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レポート:緊急シンポジウム「京都市による京都駅東南部エリア『都市計画の見直し素案』を考える」

2019 11 12

4. 継続した議論が必要

約2時間という限られた枠内で実施された緊急シンポジウムということもあり、各人のコメントのあとは短いディスカッションが行われるに留まったが、市営住宅に芸術系大学の留学生住宅を設ける、東九条の大きな空き地をヤギ牧場にしてチーズをつくる、焼き物を焼くための釜をつくるなどのアイデアも語られた。

とはいえ、この「最初」のシンポジウムは、まず問題を洗い出し、共有するということに重点を置く内容である、ということは確かだろう。これを土台に、京都市担当者、民間のデベロッパー、京都市民、アーティスト、そして何よりも、東南部エリアに住んできた住民たちを交えた、オープンなディスカッションの開催が望まれ、またそれは長い時間、回数をかけて交わされるべきである。

京都市に限らず、世界各地のあらゆる都市に「ジェントリフィケーション」の大波が打ち寄せている。貧困層が多く住む中下層地域の再開発を行政主導のもと進め、魅力的な街にする試みは、欧米、アジア問わず現在進行形で進んでいる。しかし、例外なくその果てに立ち上がるのは地価の高騰や住環境の急激な変化によって、既存の地域住民が立ち退きを余儀なくされ、もともとそこにあったコミュニティや文化が失われていくという、まったく健全とは言えない破綻の風景である。そのイメージを打ち消すために公共事業的性質を持つ「アート」が行政や民間によって「動員」されるが、しばしばそれは暗い過去の美化や記憶の忘却に力を貸してしまう。なぜならば、そういったアートが街にやって来るときには、すべては失われてしまっているからだ。だが、今ならばアートは「現在の状況」に直接コミットすることができるだろう。机上の空論的に遊ぶ「表現」ではなく、今を生きる「表現」としてアートが存在できる限られた機会が、まさに今なのだ。

誰かの生活を欠損するのではないアートと地域の関係が、今こそ問われていると感じた。

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島貫泰介 | SHIMANUKI Taisuke美術ライター/編集者

1980年神奈川生まれ。2017年に京都に生活拠点を移し、東京と往復しながら、現代美術、パフォーミングアーツ、ポップカルチャーに関わる執筆・編集・企画を行う。主な活動媒体は『美術手帖』『CINRA.NET』など。また、ロームシアター京都で刊行中の機関誌『ASSEMNBLY』の立ち上げと制作にも関わる。最近の仕事に、2019年11月7日発売の『美術手帖 「移民」と美術 特集』で在日朝鮮人アーティストらへのインタビューなど。

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