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KYOTO EXPERIMENT 2019|アミール・レザ・コヘスタニ/メヘル・シアター・グループ『Hearing』レヴュー聞くことの不確かさと世界の断片性文:金子智太郎(美学、聴覚文化研究)

2019 12 28

4. 「響き」のなかで

第10回京都国際舞台芸術祭のテーマは「世界の響き(Échos-monde)――エコロジカルな時代へ」だった。「世界の響き」はマルティニク出身の作家エドゥアール・グリッサンの文章に由来する ※7 。彼の『〈関係〉の詩学』(1990年)は「響き」というイメージにもっとも肯定的で豊かな含意をもたせた著作のひとつである。音の響きは幾度となく人間と人間、人間と自然を結びつけるものと見なされてきた。

しかし、聞くことには抜き去りがたい不確かさがつきまとう。「ポスト・ディクション」という考えかたは、自分が過去に何を聞いたのかを問いつづけるサマネのようなふるまいを、誰もが日常的にしているのかもしれないことを示唆している。聞くことの不確かさはたえず世界を断片化してしまう。響きをテーマとするこの芸術祭のなかで、『Hearing』は一種の自己批判の役割を担っていたのではないか。

※7 “KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭2019 アーティストラインナップ第一弾&次期プログラムディレクター決定のお知らせ”.KYOTO EXPERIMENT|京都国際舞台芸術祭.

PROFILE プロフィール

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金子 智太郎 | TOMOTARO Kaneko美学、聴覚文化研究

1976年生まれ。東京藝術大学等で非常勤講師。専門は美学、聴覚文化論。日本美術サウンドアーカイヴ主催。最近の仕事に論文「環境芸術以後の日本美術における音響技術——一九七〇年代前半の美共闘世代を中心に」(『表象』12号、2018年)、「一九七〇年代の日本における生録文化──録音の技法と楽しみ」(『カリスタ』23号、2017年)ほか。共訳にジョナサン・スターン『聞こえくる過去──音響再生産の文化的起源』(中川克志、金子智太郎、谷口文和訳、インスクリプト、2015年)。雑誌『アルテス』でサウンド・スタディーズ/サウンド・アートをめぐる洋書レビュー連載(2011〜15年)。

金子智太郎 公式サイト

日本美術サウンドアーカイヴ 公式サイト

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