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EVENT REPORT

イベント・レポート

テキスタイルミーティング2009

2009 10 06
会 期: 2009年8月29日(土)~9月9日(水)
会 場: 元・立誠小学校(京都市中京区)
主 催: テキスタイルミーティング2009実行委員会
共 催: 立誠・文化のまちプロジェクト委員会
企 画: 辻喜代治/ジ・オフィス
入場料: 無料

かつての小学校校舎において開催された、関西のテキスタイルの作家を中心とした展覧会。企画者の辻喜代治氏によれば、1人の作家が気になる作家2人を選び、影響しあう展示空間を構成したとのこと。辻氏は、かねてから工芸やデザインに関する優れた企画で知られた人であり、今年4月には、漆作家による『漆ミーティング2009』という展覧会も企画されている。

さて、今回の展示作品でもっとも印象深かったのは、TOYAZAKI+KAGAJO(戸矢崎満雄、加賀城健)の作品だ。床に日本の国旗が敷き詰められているが、戸口に掲げるぐらいの大きさの国旗が教室の床に敷き詰められており、それらには、日の丸に重ねて何種類かの青色や、ほぼ原寸大の錦鯉たちがプリントされている。また、彼らの作品を壁の白本恵美の作品が取り囲んでいる。その作品は、幼い子どものワンピースのようなイメージが織り出されたもので、被爆資料を撮った写真家:石内都の「ひろしま」を思い起こさせる。これらが展示された元・教室の壁の一面は、背表紙に金文字が刻印された古い書籍の棚だった。昨今、さまざまなアートに開かれ始めたこの小学校だが、TOYAZAKI+KAGAJO+白本恵美は、かつての小学校という場所の性格と作品がもっとも緊密にむすびあった提示ではなかったか。戦争や教育や国家や文化など、現在の私たちを形づくる要素が透けて浮かび上がってくるような展示であった。

同じく、場所と作品が親密な関係にあったのは、階段の踊り場の窓を覆うパッチワークの野村晶子作品。訪れた日は、急に夏が終わって行くような、少し風のある薄曇りだったが、作品が風に揺れ、弱い日射しがステンドグラスのように作品を透過していた。その様子が美しかったのと、その脇にあった作品の糸くずをまぶしたような、粘着テープのゴミ取りローラーの美しさが印象的だった。うるさくて、埃くさくて、でも元気のよい子供たち、を物語るようにそのローラーも雄弁であった。反対に、学童用の机と椅子数十組のそれぞれを白い化繊で覆った島田清徳のインスタレーションは、静謐である。寡黙な中に、教室の隅々に残る騒々しさや歴史を包み込むかのようだった。

近年、京都市内のみならず、各地において惜しまれながら閉校する小中学校が相次ぎ、アートの場として再生する事例が多い。建物や設備を傷めないのが展示の大前提という理由もあろうが、多くの場合、表現が実にうまく環境や郷愁に寄り添っており、校舎における展示というスタイルが出来上がりつつあるように思えて、意外性は少ない。この100年ほどの間に、校舎は、変遷するいろいろな意味での制度や慣習を象徴し、子供たちを物語ってきた。いったん停止した校舎の歴史に、アートは、新しい100年の物語を想起させることができるのだろうか。このたびの『テキスタイルミーティング2009』では、あふれる色彩が、旧校舎での展開に新しい道筋を見せくれたように思う。布や糸が提示する色彩は、絵具や映像よりも積極的で実在感があったのだ。会場を後にする際、3階のとある教室に、閉校時から吊られたままのようなカーテンを見た。何年も陽と雨にさらされてきたのだろう、人の想像や手仕事がおよばぬ見事な風合いのその布も、強烈な印象である。
(松尾 惠 VOICE GALLERY pfs/w)

戸矢崎+加賀城・白本(壁面)作品
元・立誠小学校(京都市中京区) 会場入口

元・立誠小学校(京都市中京区) 会場入口

島田清徳作品

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