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グラデーションの犬と、チャーハンを食べるデブの鰯:後半インタビュー:Dr.ハインリッヒ

2020 04 21

「色が全体的にパープルで尻尾の方がグリーンのみょうがみたいな犬」といった、脳内に風変りで美しいビジュアルイメージが思い浮かぶ言葉を用いるなど、他のお笑い芸人と一線を画す漫才師 Dr.ハインリッヒ。AMeeTではDr.ハインリッヒへの17,000字超えのロング・インタビューを前後半に分けて掲載する。インタビューは様々なテーマを含みながらも、全編を通して「常識・規範からの逸脱」が軸となっており、自由について考えるうえでとても大事な言葉が詰まっている。後半ではネタ作りの工程や言葉の採用基準、そしてネタにおける「自由」「想像力」の扱い方について詳しく伺った。

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インタビュアー・編集:中本真生(UNGLOBAL STUDIO KYOTO)
取材撮影:麥生田兵吾
取材場所:cafe Cherish

1. 映像を言葉に置き換える

――ネタはどういう工程で作ることが多いですか。

(幸)
キラーフレーズを思い付いたら勝ちなんですよ。例えば『トンネルを抜けると』っていうネタは「私この間、トンネルを抜けたんですよ」「どうやった?」「トンネルを抜けると、めっちゃデブの鰯がチャーハン食べてた」という出だしなんですけど、「めっちゃデブの鰯がチャーハン食べてた」が思い付いたら勝ちで、ここからは実はけっこう簡単なんですね。この最初の1行目のワンフレーズが、どれぐらい広げられる背景を持っているかにかかってます。

(彩)
そうやね。

『トンネルを抜けると』
2019年8月25日 Dr.ハインリッヒ単独ライブ「波動告知」 よしもと漫才劇場

(幸)
『青いフリスビーの蟹ジェントルマン』というネタは「守護霊見てもらった」「守護霊なんやったん」「青いフリスビーの蟹ジェントルマンやってん」という出だしなんですけど、「青いフリスビーの蟹ジェントルマン」というフレーズさえ出れば物語を展開していける。

『青いフリスビーの蟹ジェントルマン』
2019年2月11日 ネタバトルイベント「あのスト」 道頓堀ZAZA HOUSE

(彩)
だから単独(ライブ)前は、幸さんと「今どんなフレーズがある?」「青いフリスビーの蟹ジェントルマンがある」「よしそれで作ろう」みたいなやりとりをしています。

(幸)
フレーズを貯めておく派ですね。

――『ディアロークハインリッヒ6』 ※1 で、『トンネルを抜けると』の作り方として、彩さんは「まず2人で『トンネルを抜けるとそこは雪国だった』はじまりでネタをやりたいねという話をして、そこから大喜利的にアイデアを出した」「その過程で『めっちゃデブの鰯がチャーハン食べてた』という発想が出てきた」と話していました。

(幸)
「トンネルを抜けました、さてここは?」っていう大喜利ですね。「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」って、耳に残るいい言葉じゃないですか。この言葉の音が好きで「これを漫才のフリに使うとすれば」というところから考えていきました。「トンネルを」っていうのがまたいいじゃないですか。トンネルは抜けたらその先の世界は自由ですから。

――お題が最初にあって、そこから大喜利的にネタの主軸となるキラーワードを誘発するというのは、よくあるネタの作り方なんでしょうか。

(彩)
他のネタは「青いフリスビーの蟹ジェントルマン」のように、フレーズありきで物語は後付けです。『ひまわりちゅどーん』(『トンネルを抜けると』の別称)は例外ですね。

――「めっちゃデブの鰯がチャーハン食べてた」というフレーズが出た後は、スムーズに物語を展開できるのでしょうか。

(幸)
そんなに考え込まないです。パパパパっと模様が浮かぶ感じでした。私はネタを作るときビジュアルが思い浮かぶことが多いんです。「ブーっとした鰯が、タンタンタンと尾ひれで地面を叩いたら、地面にひびが入ってひまわりが出てくる」って、映像として楽しいじゃないですか。それはどのネタを作る時でもすごい意識しますね。だから本当は私の頭の中にあるこの画を、みなさんに直で伝えてあげれたら一番おもしろいんですけど。

(彩)
我々の漫才は基本的には映像を言葉にしてるので。

(幸)
遠回りなことをやってるよね。

左が幸さん、右が彩さん。
左が幸さん、右が彩さん。

※1ディアロークハインリッヒ6』は2019年2月に道頓堀ZAZA POCKET’Sにて開催された。該当の発言は13分38秒あたりから。

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