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特集

Art&Designを社会実装する京都造形芸術大学のOPEN INNOVATION PROJECTが始動

2019 05 10

時代に求められるプロダクトやサービスを生み出すには? これまでとは異なる考え方やアプローチでものづくりに挑むことが求められている現在、イノベーションを前提としたモノづくりやサービス開発のあり方は、企業やスタートアップにとっても大きな課題となっている。この春にスタートした京都造形芸術大学の「OPEN INNOVATION PROJECT」は、大学と企業がフラットに交わることで、新たな視点でイノベーションに取り組めると話題だ。

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執筆・編集:杉谷紗香(piknik)

芸大と企業のコラボが可能に!
最新設備のスタートアップ支援

目覚ましく発展するものづくりの現場において、最近よく耳にするのが「オープンイノベーション」というキーワード。これは、新しいサービスや製品の研究開発を行う際に、異ジャンルや他業種といった外部からアイディアや技術を取り入れ、革新的なイノベーションを生み出す研究手法の一つだ。

2019年2月、京都造形芸術大学が学外向けにスタートした「OPEN INNOVATION PROJECT」は、企業やスタートアップ、研究機関などと大学が連携することで、オープンイノベーションを推進し、新たな価値を生み出すクリエーションの場を展開している。大学とともにオープンイノベーションに取り組むメリットや魅力とは? プロジェクト立ち上げに携わった小笠原治さん(京都造形芸術大学情報デザイン学科教授)に話を伺った。

ULTRA FACTORY新工房にてインタビューに応じる小笠原治さん。2017年より京都造形芸術大学情報デザイン学科クロステックデザインコース教授を務める。
ULTRA FACTORY新工房にてインタビューに応じる小笠原治さん。2017年より京都造形芸術大学情報デザイン学科クロステックデザインコース教授を務める。
撮影:高橋保世

「OPEN INNOVATION PROJECT」の一番の強みについて、小笠原教授は「経済産業省の『Startup Factory構築事業』にも採択された、先進的な内容を実現できたこと」と語る。

「“伝統工芸から最新テクノロジーまで、Art & Designを社会実装する”をキーワードに始動したこのプロジェクトでは、1977年の開学以来、取り組んできた教育改革を、未来へとつながる次のステップへと進めることができました。

領域を横断した芸術教育を推進している本学には、13もの学科にさまざまな専門性とネットワークをもったトップクリエイターが在籍しています。また、企業や自治体が抱える課題を解決する産学公連携プロジェクトは年間 100 本以上も発足し、 社会を変革する取り組みに定評があります。

OPEN INNOVATION PROJECTでは、第一線で活躍する専門家や、世界レベルの工房を活用した、制作プロセスのサポートによって、企業や研究機関とのオープンイノベーションを推進しています。

特に先進的なのは、企業やスタートアップと学生が一緒になって、事業として展開していくことを前提としたモノづくりをサポートしている点ですね。工作機器だけでなく試験機器も導入することで、開発者の手を離れて、ユーザーに安全に使い続けてもらうためのテストが可能となり、“モノづくりの責任”を工房内で果たすことができるのも強みです。

企業やスタートアップの方々には、大学と企業がフラットに交わることで、組織のルールや評価から一旦離れ、新たな視点でイノベーションに取り組んでいただけるのではと感じています」(小笠原教授)。

京都造形芸術大学の「ULTRA FACTORY」は、在学中のすべての学生が利用できる造形技術支援工房。2008年の設立後、金属加工、樹脂成型、木工加工の設備機械を備え、2018年秋には、IoTプロダクトなどの開発が可能な工作機器を備えた工房を新たに設置した。「OPEN INNOVATION PROJECT」では、このULTRA FACTORYを制作スタジオとして活用し、制作プロセスの支援を行う。

ここ数年で、イノベーションを推進する施設は国内でも一気に増えたが、「OPEN INNOVATION PROJECT」のほかにはない点や魅力について小笠原教授に伺うと、「一番は、試験機器が充実していること」との答え。

「使い続けてもらうためのモノづくりと考え方は、オープンイノベーションにおいて重要です。日本国内のこういった工房は、利用者の楽しみとしての側面が強いと思いますが、2014年に開設され、私自身もプロデューサーとして関わった施設『DMM.make AKIBA』には、本学の工房『ULTRA FACTORY』と同じように、数多くの試験機器が導入されています。なぜそうしたかというと、たくさんの人に使っていただけるプロダクトやサービスを開発するためには、利用者のことを考えた試験が必要だからです。

たとえば、現在流通しているプロダクトやガジェットの多くにはバッテリーが搭載されていますよね。バッテリーはエネルギーの塊なので、本来、爆発もするし、安全面をきちんと考慮しないといけません。使ってもらう以上は、使ってもらう人のことを考えたモノづくりをするべきです。

“想像しうるものは、すべて実現可能”をモットーとして掲げる『ULTRA FACTORY』には、測定器、環境試験機などの検査機器も充実しているので、最新鋭ツールで産業レベルのクオリティを実現できます。オープンイノベーションに必要な、調査→試作→検証→公開の一連のサイクルをスピーディーに繰り返すことのできる環境をいかして、新技術やサービスの開発支援を実施するとともに、新規事業開発を進める企業とのマッチングを図ってプロダクトアウトを行い、社会に貢献していきたいです」(小笠原教授)。

「ULTRA FACTORY」の試験機器ルーム。様々な環境試験機が揃い、調査→試作→検証→公開までの一連のサイクルをスピーディーに行うことが可能に。
「ULTRA FACTORY」の試験機器ルーム。様々な環境試験機が揃い、調査→試作→検証→公開までの一連のサイクルをスピーディーに行うことが可能に。
撮影:顧 剣亨
日本に数台しかないという3D ボディスキャナー。全身をぐるりと囲む背の高いポールに115台のカメラが設置されており、ほんの一瞬で、精度の高い全身の3Dデータを作成可能。3Dデータを元に、立体のポートレート生成や、3Dアニメーションなどに展開できる。
日本に数台しかないという3D ボディスキャナー。全身をぐるりと囲む背の高いポールに115台のカメラが設置されており、ほんの一瞬で、精度の高い全身の3Dデータを作成可能。3Dデータを元に、立体のポートレート生成や、3Dアニメーションなどに展開できる。
撮影:顧 剣亨
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