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次代を担う若手美術家二人による初の対談
八木良太 × 山城大督 対談 [前半]

2016 06 19

次代を担う若手美術家 八木良太と山城大督。12年来の友人であり、様々な形で関わりつつ、作家として互いに強く意識してきた2人による初の対談を、前後半に分けて掲載する。前半では無人島プロダクション(東京)にて現在開催中(2016年6月26日まで)の八木の個展『META-ARCHAEOLOGY』、後半では森美術館(東京)にて、開催中(2016年7月10日まで)の『六本木クロッシング2016展』に出展している山城の新作『TALKING LIGHTS / トーキング・ライツ』についての話が軸となっている(後半記事は2016年7月頭公開予定)。

聞き手:中本真生(UNGLOBAL STUDIO KYOTO)
インタビュー撮影:表恒匡

八木良太、山城大督

1. メディアを乗り換えていく手付きが制作の基本になっている

――はじめに山城さんから、現在開催中の八木さんの個展『META-ARCHAEOLOGY』(※1)を観て、本人に聞いてみたいことや感想を伺えますか。

(山城)
ホームである無人島プロダクション(※2)だから、剛速球を投げるような作品を展示したなというのが第一印象。八木くんの作品には、五感があれば誰でも体験できるポップなチャンネルと、五感を疑うようなドキッとさせられるチャンネルの二種類あるように感じていて。今回は後者。新シリーズのはじまりを観せた展覧会だったと思います。

八木良太個展『META-ARCHAEOLOGY』 会場全景 撮影:表恒匡

八木良太個展『META-ARCHAEOLOGY』 会場全景 撮影:表恒匡

(八木)
神奈川での個展(※3)の後、次どうするかというのは藤城さん(※4)からのお題でもあったし、自分自身もモチーフや考え方について、別の方向から作品作りがしたいと思っていました。そういうタイミングで、イタリア、オーストラリア、熊野古道など国内外の世界遺産に訪れる機会があったこと、植島啓司(※5)さんと大学で一緒に授業をするようになったこと、近年phono/graph(※6)での活動もあって、レコードや活字などのオールドメディアを扱うようなメディア考古学的アプローチを行っていたことなどが重なりました。極めつけは世界考古会議京都大会の関連企画として、今年の7月から京都文化博物館で開催されるグループ展に出展が決まり、そこで考古学に関する作品を発表する予定ができたことです。そういった経緯もあり、考古学的手法をテーマにした作品を制作する方向に流れていきました。考古学の研究者と話しているとすごくおもしろいんですね。山城くんも梶谷宣子さん(※7)の研究に関わっていますが、ある分野を追及している研究者の方と話した時に見つかるインスピレーションというのはあると思うんです。

(山城)
八木くんの作品には"メディアと戯れる感覚"がある。今回の展示でも、映像・紙・石など、いろいろなメディアで立体視(※8)を利用した作品を作っているじゃないですか。裏から見たら単なる石だけど、表から見たらステレオグラムのイメージが貼り付けられているとか。そういうメディアの変換がおもしろかった。

(八木)
昨日、大学で藤本由紀夫(※9)さんにレクチャーをしていただいたんですが、その時に藤本さんが同じようなことを言っていました。「完全にオリジナルのアイデアなんて、どんなアーティストでも3つくらいしかもっていない、それを続けていくにはいかにメディアと戯れていけるかを試みながら、色々な方向性を探るしかない」と。たぶん僕も根本にある考え方というのは3つくらいしかなくて、メディアがいろいろ変わっているだけなんだと思う。そうやってメディアを乗り換えていくような手付きが、作品制作の基本になっているのではないでしょうか。

※1)個展情報は本記事最終ページ参照。

※2)アーティストのマネジメントを中心に展覧会やイベント企画、プロダクトのリリースを行う東京のプロダクション。八木良太の他、八谷和彦、Chim↑Pomなどが所属する。
http://www.mujin-to.com/

