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ひらめきを大切に、時間の“深さ”を描くインタビュー:アーティスト・ミニー吉野

2018 09 20

幻想的な油絵に、巨大なマリオネットのオブジェ、さらには3DCG映像まで! ジャンルの枠を超え、多彩な活動に取り組むアーティスト・ミニー吉野へのインタビュー。韓国の名門美術大学を卒業後、帰国早々、東京芸術劇場でのデビューというチャンスをものにしたという経歴の持ち主は、どのように作品に取り組み、表現を拡大してきたのだろう? 東京都世田谷区の閑静な住宅地にある彼女のアトリエで、新作を見せてもらいながら話を伺った。

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インタビュアー・撮影・編集:杉谷紗香(piknik)

制作中の新作のモチーフが並ぶ、ミニー吉野さんのアトリエ。
制作中の新作のモチーフが並ぶ、ミニー吉野さんのアトリエ。

グレージング技法を駆使して“時”の層を幻想的に表現

さびれた工場でダンスに興じるマリオネット人形たち、魚雷が窓の奥を通り過ぎるレンガ造りの歴史遺産、印刷の歴史の厚みが伝わってくる18世紀ドイツの印刷機……。アーティスト・ミニー吉野さんが描く油絵には、描かれた“モノ”たちによる物語がいまにも動き出しそうな、幻想的な時間が詰まっている。近年はキャンバスの枠にとどまらず、2メートルにもおよぶ巨大なオブジェや3DCG映像も発表。ますます意欲的な表現に取り組んでいる。作品のモチーフはどのように決めているのだろう?

「モノそのものに惹かれて、作品の構想をひらめくことが多いですね。たとえば、忘れ去られた廃墟や、手付かずのレンガ倉庫、古びた消火栓のドア、ゆがんでしまった古いたガラスのように、そのものに歴史やストーリーが詰まっているモノにインスピレーションを感じて、モチーフに選んでいます。そういうモノは、お金で手に入るものではないし、なにかの形で残さないといずれ消えてしまうでしょう。自分自身が描いて作品にすることで、“時間”を考えるヒントになるのでは、と取り組んでいます」。

完成したばかりの新作 写真
東京都世田谷区にあるミニー吉野さんのアトリエにて。
18世紀ドイツの印刷機を描いた、完成したばかりの新作と。

“時間”は重要なキーワード、と話すミニー吉野さん。彼女が油絵で用いる技法は「グレージング」と呼ばれるもので、オイルで薄く溶いた絵の具を下絵に塗り重ねることで、画面全体に透明感や輝き、ツヤをプラスすることができる。この技法で描いている理由についてミニー吉野さんは、「時間を表現するため」と語る。
「何層にも絵の具を重ねていけるので、画面全体に層ができ、深みや奥行きが表現できるんですね。物語性のあるモチーフを選ぶことが多いので、グレージング技法を使うことで、作品そのものの存在感や味わいも増すように感じています」。

アトリエ 写真
ミニー吉野さんのアトリエの一角。グレージング技法に用いるオイルと筆が並ぶ。
傍らには、「ひらめきで作った」という羊のオブジェが。

ソウルの美術大学在籍中は、グレージング技法だけでなく、「あらゆる表現方法を学んでいた」というミニー吉野さん。
「子どもの頃から絵を描くことが好きで、夢は東京藝術大学に進むことでした。でも、4回挑戦して、実現できなかった。その後、絵画からは少し離れていましたが、ソウルに住んでいたとき、“もう一度、絵の世界に挑戦してみたい”と、30歳を超えてからソウルにある名門・弘益大学の絵画科へ進学しました。在学中は、油絵だけでなく、東洋画、印刻、現代アートまで、ジャンルを超えて取り組みましたね。課題の量がものすごく多くて、100号キャンバスの作品を10日で完成させる、なんて無茶ぶりも! 大学にほぼ泊まり込みで制作にはげむ日々でしたが、歴史にとらわれず、新しい表現を生み出していける環境がおもしろく、刺激的でした」。

魚雷試験場跡 写真
『魚雷試験場跡』は、2010年に開催された「第60回モダンアート展」入選作品。
朽ちたレンガ倉庫の窓に潜水艦が浮かぶ、幻想的な作品。
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