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世界を信じるための映画 『ギ・あいうえおス 他山の石を以って己の玉を磨くべし』
インタビュー:柴田剛
ゲスト・インタビュアー:山城大督

2017 05 16

1. 経緯と試み

――今回の「ギ・あいうえおス」は2作目ですが、「ギ・あいうえおス」自体がスタートした経緯を教えてください。

(柴田)
「ギ・あいうえおス」の1作目『ギ・あいうえおス -ずばぬけたかえうた-』(※1)を作ったのは7年前でした。愛知芸術文化センターの映像事業に「“身体”をキーワードに映像作品を制作する」という、20年以上続いているプログラム(※2)があるのですが、同プログラムに、プロデューサーの越後谷卓司さんから声をかけていただきました。
「映像と身体」ということを考えたとき、僕らが普通に映画を撮っている時の現場スタッフはまるでツアー中のバンドみたいだということに気付きました。ハイエースに乗って移動し、撮影終わったら撤収して次の現場に向かう。ツアー中は、宿を借りて一緒に住むじゃないですか。「バンドみたいだから、うちらにカメラを向けちゃおうよ」と。そういうアイデアで撮ったのが『ギ・あいうえおス -ずばぬけたかえうた-』でした(※3)。

『ギ・あいうえおス -ずばぬけたかえうた-』(平成21年度愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品) スチル

『ギ・あいうえおス -ずばぬけたかえうた-』(平成21年度愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品) スチル

――今回は7年ぶりの2作目になります。はじめにどういうオファーがあったのでしょうか。

(柴田)
2015年に山口県の山口情報芸術センター(以下、YCAM)で新作映画を製作するプロジェクトYCAM Film Factory(※4)が立ち上がり、その第1弾として声をかけてもらいました。今回の映画のプロデューサーである杉原永純さんは、もともとオーディトリウム渋谷(※5)という映画館でプログラムマネージャーをやっていました。3年間同映画館で仕事をしてから転職した先がYCAMでした。YCAMにはYCAMシネマという映画館があるのですが、彼はそこで上映プログラムを選んでいます。YCAMの環境、YCAM Film Factoryの企画内容・条件で映画を撮れる人は誰だろうと考えた時に、昔オーディトリウム渋谷で上映した『ギ・あいうえおス -ずばぬけたかえうた-』のことを思い出し、「ギ・あいうえおス」のシリーズだったらもしかしたらできるかもしれないと思って、声をかけてくれたということです。

――ではもともと映像作品ではなく映画を作るという話だったのでしょうか。

(柴田)
そうです。映画っていう括りでやってくれと。

――最初の時点で「こういうことがしたい」という具体的な構想はあったのでしょうか。

(柴田)
杉原さんに「何をやりたいか」と聞かれたときに、「空に浮かんでいる謎の発光体を追いかけたい」と即答しました。『ギ・あいうえおス -ずばぬけたかえうた-』では、目標に向かうということがないまま撮っていたけど、今回は「ギ・あいうえおス」に目的、目標を作りたいと思い、それを目標に設定しました。

――詳しくは後で掘り下げようと思いますが、おおまかに、どういうふうに撮り、どういうふうに編集したのか解説していただけますか。

(柴田)
今回撮影期間が、合計で9日間。一つの旅を順撮りして、1日目に撮影した素材は映画の最初、9日目に撮影した素材は映画の最後というふうに、映画内の時間軸もほとんど現実の時間軸通りに編集しています。至ってシンプルな撮影・編集方法です。

――詳細なプロットや絵コンテなどはあったのでしょうか。

(柴田)
なかったです。でも、予防策としてはプロットを作っていました。

(山城)
予防策?

(柴田)
「この通り撮りましょう」という指示は必要ないけど、迷った時に原点に立ち返るため、原点のイメージを丁寧に残しておかないといけないと思って。その場その場で何か出来事(アクシデント)が起こると、撮影クルーは映画を作るっていう作業の方に集中しがちです。しかしそれだけに集中してしまうと、"謎の発光体を探す"ということがおざなりになってしまう。場合によっては、元に戻れなくなっちゃうこともあるかもしれない。そういうときのため、余裕があるうちに前もって書き記しておいたんです。僕含め、メンバー12人全員が、現実に起きていることに対するリアクションと、映画を作るっていう作業を同時にしなくちゃいけない。その二つの感覚を並行してもち続けることがすごく大変で...。

(山城)
大変なことだと思います。

(柴田)
今回の『ギ・あいうえおス 他山の石を以って己の玉を磨くべし』では、新しく加わったメンバーが6人いますが、12人全員が揃ったのはクランクインの2日前だった。初参加のヒスロムたちは、最初どういう立ち位置をあてがわれるんだろうって観察してましたね。プロットには「ヒスロム(妖精A、B、C)」と書いてあります。

(山城)
そうなんですね(笑)。

(柴田)
ヒスロムたちは「ギ・あいうえおス」にとって、ジョジョの奇妙な冒険でいうところのスタンドのような存在。

(山城)
最前線に立たされている感じはした。

(柴田)
そう。

インタビュー風景

インタビューは柴田氏の自宅にて行った。

※1)『ギ・あいうえおス -ずばぬけたかえうた-』
2010年/HD/56分/モノクロ(一部カラー)/ステレオ/愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品
http://gui-aiueos.com/

※2)愛知芸術文化センターの映像事業「愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品」。
http://www.aac.pref.aichi.jp/bunjyo/original/eizo.html

以下はこれまでに同事業で制作された映像作品一覧。
http://www.aac.pref.aichi.jp/bunjyo/a-lib/video/original.html

※3)「映画制作クルーが映画を制作してゆく過程を、音楽を演奏するバンドと同等のものとして描くという核が編み出され、結果作品の制作者(スタッフ)がイコール登場人物(キャスト)であるという、あたかもロバート・クレイマーを彷彿とさせる独特の形態をともなうこととなった。」
“Introduction / 作品紹介” より引用.『ギ・あいうえおス -ずばぬけたかえうた-』 WEBサイト.2017-04-15参照.)

※4)YCAM Film FactoryはYCAMのプロデュースのもと新作映画を製作するプロジェクト。『ギ・あいうえおス 他山の石を以って己の玉を磨くべし』はその第1弾として製作された。
http://www.ycam.jp/projects/ycam-film-factory-vol1/

「YCAMの環境やこれまでの知見を背景に、コンパクトな映画制作方法にて、今の時代の映画のあり方を模索・実践し、作品を発表していくプロジェクトです。」
“『ギ・あいうえおス 他山の石を以って己の玉を磨くべし』プレスリリース”より引用.参照2017-04-15.)

※5)2011年4月から2014年10月まで渋谷にあった多目的ホール。

インタビュー風景
インタビュー風景

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