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EVENT REPORT

イベント・レポート

KYOTO ART MAP 2010
「アートマップ月間」

2010 11 02
会 場: 京都アートマップ実行委員会参加の各ギャラリー
主 催: 京都アートマップ実行委員会
http://www.kyotoartmap.org
会 期: 2010年10月1日(金)~31日(日)
関連イベント: トークイベント「京都の美術・百物語」
第1部各ギャラリーのエピソードを披露/語り手:吉良浩一・加藤英真(俳優)
第2部座談会/小吹隆文(美術ライター)、沢田眉香子(編集者)、竹内厚(ライター・編集者)
※会場・共催:京都芸術センター

KYOTO ART MAPは、私営の現代美術系ギャラリーが連動して1998年から開催してきたイベント名。京都市内に約450軒のギャラリーや画廊が看板を掲げる中で、現代美術に特化しているのは20数軒。KYOTO ART MAPには、現在14軒のギャラリーが参加し、実行委員会を構成している。スタート時、同時期に参加ギャラリーの企画展を集中させた企画展フェスティバルともいうべき基本スタイルを発案。その後、同一会場での合同展もふくめて、開催年には、時事的課題を掲げたシンポジウムや対談や交流会を開いてきた。(1998年~2010年の活動詳細は、http://www.kyotoartmap.orgをご参照ください)。

一方、実行委員会では、ギャラリー所在地を広く周知する地図を継続して発行してきた。こちらもKYOTO ART MAPの名で親しまれており、初回発行以降デザイン性・利便性をより高めつつ、市内の芸術系大学や全国の美術ファン・美術関係者、観光関係を通じて無料配布を続けている。発行部数は当初の2万部から5万部に増やしているが、関係各位による協賛金を印刷費に充当できるため、すべて無料配布することができる。

実行委員会は、京都のアート事情を反映して、貸しギャラリーと企画展専門ギャラリーの混成。成り立ちや運営方針の異なるギャラリーが集えたのは、京都の現代美術やそのアーティストとギャラリーの存在意義を高めたい、という想いが一致していたからだ。地図発行には、現代美術による地域振興の意味もある。初代事務局は、京都で最も古くから活動しているギャラリー16代表の井上道子。2002年から、2代目事務局を私が担当している。

ちなみに、貸しギャラリーとは、いくばくかの賃料(おおむね1週間単位)でアーティストに展示の場を提供するギャラリー。企画展専門ギャラリーは、スペースの一般貸し出しを行わず、ギャラリーによる主催展のみを開催しているギャラリー。両者の違いは、アーティスト側から見れば、アーティストが場所代を払って自らのプレゼンテーションを行うか、作品の売上げやその他、展覧会の成果をギャラリーに出来高払いするか、である。また、貸しギャラリーもしばしば自らの方向性を示す企画展を行う。貸しギャラリーも企画展専門ギャラリーも、作品を販売したり、アーティストのマネジメントをすることもある。京都の現代美術系ギャラリーには、ギャラリーという看板の下に業務や社会的意味を兼ねてきたのである。

京都では、ファインアートだけでも年々2,000人ほどが芸術系大学を卒業してくる。自らでチャンスをつくるために、これまで多くの芸大生が貸しギャラリーを足がかりにしてきている。しかし、どこでもよいというわけでもなく、長いギャラリー運営の間にアーティストによってランク付けが生じた。人気上位のギャラリーは借りるのに順番待ちであった時代もある。そして、アーティストが、貸しギャラリーでの年数回しかない企画展に取り上げられることと企画展専門ギャラリーに才能を認めてもらうことにほぼ同等の価値を見ながら、1960年代以降の京都特有のギャラリー文化が定着したといえる。

KYOTO ART MAPでは、始まりから12年にわたって、貸しギャラリーや企画展専門ギャラリーが手を結びあうことを特色としてきた。業態は混成であるが、各ギャラリーの企画力を競う場となり、若いアーティストのやる気と活動を後押してきたといえるだろう。
が、今年のイベントKYOTO ART MAPは、「アートマップ月間」と題し、スペース貸し出し展・企画展にかかわらず10月1ヶ月間の展覧会すべてをイベント参加と認めた。企画力を競う意味では、残念ながら希薄である。これには、昨今盛んなアートフェア、アートオークション、アートフリーマーケット、オープンスタジオなど、さまざまアート普及・振興イベントの影響が大きい。それらが、目的と意図を明確に掲げて成果を上げているのに比べ、ギャラリー所在地とその通常の活動ぶりを紹介するイベントKYOTO ART MAPは、徐々に非常に目立たない存在=世間の期待度が低いイベントになりつつあった。また、参加ギャラリーのいくつかは、アートフェアによりリアリティーを見いだし、ギャラリー運営の自覚と実利を上げる活動へと転換している。これまでKYOTO ART MAPには、国際アート市場に打って出て作品価格の高騰や暴落のリスクを抱える完全なコマーシャルギャラリーは参加してこなかったが、そちらへと関心も高まりつつある。

アート事情と経済状況は、年々変化している。アーティストのデビューの仕方や個々のゴールはさまざまに枝分かれした。ギャラリーもまた、さまざまな欲望渦まくアートシーンにおいて具体的な成果を上げることが、その専門性を社会化することにほかならない。もちろん、経済的な成功だけではないが、なぜギャラリーを運営しているか、その意図がアーティストのみならず、アートファンやコレクター、批評家、ジャーナリスト、資金提供者などの現実的な欲望・欲求と結びつかない限りは、存在が無意味なギャラリーも生まれてこよう。

そうなっても、京都市内のアート情報に精通するギャラリーがリードし、ネットワークを組み、情報伝達や意見交換することは有効だろう。しかし、世代交代の始まったKYOTO ART MAPのギャラリーの集まりの中で、他のアートの動きをバネに熱意の差を均一化することは不可能である。

KYOTO ART MAPは、これまでの京都のギャラリー文化の実証という役割を終えた。漫然とした継続ではない、新たな形を実行する時代にきてしまった。
(松尾 惠 VOICE GALLERY pfs/w)

トークイベント「京都の美術・百物語」風景その1
トークイベント「京都の美術・百物語」風景その2

2010年10月9日「京都の美術・百物語」会場風景/共催・会場:京都芸術センター

マップ

マップのイメージ画像


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