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フィルム写真における“2.7次元”の美しさインタビュー:写真家・Go Sugimoto

2019 01 16

フィルムならではの“深さ”を巧みなプリント技術で追求

高校卒業後の1997年、日本での美大受験を辞めてアメリカへと単身で渡ったSugimotoさんは、初めから写真家を目指していたわけではなかった。漠然と、「アートをやるならニューヨーク」と感じて行動へと移した彼に転機が訪れたのは、当時滞在していたウィリアムズバーグのロフトで多彩な仲間との出合いから。

「イースト・ヴィレッジに住む友人の紹介でそのロフトに泊まっていたんですが、当時のウィリアムズバーグにはアーティストがたくさん集まっていて、ロフトにもおもしろい人がたくさんいたんです。現代美術家やペインター、ジャーナリスト、そして、写真といえばのマグナム・フォトで働いていた人もいて、出合う人みんながとにかく刺激的だった。それで、自分も何かをやりたくなって、地下の暗室で写真をやり始めた、というのがきっかけでした」と、当時を振り返りながら語るSugimotoさん。その頃、使っていたのはリコー製やオリンパス製の小さいカメラ。アーティストのスタジオでのアシスタントもしながら、最初は独学で自分の作品スタイルを模索していたそう。

「ICP (INTERNATIONAL CENTER OF PHOTOGRAPHY/国際写真センター)にも1年通いましたし、ニューヨークを拠点に活動している写真家の杉浦邦恵さんやアーティストのSam Samoreさんにも影響を受けましたね。シナリオやストーリーを作ってから写真を撮るという手法もその頃に身に着けました」とSugimotoさん。

Go Sugimoto『Paper_Work』シリーズより
Go Sugimoto『Paper_Work』シリーズより
Go Sugimoto『Paper_Work』シリーズより

『WALK IN THE NIGHT』シリーズに次いで2007年に発表した『Paper_Work』シリーズは、プリント工房勤務の傍ら、磨き上げたプリントテクニックと、研ぎ澄まされた感覚で生み出したモノクローム作品だ。

「このシリーズは、街を歩き回って制作した『WALK IN THE NIGHT』とは対照的に、家の中やスタジオで、何もないところから作品を作ることを意識して取り組みました。その当時は、プリント工房での仕事を通して、プリントのクオリティを高めることに興味が出てきていたので、このシリーズでは“白いものを白くプリントすること”にチャレンジしてみたんです。紙一枚から形をつくって撮影し、プリントするという、単純さを追求したミニマルな表現になりました」。

仕事では基本的にデジタルカメラ、作品制作ではフィルムカメラと、デジタルとアナログを使い分けて制作しているSugimotoさんだが、「フィルムは本当に美しい!」と語る。

「デジタルカメラは、撮った画像をすぐ確認して、次の瞬間には考えて、違うものを作っていけるという利点があります。撮ってすぐ考える、というやり方は、デジタルならではの時間の使い方。テクニカルだし、スピード感もあるし、撮ったものに対して仕事仲間とディスカッションしながら進めていくこともできる。フィルムカメラで制作したことのないようなデジタル世代の表現にも、最近、おもしろいものが出てきているんじゃないでしょうか。

一方で、フィルムには、すごい!と思える美しさがある。やっぱり、技術的にフィルムには美しいものが作れると感じています。作品の“ディメンション”、次元が、フィルムとデジタルでは圧倒的に違うんですよね。フィルムで撮影した作品は、プリントした紙の中にも、深さを感じさせることができる。写真は、3次元のものを撮影して2次元にプリントする表現ではあるけれど、フィルムのプリント作品の場合は、“2.7次元”とでも表現したくなるような、普段見ているものと近い次元で美しさを表現できることが武器になる」と、彼自身がフィルムでの作品制作にこだわる理由を教えてくれた。

Go Sugimotoによるポートレイト作品。
Go Sugimotoによるポートレイト作品。

現在は、『Paper_Work』の続編に位置づけている作品の制作に取り組んでいると言うSugimotoさん。

「写真には何ができるか? なぜそういう表現に取り組みたいのか? ということに現在は興味があるので、“写真って一体何だろう?”と発言しながら、普遍的なテーマの作品に向き合っていきたいですね。ニューヨークに来て20年ですが、特にこの10年のテクノロジーの進化は目まぐるしい。飛び交う情報量が多すぎるとよく感じますが、この情報過多の状況から影響を受けずに制作するのは難しいでしょう。テクノロジーの進化も見つめながら、自分にしかできない表現をこれからも探っていきたいです」。

PROFILE プロフィール

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Go Sugimoto | 杉本剛写真家

写真家。1979年山口県生まれ、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動。1997年、単身ニューヨークに渡り、2003年にInternational Center of Photography(アメリカ・ニューヨーク)で写真を学んだのち、アメリカ、フランス、スペイン、ブラジルで数多くのグループ点に参加するなど精力的に活動している。日本国内での活動は、2005年にArt Cocoon(東京)にて初個展を開催、2010年には「ヨコハマフォトフェスティバル」出展ほか。Museum of Modern Art, Rio De Janeiro(ブラジル)に作品収蔵。

Go Sugimoto公式サイト

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