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漫画家 三浦よし木 インタビュー 後半読み切り漫画『花をうめる(原作:新美南吉)』
――埋められた“花”をいま、解釈しなおす試み

2021 03 15

東村アキコ氏に絶賛され、講談社の新人賞「第37回MANGA OPEN」で東村アキコ賞と編集部賞のダブル受賞を果たした『僕の変な彼女』や、文字の上で24時間生活をしたドキュメンタリー漫画『も』など、斜め上を行く発想と卓越した構成力で読者を驚かせ続ける漫画家・三浦よし木。2021年2月にはオンライン・アートプロジェクト「AICHI⇆ONLINE」にて、読みきり漫画『花をうめる(原作:新美南吉)』が公開されるなど、その創作活動に注目が集まるなか、AMeeTでは、15,000字超えのロング・インタビューを前後半に分けて掲載する。後編では、新美南吉と三浦のつながりや、原作を元に作画する過程で大切にしたことなど、最新作『花をうめる』にまつわるエピソードを伺った。

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インタビュアー・編集:中本真生(UNGLOBAL STUDIO KYOTO)
編集:杉谷紗香(piknik)

1. 三浦よし木の中の「新美南吉」

――後半は、愛知県主催で2021年2月1日(月)~3月21日(日)に開催されているオンライン・アートプロジェクト「AICHI⇆ONLINE」 ※1 で制作・発表した新作の読み切り漫画『花をうめる』について話を伺います。ここからはインタビュアーとしてだけではなく、AICHI⇆ONLINEの企画メンバー ※2 の一人としても補足的に発言をしていきたいと思います。この作品は、児童文学者の新美南吉の原作を元に、三浦さんが描き下ろしたものですが、なぜ、題材として新美南吉を選んだのでしょうか?

読み切り漫画『花をうめる』 メインビジュアル
読み切り漫画『花をうめる』のメインビジュアル。
『花をうめる』(1939年)は、『ごんぎつね』、『手袋を買いに』などで知られる愛知県知多郡半田町(現在の半田市)生まれの児童文学者、新美南吉の小説。
掘った土の中に花を埋め、花が隠れている場所を探す遊びをめぐって、少年の繊細な心の動きを描写している。

まず、私は新美南吉と同じ愛知県半田市で生まれ育ちました。南吉については、半田出身のすばらしい作家だと小さい頃から知っていましたし、彼の作品を何度も読んでいたほど好きな作家です。
もう一つ、私が漫画家として上京したとき、おもしろい偶然がありました。ある時、古本屋で南吉が生前に出した唯一の童話集『おぢいさんのランプ』を見つけたんです。それは、「絶対連載できるぞ!」と出したネームが連載会議に通らなくて落ち込んでいたタイミングでした。次のネームを考えなきゃ…、と焦る気持ちで通っていた古本屋で、南吉の本を手にとった時、地元の風を感じたようで、泣いてしまうほどうれしくなりました。
そのできごとを機に、東京でも南吉の本を読み始めて、改めて彼の経歴や作品について調べたら、南吉が上京していた当時、住んでいたのは中野で、私の自宅からも近いとわかりました。そこで、南吉が過ごした街と私の自宅をつなぐ往復5kmをランニングコースにして、制作に煮詰まったら走りに行くようになりました。南吉が見たであろう景色を自分も見て、力をもらったつもりになって、また自分の机に戻る、というのを毎日繰り返していました。
そんな経緯で、南吉に自分が勝手に助けてもらったり、心強い存在だと感じていたので、いつかどこかで南吉のことを描いてみたいなと、漠然と思っていたんです。そんな時、AICHI⇆ONLINEのプロジェクトのお話をいただき、企画を進める中で、自分が興味ある対象の一つとして新美南吉を提案させてもらいました。

――作品もたくさん読んでいたんですね。

そうですね。でも、改めて南吉のことを調べて作品一覧を見てみると、自分が読んだ作品は思ったよりも多くなかったんですけど(笑)。図書館などで調べてみたら、こんなにもたくさんの作品を南吉は書いていたんだな、と知りました。

※1 AICHI⇆ONLINEは、2021年2月1日(月)~3月21日(日)の期間開催される、映画、現代美術、文学、漫画、音楽、といった幅広いジャンルで展開されるオンライン・アートプロジェクト。

※2 AICHI⇆ONLINEの企画・制作を行うのはSAAC[Sustainable Arts Activity Cooperative]。本記事のインタビュアー・編集を務める中本はそのメンバーであり、三浦のプロジェクトを担当した一人。

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