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世界を信じるための映画 『ギ・あいうえおス 他山の石を以って己の玉を磨くべし』
インタビュー:柴田剛
ゲスト・インタビュアー:山城大督

2017 05 16

8. 世界を受け入れるための工夫

――マイクを車のサンルーフから出して走行しているシーンがあったじゃないですか。あれって何をしようとしてたんですか。

(柴田)
世界の音を聴きに行く。

『ギ・あいうえおス 他山の石を以って己の玉を磨くべし』 スチル

『ギ・あいうえおス 他山の石を以って己の玉を磨くべし』 スチル

(山城)
すごく象徴的で、かっこいいシーンですよね。

(柴田)
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』にすげぇ影響を受けたんだけど、でも当時はそのことに自分自身気付いてなかった(笑)。

(山城)
普通マイクの風切り音って、風防をつけたりしてなるべく音声に入らないようにすると思うんです。でもあのカットも含めて、前半は風の音が入るじゃないですか。映像の中で風は見えないけど、マイクに当たることによって風が強いんだと感じることができるというのは、まさに見えないものを探しに言っているということの象徴ですよね。

(柴田)
さすが山城さんですね。

(山城)
風の音が入ることで現場感も加わっていた。

(柴田)
あれは動画撮影用のマイクじゃないんですよ。

(山城)
そうですよね。

(柴田)
バンドのボーカル用のマイクで。

(山城)
「めちゃくちゃ音がクリアで高音質」って感じではないですよね。

(柴田)
歪むんです。

(山城)
そう、歪んでる、歪んでる。

(柴田)
勝手にイコライジングされている。

(山城)
人の声とかちゃんと撮れてないときありますよね(笑)。

(柴田)
あれはジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン(※12)とか、ガレージパンクバンドの人たちが使うマイクです。決して動画撮影用のマイクじゃない。森野順君が今回のために自腹で買ってきたんです。風の音がまるで金切り声のようにキュインキュイン!山城さんも好きでしょ?

(山城)
ええ。好きです。

――先ほど柴田さんが「世界の音を聴きに行く」と言いましたが、それに関連してもう一箇所、柴田さんによる『SIRIUS』の映画評から引用したいと思います。「このいまの世界のだいじな真実を受け入れるためには工夫が必要で、それをみんなですることはむつかしいかもしれない。だけど、まず受け入れて動いてみることだ。害虫を駆除することなく受け入れる工夫をしてみる。減点の方式よりも足し算の方式を見つけて相手をみてゆく、次をクリエイトするってことを受け入れるために工夫してみる」。サンルーフからマイクを出して収音している様子もそうですが、発光体が映っていないシーンでも、録音しようとする行為や撮影しようとする行為を記録して、そういったカットも採用しているじゃないですか。だから今回の映画からは「謎の発光体を探す」ということが目標としてありつつも、収録・収音しようとする姿勢自体がメッセージになっている印象を受けました。世界に対してオープンに開いていて、それが一貫してるから、すごく前向きな映画じゃないかって思ったんですよ。

(柴田)
YCAMが原点回帰で映画を作る機会をくれたんで、チャレンジしようと思ったんですよね。やっぱりね、案外難しいんですよね。衒(てら)いなくやるとか、思惑なくやるとか、欲を持たずやるって。それって決め事じゃないですか。それが縛りにもなってたから。カットと言ってから次の現場に行くまではみんなそわそわしっぱなしで。そわそわしてる状況を誰かに伝えたいけど、空気は伝播するからそれは言わないようにする。「結局謎の発光体を見れなかったらどうすんねん」とか、あの面子見たら誰か言いそうでしょ(笑)?でも「言っちゃダメだよ」と言った時点で言ったと同じになっちゃうんで。

――ああ、なるほど。

(柴田)
日々の撮影の中で、言葉遣いにはすごく気を使いました。だから各々フラストレーションを抱えていましたね。僕は監督なんで、普通フラストレーションから開放したり解きほぐしたりする係りなんですけど、それを封じちゃったもんで。かといって彼らを騙そうとしているわけでも、型にはめようとしているわけでもなくて、ただ12人で一緒に謎の発光体を撮影できたら、映画のワンシーンとして共存できたら素晴らしいなって。予想がつかないことを取り込もうとしながら、映画にしようとする。それを同時にやる作業はすごく面白かったですね。

インタビュー風景

柴田氏宅のベランダにて。自宅近辺で謎の発光体を見た場所を山城氏に説明する柴田氏。

※12)「ジョン・スペンサーをリーダーにニューヨークを中心として活躍するブルース・パンク・トリオ。ブルースとパンクを合体させ、更にヒップ・ホップの要素も加える等ブルースを現代風にアレンジしたサウンドは欧米を始め日本でも高い評価を得ている。ユニークなサウンド、強烈なライヴ・パフォーマンスとその存在感から多くのミュージシャンからも信望を得る正に「ミュージシャンズ・ミュージシャン」であり、べック、ビースティ・ボーイズのマイクD等とも交流を持つ。」
“ザ・ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン - プロフィール” より引用.ソニーミュージック オフィシャルサイト.2017-05-04参照.)

インタビュー風景
インタビュー風景

中本真生 Nakamoto Masaki

中本真生 Nakamoto Masaki

1983年生まれ。愛媛県新居浜市出身、京都在住。UNGLOBAL STUDIO KYOTO代表。&ART編集長。ディレクター/キュレーターを務めた『映像芸術祭 "MOVING 2015"』、『MOVING Live 0』(2014、五條會舘[京都]、キネマ旬報シアター[柏])、『みずのき絵画ALLNIGHT HAPSセレクション展』(2014 - 2015、HAPS[京都])に山城が、『MOVING Live 0』に柴田が参加している。
また柴田による全3回の映画/映像作品評『映画監督 柴田剛の選ぶ映画/映像作品9選 2014-2015』では編集を担当した。

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