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てあしくちびる インタビュー
“2017, In the place to be” 後半

2017 07 24

足利が生んだバイオリンとアコースティックギターのデュオ てあしくちびる。AMeeTでは同ユニットのメンバーkawauchi banri、くっちーへの、約20,000字に及ぶロング・インタビューを前後半に分けて掲載する。このインタビューはてあしくちびるの「今」を切り取ることをテーマにしているが、後半となる本記事では、地域性に関して今思うこと、「表現することの意味」に対する考えや、その考えに強い影響を与えたエピソードなどについてお話を伺った。特に「表現することの意味」に対する考えの違いからは、てあしくちびるが持つオリジナリティーの根底にある2人のバランスを垣間見ることができる。

聞き手・編集:中本真生(UNGLOBAL STUDIO KYOTO)

インタビュー撮影:表恒匡

写真左:くっちー 写真右:kawauchi banri

写真左:くっちー 写真右:kawauchi banri

1. 北関東への思いの変化
~『Odd le KITAKANTOW』を例に

――お二人が地域性について、今現在感じることを伺っていければと思います。まずは、2016年に作曲された北関東をテーマにした曲『Odd le KITAKANTOW』のテーマについて、具体的に解説していただけますか。

(kawauchi)
『Odd le KITAKANTOW』と、2012年に作曲してファーストアルバム(※1)、セカンドアルバム(※2)両方に入っている『関東平野がここからぶった切られているのを毎日感じている』、そして最近できた『Dive to WATARASEGAWA』の3曲は、関東平野3部作という位置付けになっています。『関東平野がここからぶった切られているのを毎日感じている』という曲が生まれた時点で3部作にしようと考えていたわけではないのですが、『Odd le KITAKANTOW』を作るに際には「関東平野をテーマにした曲を連作したら面白いんじゃないか」という思いが先にあって着手しました。

北関東での生活の中で、自分は常に閉塞感を感じていました。中高生の時、雑誌とかTVとかから知識を得てロックやパンクを聴いていましたが、そういったものとは対極にある風土だと思っていました。東京から交通の便もそんなに悪くなく、且つ行き来を妨げるような山や川があるわけでもなく、文化的にも風通しがよくて然るべき環境であるはずなのに...なのになぜ閉ざしているんだろう、といつも考えていました。だけど、振り返ってみると、自分もそういった面を持ってしまっていることに気付いて…。「北関東という地域に対して唾を吐いているつもりだったけど、結局そこで生まれてそこで生活している自分も、そういった面を持ってしまっているということを認めざるを得ない」と感じ出したのがちょうどセカンドアルバムの制作を始める少し前だったんですよ。『関東平野がここからぶった切られているのを毎日感じている』では、閉塞感だとか、地域の嫌な部分を歌っていました。本当は地に足がついているのに、認めたくなかったんですね...。

『Odd le KITAKANTOW』では「自分もそういう地域を構成している一人だということを認めて、自分の地域を穿った目で見て批判するんじゃなく、そういう面を持ち合わせてしまったんだということを前提としたうえで、もう一度北関東を見つめ直したい、そしてそれを曲にしたい」と思ったんです。だからこそ “踊るな北関東”ではなく、 “踊れ北関東”というちょっと肯定的なタイトルになった。唾を吐きかけたいような地域性があって、それがどういうことかを考え、自分もそういった面を持ってしまっていることに気付いた。それでも踊るしかないという...。だから踊りといっても、決して「ええじゃないか」の踊りではない。

てあしくちびる 『Odd le KITAKANTOW』 ミュージックビデオ
監督:草野翔吾 撮影:和久井幸一 特機オペレーター:蔵プロダクション

(くっちー)
セカンドアルバムでは、この曲を一番に推したいと思ったので、ミュージックビデオを制作しました。制作は映画監督の草野翔吾さん(※3)にお願いしました。草野さんは足利の隣の桐生出身です。私たちのライブに来てくれたことが知り合ったきっかけでした。初めてライブに来てくれた時、「一緒に何か出来たら」と伝えてもらったことが嬉しくて、私たちの音楽を好きと言ってくれる草野さんに、いつかお願いしたいという思いがありました。また、色んな仕事の幅を持っている草野さんに映像をつくっていただくことで、これまで自分たちの活動の中で出会えなかったような人たちにも、自分たちの音楽を届けられる可能性が広がるのではないかという期待もあって依頼しました。

