AMeeT
FEATURE

特集

空間現代+古舘健 展覧会「群れ」バンドとアーティスト/エンジニアによる共同制作インタビュー:空間現代、古舘健

2019 10 01

6. 空間現代の空間現代性

――私が展示を観て意外だと感じたのは、「空間現代の音楽についての具体的な構造解析」といったアプローチが全くないということでした。編集・複製・反復・エラーといったことが空間現代の音楽の象徴としてあるので、空間現代と古舘さんという組み合わせを聞いた時、そういった部分に具体性をもってアプローチするのかなと予想しました。

(古舘)
僕も初めの内は反復などの構造について大事だなと思っていたんで、「作るにあたってルールやスコアは存在するんですか」と聞きました。スコアのようなものがあるのなら、それをドローイングとして壁に貼り付けるというのもありかなと思ったんです。でも、且つてはルールベースで演奏していたことはあるものの、今はやっていないということでした。

(古谷野)
僕らが持ってるルールは厳密に視覚化できるものではなくて。

(野口)
スコアがあってそれを反復しているわけでもない。

(山田)
それに、ライブでもルール自体を提示したいわけではない。

山田 英晶
山田 英晶

(野口)
今までは身体(からだ)前提で作ってきた。「こういう発想とか概念とかルールを生演奏でやったらどうなるのか」ということを試みているので、純粋に構造を具現化したいという欲求とはまた違う。「生演奏を通して別のものになってしまった」というのをおもしろがっている節があるから。

(古谷野)
身体が関数みたいになっている。

(古舘)
構造が本質ではないんですよね。構造をリアライズしようとする身体が本質にある。

(古谷野)
そうです。

(古舘)
まだルールやスコアが存在すると思っていた時、「空間現代らしいアルゴリズムを用意して、オートマティックに空間現代のような曲を作れるようにする」というアプローチも考えた。でも結局アルゴリズム化できない。なぜできないかというと一見ミニマルでロジカルでクールに見える音楽だけど、どうやって展開しているのかというと「ノリ」なんですよね。例えばスティーヴ・ライヒの「Clapping Music」 ※19 だと、8小節毎に8分音符1つ分ずつ音がずれていき、再び位相が揃ったら終了するというふうにロジカルな展開のきっかけがあるんだけど、空間現代はノリで「えいやっ」「今だろ!」みたいな感じでやってる印象がある。

(野口)
ライブでは、「どのくらい決まったフレーズを演奏した後、次の展開に進むのか」というのは、ドラムが指揮者になってサインを出しています。ギターとベースがサインを受け取ったら次の頭で違うフレーズに移行する。

(古谷野)
回数が決まってるわけではないんです。

(野口)
「こういう場合はもう少し長くしよう」とか考えてるの?

(山田)
本当にノリのことしか考えてない。

(一同)
(笑)。

(野口)
でも、ノリノリでできればいいかというとそういうことじゃない。そういう演奏にはならない。

(古谷野)
作曲のプロセスでは細かく決めてる部分もある。

(古舘)
素直じゃないんですよ。

(古谷野)
グリッドにはめてコンポジションしようということにそんなに興味を持っているわけではない。

(野口)
でも「段取り感」あるじゃん。

(山田)
まあね、段取りは決まってるから。

(野口)
自分(ギター)の頭とベースの頭が合わないとサインが出ないから、脳内で段取りしてるんです。でもノリも気にしなくちゃいけない。あのせめぎ合いが錯綜している感じがけっこうポイントなのかなと。

(山田)
別にノリだけがやりたいわけではないから。即興バンドをやりたいわけでもないし。作曲の段階ではある程度グリッドにはめてるからやることは決まっている。でもそれを100%正確に演奏することが目標ではない。それはノリを出すための装置として用意されていて、それを崩していくことがノリに繋がるのであれば全然崩していい。何によってそうなっているのかというのは説明し難いところですけどね。

(野口)
最初からオープンマインドなノリを求めていないということは言える。

(古谷野)
自分たちが驚きたいということはある。

(古舘)
こういったことを考えた時、グラフ化できるような何かを基にするより、抽象化するようなアプローチの方が有効な気がしたんですね。もっとぼかすというか。そぎ落としていった先に残る空間現代らしさ。そこだけを渋く観せられるとかっこいいなと思ったんです。そこで重要になっているのはある種のエモーションだったりするわけです。そういうことを話していくうちに空間現代のことがわかってきた感じがあります。
あとは、何度かキーワードとして「逸脱」ってのが出てきてますが、空間現代の特徴として、「常に逸脱し続けようとする姿勢」がある。1つのフォームができたとしても、そこから逸脱しようとすると思うんですよね。常に本質が捉え辛いような状態をずっと維持し続けるということが、空間現代の理想としてあるのかなと。

(野口)
今回は展示ということで、ほとんどがビジュアルで表現する作品になっている。さっき「フィルターをどう設定するかみんなで話し合った」と言いましたが、ビジュアルでフィルターを設定することで、またいつもと違う形で「ノリ」が出せたんじゃないかと思います。もちろん課題もたくさんあるんですけど、そういうところまで来れたんじゃないかなと。今後も成長させていきたい。

ギャラリー外観
ギャラリー外観

※19 以下は、スティーヴ・ライヒとスラハウェルク・デン・ハーグによる「Clapping Music」(スティーヴ・ライヒ作曲)の演奏(00:00~04:30)。
Steve Reich & Slagwerk Den Haag Boiler Room x Dekmantel Festival Live Show

PROFILE プロフィール

記事の冒頭に戻る

空間現代 | Kukangendaiバンド

編集・複製・反復・エラー的な発想で制作された楽曲をスリーピースバンドの形態で演奏。これによるねじれ、 負荷がもたらすユーモラスかつストイックなライブパフォーマンスを特徴とする。2016年9月、活動の場を東京から京都へ移し、自身の制作および公演の拠点としてライブハウス「外」を左京区・錦林車庫前に開場。坂本龍一、地点、Moe and ghosts、飴屋法水、吉増剛造、contact Gonzoなど、先鋭的なアーティスト達とのジャンルを超えた作品制作も積極的に行う。平成31年度京都市芸術文化特別奨励者。

空間現代 公式サイト

外 公式サイト

古舘 健 | FURUDATE Kenアーティスト/ミュージシャン/エンジニア

サインウェーブ、電子的なパルス、シンプルなノイズ関数など技術的にミニマルな要素を用い、その特性を強調しつつ複雑な現象を作り出す作品をインスタレーションやライブパフォーマンスの形で発表する。個人の活動に加えて、2002年よりThe SINE WAVE ORCHESTRAを主宰。2006年より、エンジニア/コラボレーターとして他作家の舞台作品・インスタレーションなどに多く関わる。2013年よりDumb Typeメンバー。

Ken FURUDATE 公式サイト

The SINE WAVE ORCHESTRA 公式サイト

中本 真生 | NAKAMOTO MasakiUNGLOBAL STUDIO KYOTO

1983年生まれ。愛媛県新居浜市出身、京都在住。AMeeTに掲載された美術に関する記事としては、インタビュアー・編集を担当した“次代を担う若手美術家二人による初の対談 八木良太 × 山城大督 対談”、音楽に関する記事としては、編集を担当した“mama!milk 20周年記念特集「ここにいること, 旅をすること」 寄稿:白井晃(演出家・俳優)、村松美賀子(編集者・文筆家)、阿部海太郎(作曲家)”、インタビュアー・編集を担当した“京都 Underground Hip-Hopシーンを代表するビートメイカー インタビュー:M.A(BONG BROS)”などがある。

PAGE TOP