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世界を信じるための映画 『ギ・あいうえおス 他山の石を以って己の玉を磨くべし』
インタビュー:柴田剛
ゲスト・インタビュアー:山城大督

2017 05 16

7. 謎の発光体の目撃体験と時代の空気

(山城)
僕は高校二年生のときに謎の発光体を見たんですよ。

(柴田)
おお!どこでですか?

(山城)
大阪の八尾市です。八尾にある友達の家の近くで、自転車の二人乗りをしていたときに、友達が「何だあれ」と言ったから、ぱっと友達が向いている方向を見たら、空に小さい発光体が飛んでいる…。僕らが気付くと同時に、ふわーっと向こうの方に飛んでいきました。その時は友達と盛り上がりましたし、その後10年間くらいその時の感覚が残っていたんですけど今は一切それがなくて。

(柴田)
忙しいからでしょうね。

(山城)
体験した記憶はあるのに感覚はもうない。その友達とも未だに会うし、その時のことを話したこともあるけど、「俺たち間違ってたんじゃないかな」「あの時のことは夢だったんじゃないか」って思うくらいになっちゃってる。

(柴田)
もしこれから頻繁に見ていくことになれば、さして珍しいことでもなくなるから、記憶から思い出は消されないはずなんです。僕も子供のころに見たことがあったけど、映画を作り始めたころからそこらへんの記憶を他所に置きっぱなしにしてた。改めて3.11以降からちゃんと調べて始めて、自分でも目撃し始めると「あのとき見たのはこうだ」と…。

(山城)
自分の感覚を呼び覚ますことはできるかもしれない。

(柴田)
経験ですもんね。

(山城)
さっきの話に戻るんですけど、撮影クルーの意識までもそういうふうに持っていけたことが未だに信じられないんですよね。

(柴田)
これ僕もね、撮影の時に一抹の不安があった。実際の撮影の時の話をするんですけど、一番最初に見たのは1日目でした。12人のうちの半分くらいが見た。この時は肉眼では見えたんだけど、カメラに映らなかったんですよ。2日目には全員が肉眼で見た。ただ、この時もカメラに収まっていなかったんです。実際に撮影もできて、みんなが見たのは4日目でした。

――姫路セントラルパークで撮影したシーンですよね。

(柴田)
そう。共通して言えるのは夕方のマジックアワー(※9)の時なんですよ。夕日が沈んでいく時に夕日の方角に現れるんです。

――以前、柴田さんに『SIRIUS』という映画の映画評を寄稿していただきました(※10)。

(柴田)
この映画ですね。

シリウス 予告編(フルバーション)

――そうです。『SIRIUS』は「UFO機密情報公開」「フリーエネルギー研究」「地球外生命体との相互コンタクト活動」「アタカマ・ヒューマノイドの医学的調査」という4つのテーマを扱った映画ですが、柴田さんによる映画評の中に「オレが中学高校時代、1990年代中頃になるとTVでは否定肯定の拮抗がウリの番組がすっかり多くなっていた。極めつけはオウム心理教に関する一連の事件が起ったことで、これと似たタグにさわるキーワードは十把一絡げにされ、信じちゃ危険なまがい物扱いになった。自身が育ったのはそのような時の空気の中。蓋をしなくてはいけない気持ちにさせられたというか、そんな過去に改めて気づいた。しかし、この歳になって肩の力を抜いて話してみると、友人知人やその周囲から、子供の頃に出会った不思議な出来事の話など、面白い話がこれでもかとざくざく出る。いままで感じてた自粛感や侮蔑感はなんだったんだ!ただ自身の妄想だったのか!後悔先に立たぬようにこれを記録し続けて、さらにターゲットを決めて取材へ向かうなどして、今に至っている。」という一節があります。この「ターゲットを決めて取材へ向かう」というのは「ギ・あいうえおス」のことですよね?

(柴田)
はい。

――柴田さんの心情として、「ある抑制からの解放」がモチベーションに繋がって、自分の周りの人たちに謎の発光体の話をするとか、共有するということを前向きにしようという気持ちがでてきたんじゃないかと。

(山城)
ああ。

(柴田)
それはあります。映画活動をずっとやってきた中で一番しっくりくる。やっとドッキングできた。

(山城)
…すごいですね。

――柴田さんの指摘する通り、時代の影響って小さくない気がするんですよね。どのような形でも、大手メディアがもう少しそういったものを取り上げる状況があれば、もっと日常生活の中で話題にしやすかったかもしれないし、そういう状況が続いていたら、山城さんにも当時の感覚が未だに残っていたかもしれない。

(山城)
うん。

――時代の影響などによる抑制のせいで、「蓋をしなくてはいけない気持ち」にさせられたんだとしたら、自分から積極的に「謎の発光体を見た」という話をしていくことによって、自分の周りの空気だけでも変えられるかもしれない。柴田さんが『ギ・あいうえおス 他山の石を以って己の玉を磨くべし』を作った姿勢から、そういう意志を感じ取った。

(柴田)
映画は自分の中で活動なので。AMeeTの映画評には自分の中で一貫させたいものがあって、それが正に『ギ・あいうえおス 他山の石を以って己の玉を磨くべし』のテーマだった「信じてみる」っていう。

(山城)
震災の時、「これ以下のものはノンフィクションで、これ以上のものはフィクション」っていう境界が曖昧になった。自分が直感的に現実だって思っても、一般的には「そんな現実はない」と言われている…そういうことが度々起こっちゃってたから、それでものすごく疲れたんですよ。本当なの?嘘なの?どうなの?フィクションなの?現実なの?みたいなことを、みんな話し過ぎたし調べ過ぎて、多くの人が「考えるのをやめよう」と思って今に至ると思う。僕は東京から名古屋に引っ越してからその感覚がさらに加速しちゃって。東京に居た時には、「自分が信じているものや、一般的には本当と言われていることが嘘の場合もある」という感覚を忘れないようにしようって思ってたんですよ。そう思ってたんだけど、もう薄れてきちゃってる。そういった、震災の時に覚えた肌感覚が薄れないように搾り出そうと思って作ったのが『TALKING LIGHTS / トーキング・ライツ』(※11)だった。

(柴田)
あの作品はを見た時に、「山城さんは謎の発光体見てる人なんだな」って直感した。さっき八尾で謎の発光体を見たことがあるって言ってたけど、さもありなんだなと思いました。

※9)「マジックアワー (magic hour) 、マジックタイムは、日没後に数十分程体験できる薄明の時間帯を指す撮影用語で、光源となる太陽が姿を消しているため限りなく影の無い状態が作り出される状態となり、色相がソフトで暖かく、金色に輝いて見える状態である。」
“マジックアワー (写真)” より引用.ウィキペディア日本語版.2017-05-02参照.)

※11)山城氏によるインスタレーション作品。これまでに『六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声』(森美術館、2016)にて展示された。同作品については以下記事に詳しい。

中本真生 編集[2016].“次代を担う若手美術家二人による初の対談 八木良太 × 山城大督 対談 [後半] ”.AMeeT.2017-05-04参照.)

インタビュー風景
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