※3)神奈川県民ホールギャラリーの5つの展示室を活用した個展で、八木のキャリアの中で最大規模となった。
展覧会情報:『八木良太展 サイエンス/フィクション』 2014年12月21日(日) ‐ 2015年1月17日(土) 神奈川県民ホールギャラリー http://www.lyt.jp/sf/

※4)無人島プロダクションの代表。

※5)宗教人類学者。京都造形芸術大学 空間演出デザイン学科 教授。八木は同学科で専任講師を務めている。

※6)phono/graphは、「音・文字・グラフィック」の関係性における研究と、それを取り巻く現在の状況とを検証しながら形にすることを目的としたプロジェクト。2011年、大阪のdddギャラリーの展覧会からはじまり、その後ドルトムント(ドイツ)、名古屋、京都、東京神戸で展覧会を開催している。八木の他、鈴木大義、城一裕、藤本由紀夫、ニコール・シュミット、intext、 softpadなどが参加している。
http://www.phonograph.jp/

※7)染織修復・研究家。メトロポリタン美術館名誉館員。メトロポリタン美術館で37年間染織品の保存修復に携わり、世界各地の染織文化を調査。退職後は京都に住まいを移し、研究を続ける。

※8)ステレオグラムの二次元の画像を三次元的に見る方法。今回展示している八木の新シリーズ『Frottage』は、何も器具を用いず肉眼で直接ステレオグラムの画像を見る裸眼立体視を想定して作られている。 http://www.lyt.jp/meta/howto.htm
本展では180×120cmの用紙にステレオグラムを印刷した作品、石の断面にステレオグラムをアクリルマウントした作品、砂嵐の映像から立体が浮かび上がる作品と、3つのメディアに展開されている。

※9)大阪在住の美術家。


八木 良太 YAGI Lyota
(美術家)

八木 良太 YAGI Lyota

1980年愛媛県生まれ。京都市在住。見たいものしか見ない・聞きたいことしか聞かないといった、我々の制限的な知覚システムあるいは態度に対する批判的思考をベースに作品制作を行う。既製のシステムや道具を使いながら作品を構成し、その現れによって人間の知覚やそれを利用した工学的システムを浮かび上がらせるような作品を発表している。音響作品をはじめとして、オブジェや映像、インスタレーションからインタラクティブな作品など、表現手法は多岐にわたる。主な個展に『サイエンス/フィクション』(2014、神奈川県民ホールギャラリー[神奈川])、主なグループ展に『phono/graph』(2014、ギンザ・グラフィック・ギャラリー[東京])、『trans×form ─ かたちをこえる』(2013、国際芸術センター青森[青森])がある。

無人島プロダクション
http://www.mujin-to.com/index_j.htm

八木良太 公式サイト
http://www.lyt.jp/


山城 大督 YAMASHIRO Daisuke
(美術家、映像ディレクター)

山城 大督 YAMASHIRO Daisuke

美術家・ドキュメント・コーディネーター。1983年大阪生まれ。岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)修了、京都造形芸術大学芸術学部卒業、山口情報芸術センター[YCAM]エデュケーターを経て、東京藝術大学映像研究科博士後期課程。映像の時間概念を空間やプロジェクトへ展開し、その場でしか体験できない《時間》を作品として制作する。2013年には個人として1年間に渡って映像表現を再考する「東京映像芸術実験室」を実施。本企画より誕生した作品『VIDERE DECK/イデア・デッキ』が第18回文化庁メディア芸術祭アート部門審査委員会推薦作品に選出された。2007年よりアーティスト・コレクティブ「Nadegata Instant Party(中崎透+山城大督+野田智子)」を結成し、他者を介入させ出来事そのものを作品とするプロジェクトを全国各地で発表している。

六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声
http://www.mori.art.museum/contents/
roppongix2016/index.html

山城大督 公式サイト
http://the.yamashirostudio.jp


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