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EVENT REPORT

イベント・レポート

秋季特別展「幻の京焼 京都瓢池園」

2009 11 10

秋季特別展「幻の京焼 京都瓢池園」終了
"Hyochi-en" One of Modern Kyoto ware
泉屋博古館本館(京都)/2009年9月1日(火)~10月12日(月)

「幻の京焼 京都瓢池園」終了

会 場: 泉屋博古館分館(東京) http://www.sen-oku.or.jp/tokyo/
会 期: 2009年 10月24日(土)~12月13日(日)

約100年前、わずか13年間、東山に存在した製陶所「瓢池園」作品の数々が展示された展覧会。初めて<幻の京焼>を知る貴重な機会となった。
「瓢池園」は、東京に設立された輸出陶磁器絵付け工場が発祥という。そこでは国内外への博覧会へ意欲的に出品を重ねたが、1900年パリ万国博覧会において日本の陶磁器デザインの立ち遅れを感じたことから、その改良と新しい日本の陶磁器製作を目指して、1907年(明治40年)伝統的工芸の産地である京都で「京都瓢池園」(京都製陶所瓢池園)の活動を開始したとのことである。廣瀬満正(住友家初代総理事を務めた廣瀬宰平氏の長男で実業家)が共同経営者であった。このたびの展覧会は、廣瀬家ゆかりの廣誠院に所蔵される作品群によって構成されていた。「瓢池園」の活動は、1920年(大正9年)まで。

陳列ケースには、さまざまに新しい道を探った多種多様な陶磁器が並んでいた。中でも、当時の和洋折衷生活を彷彿とさせる食器類が魅力的だった。志を同じくする美術工芸家たちとの共同作業もあり、画家:浅井忠は、<染付動物絵角形向鉢>や<色絵動物図四方皿>図案を担当し、サイやゾウをのびのびと描いている。日本で2番目に早かったと聞く岡崎の動物園の動物たちがモデルだろう。モデルの選び方にも進取のエネルギーを感じるし、当時の食卓にサイやゾウ柄というのも、かなり奇抜だったのでは?と想像する。また、明治末からのビールブームでは磁器で飲むのがおしゃれだったと説明があり、形の良い<色絵風景文ビール呑>もある。ポスターになった<色絵山鳩文花瓶>と<色絵翡翠文花瓶>も、とてもおおらかで良いものだった。

多岐にわたるデザインやさまざまな試みは、高い生産性や効率などから遠いように感じられる。「瓢池園」は、単なる製陶所の役割を越えて、今でいうクリエイター集団であったと思う。しかし、そのような存在が13年で終わる理由には、近代化という大きな背景があり、製陶も大規模化・システム化していく影響を受けてしまったのだと思う。貴重な工房・研究所のようなところが失われていったのは惜しいが、100年たってみると、経済力や労働力という時代の求心力に粉砕されても、文化というのは意外に根強く点在していて、ときどき時代の隙間に顔をのぞかせるのだなと安心もする。アートバブルと呼ばれている現代の状況にも同じことが起こればよいのにと思う。

なお、泉屋博物館(本館=京都)では、住友コレクションの真髄ともいえる中国青銅器が圧巻である。午後にはボランティアガイドの方々の巧みな作品解説を受け、青銅器をはさんでの対話を楽しまれたい。コレクションにまつわるエピソードもうかがえる。開館から50年の泉屋博古館では、最近、美術・博物館マニアをくすぐる効果的な広報活動をされている。知的好奇心が満たされる、静かな時間を過ごした。
(松尾 惠 VOICE GALLERY pfs/w)

染付動物絵角形向鉢(廣誠院蔵)

染付動物絵角形向鉢(廣誠院蔵)


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