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「作る」という行為に流れる時間を可視化する彫刻:前半インタビュー:花岡伸宏

2020 06 19

『六本木クロッシング2019』での展示

――次に『六本木クロッシング2019』 ※2 での展示で試みようとしたことを教えてください。

二条城の時のようなインスタレーションを絡めた展開ではなく、立体物をアカデミックに展示したいという気持ちがありました。それはなぜかと言うと、一つは美術館、つまり展示用に作られた広い空間での展示だったということ、もう一つは彫刻の文脈を意識した展示にしたかったからです。また、一点一点が独立した彫刻として成立するようにという気持ちで展示を行いました。

『六本木クロッシング2019』での展示風景。
『六本木クロッシング2019』での展示風景。

自分の表現にとって、あの時点で新しかったのは入ってすぐの場所に展示していた粘土の芯棒を拡大したような作品でした。粘土で人体を作る時には、シュロ縄で棒に木材を固定した骨組みを作ってそこに粘土で肉付けして形を作っていくというのがスタンダードで合理的な方法です。粘土が落ちないよう支えるために骨組みがあるんですけれど、その骨組みは人間の本当の骨の構造とは違い、重力に逆らうように作られた彫刻のための骨です。その骨組みの形がおもしろいなと思っていて、芯棒に粘土をつけていない骨組みだけのような状態を完成としたというのが、自分の中で最先端の表現だったんです。彫刻ができていく途中の段階のおもしろさを見せたいという思いがあってああいう形になりました。

『六本木クロッシング2019』での展示風景。
『六本木クロッシング2019』での展示風景。
『無題(木材、衣服、シュロ縄)』
2019年 300×180×90 cm 木、鉄、衣服、シュロ縄、アクリル絵具、鉛筆
『六本木クロッシング2019』での展示

――「彫刻の文脈を意識する」というのは、「彫刻の一般的な作り方と対比させる」という意味でしょうか。

対比させるということではなく、「一般的に完成とされている段階よりも、彫刻を作る過程のこの段階の方がおもしろいよ」という提示をしようと思ったんですね。「僕はここの方がおもしろかったよ」っていう。

――2017年のAMeeTの対談で、花岡さんは「『これが作品です』『これが完成です』という見せ方をしたくないとは思ってる」 ※3 とおっしゃっています。この言葉の通り、花岡さんは2019年以前の段階でもこれらのことを意識していましたし、ある作品を解体してその素材を再構築するなど表現にも取り入れていました。しかし再構築しているという事実を知らない人の中には、花岡さんの作品が「未完」つまり「一時的な状態」かどうかわからない人も少なくなかったと思います。一方、『無題(木材、衣服、シュロ縄)』は作品を見ただけで、誰が見てもそれが「一時的な状態」であると見て取れます。誰が見ても「まだここから変化していくだろう」ということをイメージしやすいような形状というのは、2017年以降、意識的に目指していたのでしょうか。

だんだんそういうふうになってきているというのはあります。だんだん作らないようになるというか…。素材を選ぶ段階、手を入れる前の段階、手を加えていく段階、完成して展示する段階、展示した後の時間が経って、また解体して別のものができるという流れの中の色んな段階を見せたい…パターンを提示することで色々な時間軸をずらして、完成がどこなのか分からなくなるような見せ方ができたらいいなと考えています。

――粘土の芯棒は「縄を使って木材を一時的に留める」という形状をしています。『無題(木材、衣服、シュロ縄)』においては、「粘土で肉付けされていく様子をイメージできる」ということも重要かもしれませんが、この作品にとって「彫刻だけれど掘らずに素材を巻き付けることで人間のような形を一時的に留める」という在り方自体も重要ではないでしょうか。

ああ。

――展示が終わった後の作品を解体し、その素材を別の作品に再利用するというアプローチは花岡さんの制作にとって重要な特徴の一つです。そういう視点でいえば、そもそも花岡さんにとって作品化することは「作る」ではなく、「一時的に留めておく」といえるかもしれません。

今言われて確かにそうだなと思いました。「縄で縛る」というのは、「仮に今この形を留めてますよ」というイメージがありますね。

――この時にも『未完の積み上げ』を出品されています。もともと石垣の前に置かれることを前提として作った作品を、ホワイトキューブで展示したことには、どういう考えがあったのでしょうか。

積み木のように積み上げていく形状は「これからどんどん積んでいって大きくなること」や「これから減らして小さくなること」など「作っていく行為の時間」が想像できます。石垣のイメージと対比させなくても成立するんじゃないかと思って、出してみました。二条城の時とは見え方が変わるだろうなというのは想定していました。

――そういう話を聞くと、花岡さんが「作る」という行為に見出している批評性と、鑑賞者が花岡さんの作品を見て想像できること、受け取ることのできるイメージが、この辺の時期に来てかなり一致してきている印象を受けます。

自刻像(木、木槌、財布、シュロ縄、鉄、鍵)
自刻像(木、木槌、財布、シュロ縄、鉄、鍵)
自刻像(木、木槌、財布、シュロ縄、鉄、鍵)

※2 『六本木クロッシング2019展:つないでみる』 森美術館 2019年2月9日(土)~ 5月26日(日)

※3 中本真生 編集・インタビュー[2017].7. 花岡伸宏:作品と鑑賞者の関係 「意味やつながりを把握できないもの」."東アジア文化都市2017 京都「アジア回廊 現代美術展」:アーティストインタビュー後半 インタビュー:花岡伸宏、ヒョンギョン、ルー・ヤン”.AMeeT.参照2020-06-04.

PROFILE プロフィール

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花岡伸宏 | HANAOKA Nobuhiro

1980年広島生まれ。京都在住。2006年 京都精華大学大学院芸術研究科博士前期課程修了。近年の主なグループ展に『東アジア文化都市2017 京都「アジア回廊 現代美術展」』(二条城、2017年)、『六本木クロッシング2019展:つないでみる』(森美術館、2019年)、『ユーモアと飛躍 そこにふれる』(岡崎市美術博物館、2013年)、主な個展に『つくるということ』(大阪府立江之子島文化芸術創造センター[enoco]、2020年)などがある。「第12回岡本太郎現代芸術賞展」特別賞(2009年)、「2006 JEANS FACTORY ART AWARD」優秀賞。

花岡伸宏 Official Site

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