。本展はその美術家の仕事である。主催者ツーボトルは、陶芸家として国内外で活躍する松井利夫とさまざまな素材や技法を自由に横断する20代の小山真有によるユニットだが、本展の場合、厳密にいえば彼らは<作家>に限定できない。<美術師>といえばよいかもしれない。いずれにしても、本展は英語で呼ぶところのアーティストによる仕事であり、アーティスト(芸術家、達人)としての資質を最大限に、社会活動としての美術をまっとうしようとする人々といえるだろう。またツーボトル2名の個々に因る美への探究心が、現代の美術や工芸から漏れ落ちる技術や人の営みを結ぶ意味で、日本語での<美術>の仕事と理解するのがふさわしくもある。

京都造形芸術大学GALLERY RAKUにて 撮影:表 恒匡(SANDWICH) Photo by OMOTE Nobutada(SANDWICH)

展示物は、盆栽、蛸壺、火鉢、無人販売所をめぐるドキュメントや再編成。盆栽の行く末を按じる90才の手元から方々へもらわれていった盆栽と新たな持ち主との1年を報告する「盆栽」のパート、作り手が絶えつつある素焼きの蛸壺の新たな用途を考え普及に力を注ぐ「蛸壺」のパート、製造が絶えて久しい信楽の火鉢とその驚くほどモダンなデザインや梱包用の縄をなう技術を伝える「火鉢」のパート、農村の道路脇に佇む「無人販売所」の記録、そこから発展した美術作品の無人販売所「無人さん」のパートなど。それらの元の姿や有り様は洗練された美術から遠い存在かもしれないが、美術家ツーボトルを刺激した。また、個々の品々や記録は、古道具市や民族学博物館や地方の芸術祭から持ち帰った珍品の陳列ではなく、各々の生産者とツーボトルを平等に結んでいる。展覧会<保存と活用>は、民具に新たな高級品としての価値を見いだそうとするものではなかった。ツーボトルの素朴な好奇心は、世間が美術家に期待する<善意>と無縁なのだ。

京都造形芸術大学GALLERY RAKUにて 撮影:表 恒匡(SANDWICH) Photo by OMOTE Nobutada(SANDWICH)

たとえば、ツーボトルは、プラスティック製にとってかわられ絶滅寸前である素焼きの蛸壺に着目する。蛸壺が炊飯に向いていると発見し、蛸壺の炊飯キットを販売する。また古典的な蛸壺漁を実際に体験し、その普及をめざして記録DVD付きの蛸壺も販売する。微々たる仲介料とはいえ、ツーボトルは、<善意>による奉仕としてではなく、美術を軸とする文化や物品の流通に加担するささやかな対価を得るのである。蛸壺の需要が高まれば、たった一社しか残存しない素焼き蛸壺製造業という営みは生き延びることができるのだ。一方で、私たちは、タコのいる日本の海や稲作に思いを馳せ、さらにもっと広くて深い思慮へと進んでいく。

実際に、美術家が他人の製造した蛸壺を、ましてやひとつずつ手売りするなどということは、現在の美術の動きといろいろな意味でズレている。けれども、そのズレの中に、美術には、世界の連環とか新しい約束を創る力があると気づくのである。

何か美術が落ち着かないままであった2010年の終わりにそれを信じることができてよかったと思う。現在、アートという呼称に説明は不要だが、明治初期にとってつけたように翻訳された<美術>という言葉にあえて踏み込む必要を感じたのである。
(松尾 惠 MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

京都造形芸術大学GALLERY RAKUにて 撮影:表 恒匡(SANDWICH) Photo by OMOTE Nobutada(SANDWICH)
京都造形芸術大学GALLERY RAKUにて 撮影:表 恒匡(SANDWICH) Photo by OMOTE Nobutada(SANDWICH)
京都造形芸術大学GALLERY RAKUにて 撮影:表 恒匡(SANDWICH) Photo by OMOTE Nobutada(SANDWICH)
京都造形芸術大学GALLERY RAKUにて 撮影:表 恒匡(SANDWICH) Photo by OMOTE Nobutada(SANDWICH)
京都造形芸術大学GALLERY RAKUにて 撮影:表 恒匡(SANDWICH) Photo by OMOTE Nobutada(SANDWICH)

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