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「作る」という行為に流れる時間を可視化する彫刻:前半インタビュー:花岡伸宏

2020 06 19

棒にシュロ縄で木材を巻きつけて固定した、粘土で人物像を作る際に用いる芯棒を拡大したような作品など、一見すると未完成に見える彫刻を通して「作る」という行為に流れる時間を可視化する彫刻家 花岡伸宏。近年の代表的な展示である『東アジア文化都市2017 京都「アジア回廊 現代美術展」』(二条城、2017年)、『六本木クロッシング2019』(森美術館、2019年)、『つくるということ』(大阪府立江之子島文化芸術創造センター[enoco]、2020年)にて行った試みについて順に掘り下げていくことで、主に2017~2020年にかけての重要な表現とその変化を記録する。なお本記事のために花岡氏に制作いただいた自刻像の写真を各ページの末尾に掲載する。

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インタビュアー・編集:中本真生(UNGLOBAL STUDIO KYOTO)
自刻像制作・写真:花岡伸宏

5. 二条城 桜の園での野外展示

――『東アジア文化都市2017 京都「アジア回廊 現代美術展」』 ※1 での展示にて試みようとしていたことを教えていただけますか。

はじめに「二条城のどこかで展示をしてくれませんか」という相談がありました。下見に行って色んな場所を見せてもらった時、一箇所だけすごく不思議な空間があったんです。それが桜の園でした。桜の園は石垣の壁はあるものの、だだっ広い芝生があってベンチがあるというような一見しただけでは歴史的な文脈が見えてこない場所です。

桜の園での展示風景。 撮影:来田猛
桜の園での展示風景。
撮影:来田猛

――歴史的な文脈を意識しないでいい空間をあえて選んだということでしょうか。

その方がやりやすいかなと思ったんです。僕はこれまで展示する場所の歴史と作品の関連性はあまり考えず、どちらかというと物自体や物の形そのものを見せることを大事にしてきました。二条城の他の場所ではどうしても歴史的な文脈が前に出てしまいますが、桜の園ならば歴史を強く意識しなくていい分、自由度が高くなるので自分の作品が置きやすい。

――歴史との関連性を極力排除しようとしていたものの、石垣を模した作品があるなど造形的にはインスタレーション、つまりあの空間だからこそ成立する展開でした。

『無題(未完の積み上げ)』
『無題(未完の積み上げ)』
2017年 124×230×75 cm 木、衣服、アクリル絵具、鉛筆
石垣の前にあるベンチの上に木材を積み上げた作品。石垣と対比させることを前提としていた。

野外は空を含めて空間になってしまうでスケール感が大きい。立体物をポツンと並べたところで場所に負けてしまう気がしたので、インスタレーションを絡めた展示ができたらいいなと思いました。

――積極的にインスタレーション的手法を選択したというより、空間のスケール感に作品が負けないようにするためだったんですね。

そうです、場所に合わせました。野外展示は初めてだったのでなかなか想像できないことも多かったのですが、初めてなりに「この場所で最善の展示方法は何か」を考えました。物自体を見せることを第一に考えて、そこから消去法のような感じで場所に合わせて素材も選んでいきました。

――素材についても、場所を前提に選んだということなのでしょうか。

場所に制限されて結果的にああいう形になりました。野外だと耐久性が求められるので素材も限定されるんですよ。ステンレスとかFRP(繊維強化プラスチック)だったり、野外の環境で耐えられる素材を選ぶ必要があります。例えば二条城の展示に出展した作品『無題(頭部、雑誌、畳)』の主な素材はブロンズでした。でも同時に「一般的に屋外の彫刻に用いられるような素材だけを用いるのではなく、野外展で使わないような素材をあえてブロンズと対比させて幅を生み出したい」とも考え、木や布を組み合わせました。

『無題(頭部、雑誌、畳)』
『無題(頭部、雑誌、畳)』
『無題(頭部、雑誌、畳)』
頭像、頭像下の丸太は一見すると木彫に見えるような造形・質感だがブロンズで作られている。
一方、台座となる垂木などには実際の木材が用いられている。
撮影(写真上、写真下) : 来田猛

――「衣服などの通常は屋外に落ちてないようなものが屋外に存在する違和感」を積極的に取り入れようとは考えていたのでしょうか。

例えば、道端に軍手が落ちている風景は日常です。だから衣服なども空間に馴染むと思っていました。

『無題(未完の積み上げ)』
裏から見た『無題(未完の積み上げ)』。木材の間に衣服などを挟み込んでいる。
撮影 : 来田猛
石垣の隙間にも衣服などが詰めこまれていた。
石垣の隙間にも衣服などが詰めこまれていた。
撮影 : 来田猛

――衣服を違和感として扱おうとしたわけではないんですね。

ただ日常的過ぎてもおもしろくないのである程度作為も加えようと思い、キャンバス布に描いたドローイングを石垣の隙間に詰めたりしました。少し創作も入れながら、且つ場に調和するイメージを持っていました。

石垣の隙間に詰められたキャンバス布に描かれたドローイング。
石垣の隙間に詰められたキャンバス布に描かれたドローイング。
撮影 : 来田猛

――ベンチの上に木材を積み重ねる手法について、当時どのようなことを考えて採用したのでしょうか。

最初から「石垣と対比させるために、木材を石垣のように積み上げていく」というイメージはあったと思います。あとは虫とかが巣を作るようなイメージも持っています。例えばミノムシって枝とか葉っぱを集めて巣を作るじゃないですか。ミノムシにとって巣を作るという行為は「自分の身を守る」という意味があるのかもしれないけど、僕は巣を自然の中にある造形物と捉えました。作る前にそう思ったのか作った後にそう思ったのかは忘れちゃったんですけど…。はじめは主に石垣と対比させることを意識していたのかもしれないです。

――「積み上げる」というアイデアはこの時が初出ですか。

2017年に作った、小さい木材を5つくらい積み重ねた実験的な小作品があります。それはMORI YU GALLERY KYOTOでの個展に出品しました。

『無題』
『無題』
2017年 25×50×40 cm 木、衣服
MORI YU GALLERY KYOTOでの展示風景。

――プロトタイプはすでにあったということですね。

この作品のイメージが石垣とつながったのかもしれないですね。

自刻像(FRP樹脂、木、衣服)
自刻像(FRP樹脂、木、衣服)
自刻像(FRP樹脂、木、衣服)

※1 『東アジア文化都市2017 京都「アジア回廊 現代美術展」』 元離宮二条城、京都芸術センター 2017年8月19日(土) ~ 2017年10月15日(日)

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