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EVENT REPORT

イベント・レポート

コンサート「青葉市子とmama!milk 冬の旅 京都編」

2016 02 26
開催日時: 2016年1月24日(日)14時~ ※25日(月)19時~
会 場: 日本写真印刷株式会社「本館」
〒604-8551 京都市中京区壬生花井町3
http://www.nissha-foundation.org/pdf/exhibit_guide.pdf
主 催: 一般財団法人ニッシャ印刷文化振興財団

冬のひととき、100才を超える建物の中で行われた音楽会。mama!milkの超絶技巧と青葉市子の透明な歌声に引き込まれた。

mama!milkは、アコーディオン(生駒祐子)とコントラバス(清水恒輔)のユニット。ただ明るく元気なだけの音楽と違い、ほどよく疲れた大人の気配がする。筆者が訪れた回は、夕刻、日本写真印刷株式会社社員の方々に向けた特別の回だった。ときに激しくも抑制の利いたmama!milkの演奏は、仕事から私生活へ切り替わる貴重な時間を彩るものではなかったかと思う。青葉市子のはかなげな雫のような声や詩も、心を沈める祈りのように聴こえた。ときおり車やサイレンなど街の音も聴こえてくるが、聴衆の筆者にとって不思議と音楽をかき乱す騒音ではなく、音楽を聴く時間も日常とひとつらなりの大切な時間であると実感させてくれた。耳や身体や気持ちは、iPhoneやヘッドフォンからもっと開放されてよいと思うし、世間も音楽会を専用のホールに閉じ込めないでよいと思う。爆音や重低音に慣れた若い人と、その反対の中高年が、奏者たちの振る舞いを間近に見ながら可聴域を共有するのはとても大切だ。仕事帰りに立ち寄られた社員の方々、さまざまな世代に混じって演奏を聴けたことが、とても幸運な機会に思えた。

本公演のあった建物は、平安京時代の都の中心であり、歴代天皇の退位後の住まいであった朱雀院の跡地にある。1906年(明治39年)に建てられた後、1948年(昭和23年)から1980年(昭和55年)まで日本写真印刷株式会社本社棟として使われた。2008年に保存修理工事が完成、翌年、印刷歴史館開設。

印刷の歴史を知る貴重なコレクションがある。建物はまた、2011年文化庁から国・登録有形文化財の登録認定を受けており、希少な明治期の洋館としても見学の価値がある。普段は、印刷歴史館の見学受け入れのほか、公益財団法人ニッシャ印刷文化振興財団によって印刷文化をテーマとする企画展(一般公開)が年に1〜2回開催される一方、一般に開かれた公演は初めての試みである。1日目の一般向け公演に115名、2日目の社員向け公演に100名と、この建物に惹かれたmama!milkからのオファーによってスタートした本公演は、その音楽と建物の魅力をじゅうぶんに伝えたと思う。

大コンサートホールから掃き出されるのと違い、終演後も、暖かいような静かな気持ちで会場を出た。建物や一緒に聴いた人々、奏者たちがひとつの時間を共有したと感じたからだろうか。また、いつもと違うといえば、「音楽は見る芸術である」とも感じた。奏者の息づかいや、細かな動きとリズムやメロディーは連動している。奏者と聴衆の隔てのない空間では、音と音がつながって音楽になっていくことがよくわかった。この同じ建物で再び演奏会があることを期待している。印刷歴史館の展示品である世界最古の量産印刷物の経本(奈良時代)、中国宗時代の活字、18世紀ドイツの印刷機などなど、その時代の音、たとえば声明や聖歌など、人の声を聴いてみたいと思う。
(松尾 惠 MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

mama!milk (1月24日 撮影:賀集東悟)

mama!milk (1月24日 撮影:賀集東悟)

青葉市子 (1月24日 撮影:賀集東悟)

青葉市子 (1月24日 撮影:賀集東悟)

日本写真印刷株式会社 本館

日本写真印刷株式会社 本館


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