(kawauchi)
草野さんは僕らと同年代で、隣町出身だから近い環境で育ったんだけど、地元に対するドロドロとした感情があまりない人で...。

(くっちー)
あるかもしれないけど、それを直接的に表現していないというか。

(kawauchi)
ファーストアルバムをリリースした頃、自分たちはほとんど東京で活動していて、地元の人たちと一緒に何かをやるということがあまりなかった。「地元はつまらないものだ」と思っていた節があって、地に足をつけて、地元で活動したいとは思っていなかったけれど、地元で活動している人たちともつながりができ、音楽を通して面と向かって交流したことによって、必ずしも他の人たちが自分と同じような考えでやっているわけではないことを知りました。

自分たちの中で「その地域に対して唾を吐いている人じゃないと面白いことをやってないんじゃないか」「その風土や地域性に対して、何か抗うような気持ちやスタンスがなければ、面白いものは生まれない」っていう変な思い込みがあったんですよ。それが徐々になくなっていった...。『関東平野がここからぶった切られているのを毎日感じている』を作った頃は、「どちらかであるべきだ」という意識があったんですけど、「その地で生きてそこで音楽をやるということは、“その地を愛しているから”と“その地が大嫌いだから”の2パターンじゃない。そのコントラストの間に、ものすごくたくさんの考え方があって、そのコントラストを一人ひとりが持っててもいいんだ」と気付いたことは大きかったですね。地域に染まり切っている必要も、はずれ切っている必要もなくて、物事や状況に応じて、色々な考えがあってもいいんだという。言葉にするとすごく簡単なんだけど…そこから少しずつ変化していったと思います。まあでも地元はクソですけどね。

――今聞いたような心境の変化は、曲調などにもダイレクトに反映されている気がしますね。『Odd le KITAKANTOW』から受ける印象はマーブルというか、ネガとポジが混ざり切っていないラインの曲だと思います。私は愛媛県出身ですが、地元にいると自分の居場所がないから出ていって今も戻る気がないので、地元に残り続けていることのリアリティーみたいものについてもはや想像するしかないんですよね。離れているから、距離をとれているから地元であった色々な出来事に対する感情を奥底にしまうことができているけれど、今の話を聞いて「住み続けていたらどう思っていたんだろう」と考えました。

※1)てあしくちびる ファーストアルバム 『Punch!Kick!Kiss!』
リリース:2014年6月11日 価格:¥1,500(税込) 品番:RWA14-M001
http://teashikuchibiru.net/discography

※2)てあしくちびる セカンドアルバム 『coreless』
リリース:2016年6月3日 価格:¥2,000(税抜) 品番:CL-0365 レーベル:Club Lunatica
http://teashikuchibiru.net/discography

※3)「1984年生まれ。群馬県出身。早稲田大学社会科学部卒業。在学中より、監督作が一般劇場で上映される。2012年、公開の長編映画『からっぽ』が国内外の映画祭で上映。2016年には人気漫画を原作とした『にがくてあまい』を監督した。映画以外の映像作品も多数手掛け、THE BAWDIES『NO WAY』のミュージックビデオは、SPACE SHOWER MUSIC VIDEO AWARDSのBEST VIDEOS に選出された。」(草野翔吾ウェブポートフォリオ ”ABOUT”、参照2017-07-01.)


てあしくちびる TEASHIKUCHIBIRU

てあしくちびる TEASHIKUCHIBIRU

バイオリン×アコースティックギター×声×声
2ピースバンド「てあしくちびる」

kawauchi banri(vo.ag)、くっちー(vo.vln.etc)により2010年結成。2人きりの人間とアコースティックギターとバイオリンによる編成。編成ありきではなく、そういったある種の制約に対して「その向こう側に飛翔しようとすることでしか得られない」感覚を通過したリズムや音や言葉や声で表現。

てあしくちびる オフィシャルサイト
http://teashikuchibiru.net/


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