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3rdアルバム『さん』発売記念インタビューヒストリー・オブ・てあしくちびる 2014-2020インタビュー:てあしくちびる

2020 05 03

「てあしくちびる フェーズ3」の到達点

――2014年からの一連の流れを振り返って感じたことは、『夜のみずのき動物園』『水辺のみずのき動物園』の音楽制作を通して得たものを、2018年にきて初めて、てあしくちびるの楽曲として落とし込むことができたのではないかということです。だからこそ、「脱臼」したような、「伸び縮み」するような曲を作ったり、演奏したりできるようになったのかもしれない。『できたての化石』は、『水辺のみずのき動物園』のフレーズを使っているし、「脱臼」の片鱗は感じるものの、あくまでサンプリングです。衆議元市議夫さんが加わり、『パス』が完成した時点で「てあしくちびる フェーズ3」が完成したのではないでしょうか。

(くっちー)
『水辺のみずのき動物園』の音楽制作の時、初めて、お互いがイメージだけを共有して、譜面なしで曲を作りました。そういうことってそれまでになかった。『パス』も3人で演奏しながら「こんな音を入れてみちゃった」とか「こんなアレンジをしちゃった」というやり取りを経て出来た曲です。それまでのてあしくちびるはギチギチで、ちょっとでも変なことすると、banri君が睨みをきかせてくるから(笑)。

――(笑)。

(くっちー)
相手が用意してないことをすると崩れちゃうというか…。ライブ中、練習と違うことをするとそれが失敗みたいになってしまっていた。基本的なことだけど、『水辺のみずのき動物園』の時、今までできなかった「ちゃんと相手の音を聴いて自分の音を生かしてく」「突然入った音にちゃんと対応する」ということができるようになった。

(SDE)
あとは、「てあしくちびる3」だね。

(くっちー)
「てあしくちびる3」を始めたばかりの2015年頃は、私たちのギチギチの演奏にシギーが全部合わせてくれていました。でも数年一緒に演奏し、一緒に曲を作っていくようになって変わっていきました。柔軟さという面ではその影響が大きい気がする。

(SDE)
大きいですね。

(くっちー)
「なんでこんな音を足してくるんだよ、練習と違うだろ」というのがなくなって、演奏を楽しめるようになった気がする。

(SDE)
それまでのてあしくちびるは「ここは絶対にこういうフレーズで」というふうに、本当にギチギチだったかもしれない。2017年ぐらいから、任せることができるようになったかな?

(くっちー)
『パス』以外に関してはあまり変わってないんだけど(笑)。『パス』だけは遊びの幅を持てる曲だなって思います。フレーズも全部自分で考えているし、例えば私が適当に鼻歌を歌いながらバイオリンを弾いてみたりとかもできる。『ネオノルマ』『できたての化石』『チャンスロス』とか、他の曲は変わらず、banri君が「そうじゃない、こうやって弾いてほしい」と言ってます。

(SDE)
そっか。

(くっちー)
だから『パス』は演奏しててすごく楽しい。他の曲も楽しいですけどね。

――前回のインタビューで、kawauchi(SDE)さんがセカンドアルバムについて「自分たちらしさを一旦解体したいという気持ちがあった。だから『日常』っていうスカスカで骨みたいな曲が1曲目にあるということは、俺にとってはすごく重要」 ※7 と語っていました。私は「骨になる」「解体する」という言葉を、楽曲の骨格の話だけではなくて、「誰かによって・何かによって肉付けされ、血液が通うことを受け入れる姿勢」と解釈していました。2ndアルバムの時点で「骨になる」「解体する」という意識が芽生えたからこそ、紆余曲折ありながらもフェーズ3に辿り着けたのではないでしょうか。

(SDE)
ああ。

(くっちー)
確かにそうかもしれない。

ステージに立つてあしくちびる。
写真提供:秋葉原CLUB GOODMAN

※7 中本真生 編集・インタビュー[2017].5. 表現の変化 「とにかく一回骨になりたかった」."てあしくちびる インタビュー 2017, In the place to be 前半”.AMeeT.参照2020-04-09.

PROFILE プロフィール

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てあしくちびる | TEASHIKUCHIBIRUSDE(vo,ag)、くっちー(vo,vln,etc)

バイオリンとギター、声と言葉で唯一無二の音楽を奏でるオルタナティブポップバンド。2010年結成以来、アコースティックな編成ながらフォークやロックのみならず、ハードコア パンク、ヒップホップ、クラウトロック、ブラジル音楽、ポストパンク・ノーウェイヴ等を飲み込んだ雑多な、しかし虚飾ではない切実さを伴った突然変異的音楽性で独自の活動を続ける。時代性を色濃く反映させながらも、削ぎ落とされた音・言葉・リズムの中には、「生活」から精製された重量感、躍動感、すっとぼけ、たちが決然と同居する。USプライベートレーベル「visitant recordings」より、てあしくちびる3として初の作品をカセットテープにて近日リリース予定。

てあしくちびる オフィシャルサイト

中本 真生 | NAKAMOTO MasakiUNGLOBAL STUDIO KYOTO

1983年生まれ。愛媛県新居浜市出身、京都在住。てあしくちびるが音楽を担当した『夜のみずのき動物園』(2014、HAPS[京都])、『水辺のみずのき動物園』(2017、京都北山「光の庭」)では作品のプロデュースなどを、てあしくちびるが参加した『MOVING Live 0』(2012、五條會舘[京都]、キネマ旬報シアター[柏])、『みずのき 冬の演奏会 〜みずのきの絵たちから生まれたアニメーションと生演奏〜』(2016、みずのき[亀岡])では企画などを務めている。またてあしくちびるへのインタビュー・対談記事として「てあしくちびる インタビュー 2017, In the place to be」(2017、AMeeT)、「浦崎力×みずのき美術館コレクション みずのき動物園までの軌跡」(2015、Kyoto Art Box)がある。

UNGLOBAL STUDIO KYOTO オフィシャルサイト

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