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「<CONNECT >~芸術・身体・デザインをひらく~」レビュー「つながる」を考える文・インタビュアー:島貫泰介(美術ライター/編集者)

2021 04 07

2020年12月3日から同月20日にかけて、岡崎公園一帯を会場に行われた<CONNECT⇄ >。同事業の取り組みや、全体の企画・運営に深く関わった京都国立近代美術館 エデュケーターの松山沙樹、Social Work / Art Conference(一般社団法人HAPS)ディレクターの奥山理子による証言を紹介しながら、改めて「つながる」とは何かを考える。

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文・インタビュアー:島貫泰介(美術ライター/編集者)

<CONNECT⇄ >の成り立ちと京都国立近代美術館の取り組み

2020年12月3日から同月20日にかけて、岡崎公園一帯を会場に<CONNECT⇄ >という催しが行われた。これは、文化庁と京都国立近代美術館が主催団体となり、同エリアに集まる美術館や文化施設で<共生・多様性>をテーマにしたイベントを行うというもので、例えば京都市動物園では富士通が開発したデバイスで動物の鳴き声を振動と光で感じてみるワークショップ、日図デザイン博物館(みやこめっせ地下1階)では、障害のある人々によるさまざまな作品を紹介する展覧会(第26回京都とっておきの芸術祭)などが開かれた。

だが、コロナ禍の真っ最中(東京の感染確認数が1000人を超えたのは、まさにこの年の大晦日だ)に行われた<CONNECT⇄ >を十全に総括することは難しいだろう。かくいう筆者自身も、オンラインと実空間を織り交ぜた各イベントのうち、ごくごく一部を見られたに過ぎない。なのでこの記事では、レポート的な記述よりも、全体の企画・運営に深く関わった2人の人物の証言を紹介することに比重を置いて始めたいと思う。

一人目は、京都国立近代美術館(以下、京近美)のエデュケーターである松山沙樹さん(学芸課 特定研究員[教育普及担当])。松山さんは、企画が立ち上がった初期から<CONNECT⇄ >に関わってきた人だ。

「<CONNECT⇄ >は文化庁の京都移転がきっかけになって企画されましたが、2016年から2019年まで計4回にわたり、東京・六本木の国立新美術館で開催された、文化庁主催の展覧会<ここから展>の後続事業という位置づけです。
<ここから展>は2016年秋、東京オリンピック・パラリンピック2020のキックオフ・イベントの一環として、障害者のアートや障害にかかわる、支援する最新のデザインを紹介する展覧会としてスタートし、その後、共生社会や文化の多様性にまで視野を広めつつ、3回開催が重ねられました」

<ここから -アート・デザイン・障害を考える3日間->(2016年、国立新美術館)チラシ
<ここから -アート・デザイン・障害を考える3日間->(2016年、国立新美術館)
チラシ

もともと関西は障害者芸術に関する先進地であり、文化庁は関西での開催に際して慎重に検討を進めた。関西にある二館の独立行政法人国立美術館――京都国立近代美術館と国立国際美術館と交渉を進めるなかで、京近美の柳原正樹館長の賛同を得て、同館が主たる企画を担うことが2020年春に決まった。だが、その後のコロナ禍もあって、企画立案は難航する。

「当館が、2017年から<感覚をひらく>という教育普及事業を行ってきたのも大きかったのかなと思っています。これは主に視覚障害のある方と共に行うプログラムで、目の見える人と見えない人が一緒に美術鑑賞を行い、作品を見るだけでなく触ってみたりします。
面白いんですよ。だいたい最初は、見ることから始まるので、私や目の見える人たちが『角ばった感じのする花瓶ですね』と感想を言ったりします。それを聞いて目の見えない人は作品のイメージを思い浮かべたりするわけですけど、いざ触ってみると思いもしなかった繊細な丸みを感じたりするんです。そうすると目の見えない人たちから『さっきは、ごつごつするみたいに言ってましたけど全然違うじゃないですか』と突っ込まれたりして、私自身も返す言葉に窮してしまったり(苦笑)。
作品を見ると、直感的に『寂しそうな絵だな』と思ったりすることがありますよね? ところが<感覚をひらく>のワークショップをやっていると、私が、寂しい、と思う根拠が案外頼りないものであることがわかったりします。自分からは持つことのない疑問や思考の位置から対話を始めることで、これまでよりももっと作品の中に入っていけるような感覚を覚えることがざらにあります」

<感覚をひらく>ワークショップ風景(2020年、京都国立近代美術館)撮影:衣笠名津美
<感覚をひらく>ワークショップ風景(2020年、京都国立近代美術館)
撮影:衣笠名津美

そういった京近美の蓄積ゆえだろう。同館が<CONNECT⇄ >で行った企画は、視覚の問題に依るものだった。リハビリや精神病理学の領野に関わりながら制作・研究を続けるアーティスト大崎晴地さんが美術館ロビーに設置した《ねじれの巡礼》は、巨大な布が覆う空間のなかに体験者が入り込み、触覚を頼りに知覚の実験を行うような体験型のインスタレーションだった。

「障害のあるなしに関わらず、もっといろんな人たちへと対象を広げていくのが今後の課題ですが、まずは当館がやってきた視覚を軸にすることから試していこうと思ったんです。幸運にも岡崎エリアには美術館だけでなく劇場、図書館、それに動物園までありますから、連携し合うことで多様性を見せていくことができるのではないかと。『エリア内にある施設間の連携をテーマに含めて展開していきませんか?』というのは、逆に当館から文化庁への提案だったんです」

《ねじれの巡礼》(2020年、京都国立近代美術館)<CONNECT⇄ >での展示風景
<感覚をひらく>ワークショップ風景(2020年、京都国立近代美術館)撮影:衣笠名津美
《ねじれの巡礼》(2020年、京都国立近代美術館)<CONNECT⇄ >での展示風景
撮影:守屋友樹
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