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FEATURE

特集

「tightrope walking―てんとうむしのつなわたり」展
インタビュー南川憲二(wah document)×清澤暁子(京都芸術センター)

2011 03 25

京都芸術センターボランティア・スタッフが中心となって展覧会を企画運営する"てんとうむしプロジェクト"と、一般募集した参加者同士の会話や反応から生まれた企画を実行するユニットwah document(ワウ ドキュメント)。この両者による共同展覧会が2011年3月8日~3月27日の日程で京都芸術センターを会場に行われている。今回実行されるアイデアは"つなわたり"。「芸術センター史上最大の試み」と位置づけられる本企画について、wah documentの南川さん、本展覧会を担当する京都芸術センターの清澤さんにお話を伺った。

聞き手:中本真生(&ART企画・編集・広報担当、アーティスト)
インタビュー撮影:表恒匡

「tightrope walking―てんとうむしのつなわたり」展 フライヤー

「tightrope walking―てんとうむしのつなわたり」展 フライヤー

開催の経緯

――今回はてんとうむしプロジェクトとwah documentの共同展覧会です。wah documentを招くことになったのは、京都芸術センターとてんとうむしプロジェクトどちらからの提案だったのでしょうか。 (清澤)
てんとうむしプロジェクトは、京都芸術センターの開設10周年記念行事の一環として始まりました。2010年3月にてんとうむしプロジェクトとして最初の展覧会を行ったのですが、その時すでにwah documentの名前は上がっていました。
ただ、急な話だったので、wahの予定がすでに埋まっていて実現できませんでした。「ドキュメントの展示だったらできる」というお返事をいただいたのですが、一緒に何か作っていくという形にしたかったので、見送ることにしました。一年越しでもう一度打診をして、今回やってくれることになりました。

プロジェクト告知PR映像 by wah document

――その後1月から京都芸術センター内にアイデア募集掲示板を設置し、アイデアを募集し始めていますね。それまでにもwah documentとてんとうむしプロジェクトの間でミーティングはあったのでしょうか。 (南川)
ギャラリー・スタッフ、ボランティア・スタッフと打ち合わせはしました。最初は「wah documentが企画の枠組みを決め、館内で遊ぶ」「ボランティア・スタッフがキュレーションする」など、与えられた条件内に収まる範囲で、と考えていました。
しかしボランティア・スタッフの方に会い、こちらが場を作らずともすでに強力な場がそこにあると感じ、彼らの感性で何か作った方がおもしろいと思い始めました。wahはこれまでに50回以上プロジェクトを行ってきているのですが、今まで出会った参加者の中でもインパクトが強いと感じる人がたくさんいました(笑)。こういった独特な感性を持った参加者が集まること自体が貴重でしたし、打ち合わせの段階で、僕ら自身その感性をフルに体験したいと思いはじめました。
(清澤)
てんとうむしプロジェクトの第一回ミーティングで、ギャラリー・スタッフとボランティア・スタッフだけで「wahはこういう活動をしている人たちです」ということについて勉強会をしました。その後wah documentにボランティア・スタッフの前で企画をプレゼンテーションしてもらったのですが、その時に厳しい意見がたくさん出ました(笑)。「先が見えているね。その後何が出てくるの」というようなこともたくさん言われていましたね(笑)。
(南川)
「これでどうやって続けていくの」とか(笑)。

アイデア募集掲示板

アイデア募集掲示板 photo by OMOTE Nobutada

――いつもの参加者よりも鋭い意見が多かったですか。 (南川)
本当にそう思いました。でもボランティアの方からいただいた意見は決して当てずっぽうではなく、彼らがセンターに関わり、色々なものを見てきた中で感じた実感をもとにお話されていると思いました。

―始めから今回のようなプロジェクトの進め方をする予定だったわけではないんですね。 (南川)
そうです。

―280件を超えるアイデアが集まったと聞いています。すごい数ですが、募集掲示板を設置しただけで、これだけの数が集まったのでしょうか。 (南川)
掲示板以外にも自分たちで何回かミーティングして案を出したり、街頭にアイデア募集のアンケートをとりに行きました。
(清澤)
wah documentのメンバーが最初の打ち合わせの時に強力な場を感じたという経験から、はじめに考えていた「うまく場を作ってボランティア・スタッフを取り込む」という方向性でのプランは一回白紙になりました。打ち合わせの場でおもしろいアイデアを選ぶという、wah本来の手法でボランティア・スタッフと関わるという方針に変わったんです。
「アイデアを集めよう」ということになったのが昨年の12月末です。それから募集掲示板を設置したり、街角アンケートや、館内で何ができるのかを集中して考えるツアーをボランティア・スタッフと一緒に行いました。こうして集まったのが280件のアイデアです。
(南川)
あるボランティア・スタッフのおばちゃんが、アイデアを集めるために頑張ってくれたのですが、その方法が本当にすごかったんです(笑)。
子どもの手を持ってアイデアを書かせたり、行きつけの美容院の方に書いてもらったり、「回収に来るからこの時間までに書いといて」と言ってメガネ屋さんにアイデア用紙を渡したり、街中にいる一般の警備員さんに宿題として渡したり(笑)。今までにこういった参加者はいなかったですね(笑)。その他にもパワフルな方が何人かいました。


wah[ワウ]

wah[ワウ]

各地へ赴き、そこで一般募集した参加者とその場で出し合ったアイデアや、その街で集めたアイデアを即興的に実行する一過性の参加型表現集団。南川憲二、増井宏文の二人が中心となり、その活動の運営と記録を行う。
主な活動の場として、「wah lab」(東京都現代美術館・川俣正『通路』展)、「アトリエほうさく」(北海道東士狩小学校家庭科室)、「wah office」(埼玉県北本市)など。
主な参加プロジェクトに「すみだ川アートプロジェクト2009」(東京)、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2009」(新潟)、「A Blow to the Everyday」(香港・中国)がある。

南川憲二(みなみかわ けんじ)
1979年大阪生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科修了。

増井宏文(ますい ひろふみ)
1980年滋賀生まれ。佛教大学教育学部教育学科卒業。

wah document|ワウ ドキュメント
http://wah-document.com/


清澤暁子 KIYOSAWA Satoko

清澤暁子 KIYOSAWA Satoko

京都芸術センター・アートコーディネーター。2008年から勤務。ギャラリー事業のほか、通信紙『明倫art』の編集、若手芸術家に「制作室」を 提供する「制作支援事業」などを担当。 企画展覧会に、「panorama-すべてを見ながら、見えていない私たちへ-」(2010年)、夏休み企画展・少年少女科学クラブ「理科室の音楽、音楽室の理科」(2009年)などがある。

京都芸術センターウェブサイト
http://www.kac.or.jp/


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