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フィルム写真における“2.7次元”の美しさインタビュー:写真家・Go Sugimoto

2019 01 16

きらめく摩天楼さえも、静まり返る冬のニューヨークの夜。もしも、“夜の自然光”だけで浮かび上がる風景をカメラで捉えたなら? もしも、白い紙1枚を被写体にして、どこまでも“白く”プリントした作品をつくるなら? ニューヨークへ単身渡って20年目、「写真には何ができるか?」を考え、テクノロジーの進化と向き合いながら活動してきた写真家・Go Sugimotoへのインタビュー。

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インタビュアー・執筆・編集:杉谷紗香(piknik)

夜の街角にたたずむ暗闇とその奥にある魔法を見つめて

ときにはマイナス10℃にもなる、冬のニューヨーク。Go Sugimotoさんの『WALK IN THE NIGHT』は、そんなニューヨークの街がもつ夜の表情に惹かれ、街を歩き回ってフィルムカメラで制作したシリーズ作品だ。

「人影のなくなった街の風景を、自然光だけで撮影したモノクロームの写真シリーズなんですが、一番撮影に適していたのは、実は、冬の夜でした。なぜかと言うと、まず、寒い時期は夜が暗い。そして、人がほぼいない。さらに、コントラストやブレが出しやすく、表現したいものが撮りやすい。そのような良い条件が重なることから、毎年11月から4月にかけての冷え込む時期は、深夜に3時間ほど、住んでいたブルックリンを散歩しながら、気になるものを撮影し続けました。夏にもトライしましたが、やっぱり冬の夜とは違う。フィルムをプリントしたときに表現できる“闇の暗さ”が、冬は一層深いと感じましたね。画面上の黒色が、冬のほうがグンと引き締まるんです」。

Go Sugimoto『WALK IN THE NIGHT』シリーズより
Go Sugimoto『WALK IN THE NIGHT』シリーズより

Go Sugimotoさんが『WALK IN THE NIGHT』シリーズを撮り始めたのは2002年から。2007年にシリーズが完結するまで5年間、冬になると毎夜、撮影に繰り出したそう。

「現在もニューヨークのブルックリンを拠点にしていますが、撮影当時はブルックリンの中でもウィリアムズバーグというエリアへ、よく撮影に行っていました。被写体としていたのは工事現場や街路樹、ビル群、そして、夜空。2001年9月にアメリカ同時多発テロ事件が起こった後で、ニューヨークだけでなく世の中全体が劇的に変わっていった時期でした。グローバリゼーションで建物がどんどん壊されて、人と人のコミュニケーションのあり方も変化して…。そのような背景もあって、このシリーズでは、人間は破壊と創造を繰り返している生き物だということをコンセプトにして取り組みました」。

夜の写真ならではの“美しさ”も追求した一連の作品は、2005年の日本での個展をはじめ、ニューヨークほか各国で公開。雑誌『The New Yorker』にもレビューが掲載されるなど、評判を得た。さらに、2007年にJapan Societyで開催された「Making a Home: Japanese Contemporary Artists in New York」展では、映像作品としても展開することに。タクシーの走り去る音、水のしたたる音、雑踏の音…と、夜のニューヨークのあちこちで響くさまざま音が、モノクロのスライドと重なって、幻想的な映像に仕上がっている。

「このシリーズではストーリーを作ろうと思って、必要なイメージを撮影し続けていました。僕にとって写真は、撮るものではなく“作るもの”。カメラを被写体に向けたときには、もう、作品は“作り出されている”――そういう視点で、いつも自分の作品に向き合っています」。

Go Sugimoto『WALK IN THE NIGHT』シリーズより

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